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第五十九話 第四ウェーブ終了と第五ウェーブ

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 モンスターをじっくり観察していると核になる部分が分かってきた。
 モンスターは攻撃を受ける時に体の中心を避けている傾向があったので、そこが弱点だと思われる。

「リリ! アサガオちゃん! モンスターの中心を狙って!」
「オッケー!」
「了解です!」

 ツキナは観察して見つけた弱点をリリとアサガオに共有する。リリとアサガオは明るく返事をした後、モンスターに近づく。
 ツキナはリリとアサガオの援護に徹することにする。弱点を狙っているので、攻撃が激しくなることが予想できるからだ。
 ツキナの予想は見事に的中して、モンスターは体の中心にリリとアサガオを寄せ付けまいとしなやかな手でなぎ払い攻撃をしたり、トゲを大きくしたりしてガードを固めていた。このことから体の中心が弱点だということを確信した。
 ツキナは援護をしつつ、リリとアサガオが攻撃しやすいように厄介なトゲを破壊することにした。

「氷の舞! アイシクルスピア!」

 無数に作り出された氷柱がモンスターのトゲを次々に破壊していく。

「シャァァァァ!」

 大多数のトゲを破壊されたモンスターは苦痛の叫びを上げた。あまり想像はしたくないが、自分があの立場ならどれくらいの痛みを感じるのだろうか……。

「今よ! リリ! アサガオちゃん!」
「ツキリン! ありがとね!」
「これで攻撃しやすくなります!」

 リリとアサガオはツキナに一言お礼を言った後、核の破壊に向かう。

「星火燎原《せいかりょうげん》!」

 アサガオは印を結び、口から炎を発射する。今にも消えそうな炎はモンスターの中心に向かっていき、接触した。そして一秒後、炎が燃え広がりモンスターを焼き尽くしていく。

「シャァァァァァ! シャァァァァァ!」

 モンスターは絶望的な叫びを上げる。モンスターのHPはみるみる減っていき、残り二割のところまで減少した。あれはアサガオが装備するくノーシリーズのシリーズスキルだと思われる。
 
 なんて威力なんだ。それにどれだけSPを消費したのだろうか。

 アサガオがスキルを使ってすぐにSP回復薬を口に含んでいたので、そんな感想が出てきたのだ。

「行くよー!」

 リリは二つの銃を合体させ、レーザーを発射した。(合体機能もあるなんて……)ツキナは頭に驚愕の色を浮かべる。
 合体したことでレーザーが太くなった。威力も段違いに上昇しているように見える。ただ威力が上がったことによるデメリットも当然あるようだ。
 リリはスナイパーのような格好で銃を撃っていたのだ。全長が大きくなった分、立ち射撃が困難になったらしい。使う場所とタイミングをしっかりと見極めないと使用は難しそうだ。
 ツキナが思考に耽っている間にモンスターは消滅していた。

「あれ? いつ、終わったの?」

 ツキナはモンスターを撃破する瞬間を見逃してしまっていたのだ。

「さっきだよ、見てなかったの?」
「考え方をしてて、見れなかったのよ……」
「かっこよく決めたのに……」
「ごめん……」
「お姉ちゃん、かっこよかったですよ」
「残念……見たかったわ……」

 ツキナはリリの勇姿を見れなかったので、少しショックを受けてしまう。その気持ちは今は頭の隅に置いておく。第五ウェーブが始まるかもしれないからだ。

「アオ————ン…………」

 また鳴き声が聞こえてきた。一体どのモンスターが発しているのか気になるところだ。モンスターの鳴き声が聞こえた後、数匹の狼が姿を現した。

「今度は動物が相手なのね!」

 ツキナは植物モンスターはもう見飽きていたので、良かったと思っていた。だが狼が相手となると少し厄介にもなる。
 狼は集団行動を得意とする生き物なので、連携攻撃を主体にしてくるはず。統率が取れた動きに振り回されればツキナ達の敗北が決まる。
 
「どうする? ツキリン! できるだけ離れないように戦う?」
「そうしましょう!」
「連携攻撃をしてくる相手には連携攻撃で太刀打ちするということですね!」
「そう! アサガオちゃん、正解!」
「えへへ……ありがとうございます」
「ツキリン! 私も同じこと思ってたよ」
「知ってるわよ」

 ツキナ達は次に戦うモンスターを見てすぐに作戦を立てた。
 連携攻撃を得意とするモンスターには一人で戦うとリスクが多すぎるので、まとまって戦うことが最善だ。それにツキナのシールドの強度も落ちることがないので、しっかりと守ることもできる。

「やるわよ! 準備はいい?」
「もちろん!」
「もちろんです!」

 全員準備ができているようなので、狼との戦闘を始める。
 狼は仲間とアイコンタクトを取った後、絶え間なく噛みつき攻撃を行ってくる。一匹の狼が噛みつき攻撃を行なって退いた瞬間に別の狼がすぐに噛みつき攻撃を行ってくるので、なかなか隙がない。
 ツキナはリリとアサガオをシールドで守りながらどうやったら攻撃を当てられるかを考える。そして出た結論として向こうから攻撃してきてくれるなら迎え撃てば良いと考えた。

「リリ! 拡散爆弾を使って、まず狼たちの足を止めて!」
「オッケー! 任せて!」

 リリはにっこりとしながら返事を返すと、手に爆弾を実体化させてシールドの外に投げる。そして爆発によって三匹の狼が消滅する。生き残った狼達は危険を悟ったのか、一瞬だが足を止めた。

「アサガオちゃん! 起爆クナイを投げて!」
「はい!」

 アサガオは威勢の良い返事をするとすぐに足を止めた狼に向かってクナイを投擲する。数秒もしないうちにクナイは爆発を起こし、十匹の狼が消滅する。こんだけ倒してもまだ二十匹くらい残っているのだが……。
 
「うぅぅぅぅ!」

 狼は唸りながら体毛を立て、警戒心をあらわにしている。(先に攻撃してきたのは君達でしょ!)と言いたくなったが狼が奥にいる何かを守るように立っていることに気づく。何かがあったのだろうか……。
 ツキナはいつの間にか狼を倒すことを考えなくなっていた。狼達が何を守ろうとしているのかが気になり始めたからだ。まず狼達と仲良くならないと……。
 ツキナはシールドを解除して、武器を収める。そしてユニークシリーズの防具も解除し、丸腰で狼達に近づく。

「ツキリン! 危ないよ!」

 リリは心配そうに声を掛けてくれた。

「大丈夫だよ! リリ!」

 ツキナは優しい微笑を含みながら答える。リリはツキナの笑顔に安心したのか、これ以上何も言ってこなかった。
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