攻撃と確率にステ振りしていたら最強になりました

りっくり

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第三十六話 カップル対決とイベント終了

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 心地よい風が草原で寝転がっている僕の眠気を誘う。現在、僕は二百六十ポイント所持している。
 移動はしたもののやっぱり一番ポイントを稼げる場所は最初に転送されたこの場所だった。

「もう終わっちゃうのか……ツキナと戦ってみたかったな……」

 僕は少し寂しさを感じながら呟く。一回死んだらイベントから脱落してしまうと言う条件があったので、久々に緊張感を持って戦うことができた。

「ヒビト! ヒビト!」

 僕は女性プレイヤーに声をかけられたので、目を開ける。あまりにも気持ちが良さすぎて、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。
 僕としたことが……。それより攻撃せずに起こしてくれる優しい人はどこの誰なんだろう。

「ヒビト! やっと起きたわね!」

 この声には聞き覚えがあった。ぼやけた視界が次第にクリアになっていき、女性プレイヤーの正体を見ることができた。目の前にいたのは僕の彼女のツキナだった。

「おはよう! ツキナ!」
「おはよう、じゃないわよ! 緊張感なさすぎよ!」
「風が心地良くて……つい……」

 ツキナに指摘をされてしまったので、僕は言い訳を述べる。

「つい、じゃないわよ! 私じゃなかったらどうしてたの?」
「死んでた!」
「自信を持って言うことじゃないわよ!」
「はい……そうでした……」

 僕は苦笑いを浮かべる。そのことはさておき、さっきから後頭部から柔らかい感触が伝わってきている。

「もしかして、膝枕してくれてるのか?」
「そうよ! 地面に頭をつけてたら汚いでしょ!」
「そうだけれども……」
「嫌だった?」
「いえいえ! 全然! むしろ嬉しいです!」
「ならいいじゃない!」

 ツキナもどんどん積極的になってきている。大人の階段を登ったことに影響しているのか……。

「ヒビト! 全力で勝負しましょ!」

 ツキナは一転して本題を切り出してくる。

 そうだった今はイベント中だった……。幸せすぎてすっかり忘れていた……。

「いいぜ!」

 そう言うと僕はゆっくりと体を起こして、星斗天雷刃を構え、アサとヨルに雷攻撃をしてもらい【窮地】を発動する。ツキナも月虹玉花を構える。

「勝負‼︎」

 僕とツキナは同時に腹の底から声を出す。

「兜割!」

 僕は剣を振り下ろし、ツキナを目掛けて斬撃を飛ばす。ツキナに僕が【貫通攻撃】スキルを持っていることはすでに割れているので、【シールド】を使わずに右に回避する。

「炎の舞! フレイムラーミナ!」

 ツキナは炎の刃を作り出し、僕に向けて放ってくる。僕は一つずつ正確に斬り落としていく。
 魔法を斬るためには核になっている部分を正確に見極めて斬る必要があり難易度が高いと言われているが、剣道で鍛えられた動体視力と極限まで研ぎ澄まされた集中力によってそれを可能にした。

「嘘でしょ! 魔法を斬るのは難しいはずよ!」
「勝つために隠れて練習してたんだ!」

 僕は胸を張りながら言い放つ。そう、僕はもしツキナや魔法使いとイベントでバトルすることになった時、対応できるようになるために内緒でリリに魔法しか使ってこないモンスターが出るダンジョンを教えて貰い、そこに潜って練習を行なっていた。五十回以上死んだ苦い記憶も一緒に思い出す。このことは人には絶対言えない。

「対策済みと言うことね! ならこれならどうかしら! 銀世界《シルバー》!」

 ツキナは一瞬にして僕を氷漬けにする。

「終わったわね!」

 ツキナは勝ったことを確信しているようだが、このスキルも対策してある。

「燃焼」

 僕が声にならない呟きをすると体が自然発火し、僕を覆っていた氷を溶かす。ツキナは唖然として僕をまじまじと見つめていた。

「炎属性のモンスターを食したことで手に入れたスキルだ!」
「食すなんて普通考えないわよ! ヒビトの行動には驚かないと決めていたけどやっぱり無理ね!」
「そうか? ツキナも今度、モンスターを食べてみたら? 意外と美味しいぞ!」
「ぜ、ぜ、ぜ、絶対! 食べないわよ!」
  
 ツキナは全力で嫌がっているようだ。

 モンスターを食すことで相手が触れるだけで状態異常にするスキルが手に入ると言うことが分かったので、それをツキナに教えるために言ったのにあそこまで拒絶されるとは……。よく考えてみると普通、食べたくないか……。

「次の攻撃で絶対、終わらせてやるわ!」
「受けて立つ!」

 ツキナがいつもプレイヤーを倒している戦法をことごとく僕が打ち破っているので、少しイライラしている様子だ。(対策しすぎたかな)と心の中で反省しつつ全力で応えることにした。対策したと言っても魔法を斬ること。それから【銀世界《シルバー》】の対策しかしてない。
 他の属性の攻撃をされたら一瞬にして負けしまうと思う。それでもツキナは僕が全ての攻撃で対策していると踏んだみたいで、大技を使ってくるみたいだ。これなら勝機はあるかも……。

「天変! 地異!」

 ツキナは月虹玉花を光らせながら空中に浮いていき、凄まじい声を出すと風が荒々しく草を吹き倒し始める。踏ん張っていないとどっかに飛んで行ってしまいそだ。さらに上空からは複数の隕石が落ちて来ている。

「これは出し惜しみしているとやられるな! 疾風迅雷発動!」

 僕はAGIをSTRと同じにして、隕石を回避しながらツキナを目指して進む。
 地面に隕石が激突すると噴火が起こる。さらに地面が地震のように激しく揺れる。殺傷能力の高いスキルだな、これは……。僕はそんな中で足を進め、ツキナの真下まで来た。

「ごめん! ツキナ! 勝たせてもらうぞ!」

 僕は全力で地面を蹴ってツキナの目の前まで跳ぶ。そしてHPを一にしてSTRを三十六倍にする。完全に賭けである。ツキナがこのスキルを発動している間に動ければ僕の負けだ。

「雪・月・花!」

 僕は自身の中で最高威力の攻撃をした。

「私の負けね!」

 ツキナはそう言うと目を瞑った。僕は視聴者に見えないように軽くキスをして、ツキナを斬った。ツキナのHPはゼロになり消滅した。

「これでイベントを終了します! 優勝プレイヤーはヒビトさんです! ヒビトさんには九尾がプレゼントされます! ストレージを確認してください! なお、惜しくも優勝できなかった三位以内のプレイヤーにはイベントでしか手に入れることのできない子龍をプレゼントします! しっかり育成すれば幻獣と同等の力を手に入れることができるかもしれませんよ……頑張ってください!」
 
「まさか……僕が優勝できるなんて……」

 僕は驚愕のあまり足がガクガクになっていた。僕の所持ポイントは六百。ツキナが相当稼いでいたことが分かった。

「後で感謝を言わなきゃな!」

 僕はそう心に決め、噴水広場に転送されるのを待った。
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