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第十三話 確認と帰還

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 ダンジョンから戻る際、複数のモンスターと戦ったがダメージを受けることなくダンジョンから出た。
 外に出ると菜の花が一面に広がっており、ダンジョンに入る前に見ていた景色である。

「やっと戻ってきた――!」

 僕は両手を上にあげ、伸びを行う。
 ダンジョンの中はこんなきれいな景色は一切なく同じような道をずっと進んでいただけだったので、外に出た瞬間に吹きこぼれる喜びを抑えきれなかった。

「おかえり! ヒビト!」

 僕に優しく声を掛けてきてくれたのは、僕の彼女でもありパーティーメンバーでもあるツキナだった。
 ツキナの声を聞いた時にダンジョンで溜まっていた疲れが時間の経ったドライアイスのようにスッと消えていくのを感じていた。

「ただいま! ツキナ!」

 僕は顔に気色を浮かべながら答える。
 このやり取りは仕事から疲れて帰ってきた夫が、優しい妻に声を掛けられて癒される時と同じに思えた。まるで夫婦みたいだ。

「すごくかっこいい服を着てるわね!」

 ツキナは最初に僕が装備している防具と武器のことに触れてきた。
 ダンジョンに入る前と全く違う格好をしているので触れられるのは当然だが、かっこいいと言われたので弾んだ気持ちになる。

「これはダンジョンでゲットしたユニークシリーズの防具と武器だ!」
「おめでとう! 明日ご飯奢るわ!」
「ありがとう!」

 ご褒美にゲーム内で明日、ご飯を奢ってくれるらしい。

「ユニークシリーズの名前は何なの?」
「雷鳴シリーズと言うらしい」
「と言うことは……ダンジョンには雷属性と麻痺属性のモンスターが出てきたわけね?」
「そうだけど……知らなかったのか?」
「ダンジョンの場所は知っていたけど、入ったことはないわ!」
「入ったことないのかい! そんな未知な場所に初心者を突っ込むな!」

 僕はこのダンジョンで苦い経験をしているので、ツキナが入らなくてよかったと思いつつ突っ込んでみた。

「ごめんなさい……」

 冗談で強い口調で言ってみたが、ツキナが本当に申し訳なさそうな表情になっているので慌てて弁明する。

「怒ってないからね! だからそんなにしょんぼりするな!」 
「分かってるわよ!」

 ツキナは落ち込んだ顔から一転して、僕をだましてやった見たいな表情に変化した。

「やられたぁぁぁぁぁぁ‼」

 僕はツキナの演技にすっかりとだまされてしまった。かわいい子があんな表情をしていたら誰だって騙されてしまうと思う。

「やったわ! それよりスキルとステータスの整理をしたら?」
「そうする。もう少し待ってて」
「いいわよ!」

 僕はツキナにそう告げると少し離れた位置でステータスやスキルなどを確認することにした。
 
「最初はステータスから……」

 僕はリンクメニューからステータスの項目を選択する。

ヒビト(Lv30)
ステ振り可能なポイント 15
HP 1550
MP 390

【STR+50】
【VIT+0】
【DEX+25】
【AGI+0】
【INT+0】

「ポイントはSTRに十、DEXに五、振っておくとして、次はスキルの確認だな!」

 僕はステータスの項目を閉じて、スキルの項目を開く。

スキル
【達人芸】
【弱点特攻】
【麻痺無効】
【雷無効】 
【帯電】
【瞑想】
【窮地】
【雷電】

「こんなにスキルを獲得していたのかぁ……最後は装備を見て見よう」

 気づかないうちにスキルを予想以上に多く獲得していたので驚いてしまった。
 僕は今回のダンジョンで最高の装備を手に入れたので、胸の高鳴りを感じながら改めて確認する。

武器【星斗天雷刃】
スロット【神角】 
頭【雷鳴サングラス】 
スロット【空欄】【空欄】
体【雷鳴ロングコート】
スロット【空欄】【空欄】
手【雷鳴グローブ】
スロット【空欄】【空欄】
腰【雷鳴ベルト】
スロット【空欄】【空欄】
足【雷鳴レザー】
スロット【空欄】【空欄】

装飾品
【幸運を呼ぶネックレス】
【ヒーリングブレスレット】
【空欄】

シリーズスキル
【雷轟電撃】
【疾風迅雷】

 その他でMP消費半減とSTR常時二倍が付いていた。

「いい眺めだなぁ……! 苦労して手に入れた甲斐があった」

 僕は装備を見て、感銘を受けた。
 一通りステータスやスキルの確認が終わったので、ツキナの元へ戻って行った。
 
「確認してきたぞ!」
「そう! どうだった?」
「見てて、面白かったよ!」

 僕はツキナと普通の会話をして、手を繋いで街に戻ろうとしたのだが、ツキナが急に動けなくなってしまった。

「どうした?」
「体が痺れて動かないのよ!」

 ツキナのその言葉を聞いた時、僕は【帯電】を発動させていたことに気づく。
(やべぇ……やっちまった……)
 僕はすぐにツキナに謝った。

「ごめん! ツキナが麻痺ったのは僕のせいだ!」
「何で?」
「【帯電】と言うスキルがまだ発動している状態だった!」
「もう! ヒビト!」
「ごめん、ごめん! 運んでくから」

 僕はツキナをお姫様抱っこして、街へ向かって走り出した。
 ツキナは顔を真っ赤にして、何も言えない状態になっていた。
 このフィールド始めたばっかりのプレイヤーたちが最初にレベ上げを行う場所なので、多くのプレイヤーがモンスターと戦っている。そのためお姫様抱っこをしていると目立ってしまうのだ。

「もう少しだから我慢して……」

 僕は体にしがみ付いているツキナに優しく声をかけ街の前の門のところでツキナを下ろす。

「動けるか?」
「動けるわ! それよりも恥ずかしかったんだからね‼︎」

 麻痺状態から解放されたツキナが顔を赤面させて必死に僕に訴えてくる。

「あそこで待ってるよりも早く着いたんだからいいじゃん!」
「よくないわよ! もう! それに【麻痺無効】のスキルを獲得してしまったじゃない!」

 ツキナは僕がお姫様抱っこで街まで運んでいる間に何度も何度も麻痺状態になっては治ることを繰り返していたらしい。
 僕はこれで【帯電】を気にせずに手を繋いだりできるので、少しホッとしてしまっていた。

「良かったじゃないか! これからは【帯電】を発動している状態でも手を繋げるな!」
「うん……」

 ツキナの声が小さすぎてよく聞こえなかったが、機嫌が直っているようなので良かったと思う。
 僕はツキナといつもログアウトする時に使用している宿に向かった。
 宿に入ってベッドに着席した僕とツキナは現実世界の時刻を確認する。
 時刻は深夜二時を回っていたので、今日はゲームをやめてログアウトすることになった。
 
「おやすみ! ツキナ!」
「おやすみ! ヒビト!」

 ツキナが僕よりも先にログアウトした。僕はもう少しだけここに残り、アサとヨルにご飯をあげることにした。

「出ておいで!」

 僕が一声掛けるとロングコートの内ポケットで眠っていたアサとヨルが姿を現した。
 僕はアサとヨルにご飯を与えた。
 ツキナに紹介しなかったのはアサとヨルが疲れ切って眠ってしまっていたからである。
 僕は明日、ツキナに見せると決め、ゲームからログアウトした。
 自室に戻ってきた僕は寝る支度を素早く整え、布団の中に入る。
 明日からは友哉がこのゲームにログインする予定なので、レベ上げとかも手伝わないといけないし、ツキナのことも紹介しないといけない。
 僕は明日が来るのを楽しみにしながら目を閉じた。
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