クモドロ

にゃんちら

文字の大きさ
上 下
2 / 3

第二話 初対面

しおりを挟む
林について行くと、こんどは小会議室的な場所に通された、美術さんが作ったであろう小道具が乱雑に置かれている。

「では、もう少ししましたらゲスト顔合わせを行いますので、大変申し訳ありませんがもう少々お待ちください」

というと、林はまた足早に消えてしまった。

椅子に座り、ぼーっと机の上のスケジュール表を眺めていると、突然部屋のドアが開き、二人組が入ってきた。

「こんにちは、COMの坂本と和泉です、本日は共演させていただきます。よろしくお願いします」

話題のイケメンダンスユニットであるCOMの2人だ。

「コンポーザーの宮下仁と申します、こちらこそよろしくお願いします」

俺もすかさず挨拶を返した。

その後も、ぞろぞろと人が入ってきて、挨拶の大渋滞が起きた。無事消化し終わった時、

ドアがそ~っと開いて、隙間から顔が出た。

「すいま、、せん、遅れました」

怜ちゃんだ。俺の鼓動がどんどん早くなる。

怜ちゃん、れいちゃん、れいちゃ…

俺の脳がまた処理落ちしそうになる。

目の前にずっと前から推していた女性がいるなんて興奮以外の何ものでもない。

「宮島怜です、遅れてしまってすいません、今日はよろしくお願いします」

怜は若干恥ずかしそうにしながら、笑顔で会釈した。

「では、全員揃ったので、打ち合わせしちゃいます、まずは…」

林が進行で打ち合わせが始まった。

しかし目の前に推しがいるという興奮を抑えることなんか出来るわけがない、俺は話を聞きつつも、バレないようにちらちら怜の方を見ていた。

整った目鼻立ち、ツルツルのお肌、サラサラの髪…

かわいいいいいいいい。

非の打ち所がない。粗探しなど出来るはずがない。ああ神はどうして1人の人間にいくつも能力を与えてしまうのであろう。人生は不平等の極みだな。と勝手に落ち込んでいる時、打ち合わせは終わった。

「では、今からスタジオの方に移動しますので、エレベーターで16階に上がってください、皆さん、本日はよろしくお願いします」

林が大きな声で指示を出すと、皆ゾロゾロと立ち上がって部屋を出た。

エレベータホールでエレベーターに乗り込もうとした時、人数オーバーでアラームが鳴ってしまった。

「すいません、後ろの2人の方、悪いんですけど、次で行ってもらっていいですか?」

林が申し訳なさそうに言った。

俺と怜が最後の2人だったので、エレベーターから降りた。

先発のエレベーターが行くと、俺はすかさず上行きのボタンを押した。

「あ、ありがとうございます」

怜がこちらを見てニコッとした。

「い、いえ」

目の前の推しをまじまじと見つめると本当に気絶しそうなので、あえて怜の顔を見ないようにして言った。

エレベータホールに沈黙が訪れる。

「宮下さんは初収録ですか??」

怜が言った。

「あ、初めてです」

急に話しかけられ、びっくりして、俺は消え入りそうな声で答えた。

聞こえたかな、今の、、。

いや、そんなことはどうでもいいんだ、なんか話さなきゃ、なんか、、、

と、再び沈黙が訪れそうになった時、

ーー上へ参りますーー

絶妙なタイミングでエレベーターがやってきた。

沈黙が崩れた安堵と、怜と話したかったけど無理だったという落胆が同時にやってきた。

俺はエレベーターに乗り込み、すかさず16のボタンを押す。

「ありがとうございます」

怜がニコッとして俺を見た。

俺が怜の方を見ようとしないので、怜は不思議そうな顔をしてエレベーターに乗り込んだ。

本当ならば、「いえ、レディーファーストですから」という最高にクサイ台詞でも出てきたらいいのだが、この短時間で数回も笑顔攻撃を喰らった俺はもうKO寸前だ。それどころではない。

エレベーターが16階に着くと、俺はすかさず開くボタンを押した。

「ありがとうございます。今日はよろしくお願いしますね」

怜はとどめの笑顔を見せると、スタジオの中に消えた。

俺も怜の後を追ってスタジオに入った。












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

М女と三人の少年

浅野浩二
恋愛
SМ的恋愛小説。

処理中です...