この恋は始まらない

こう

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第61.2話・水着を買いに行くまで。 そのに。

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それから、俺は全員の鞄を抱え。
荷物もちをしていた。
ショッピングモールまでの道のりを、俺だけで運ぶ。
これで許して。

「反省の仕方が高校生並みだな」
高校生だからね?
荷物もちで許してくれよ。
「腹を切って詫びるべきじゃね」
萌花は相変わらず厳しいのだった。
いや、俺が悪いのは分かる。
だが、何で俺だけくっそ厳しくて、大人の対応をしないといけないんだよ。
理不尽じゃないかよ。
萌花は正論を言う。
「いや、大人として認められているから、特別厳しいんだよ。他の野郎には誰も言わないっしょ」
特別だから、厳しくなる。

萌花は、口ではボロカスに言っているが、それは俺に少なからず期待しているからだ。
俺にやりとげる実力があるのに、日頃の行いが悪い上に、言動が適当だから注意されるのだ。
え、めっちゃボロカスに言われてないか?
萌花の言い方はさておき。
出来ない奴に、そもそもそんなことを言わないし、興味がない相手にリソースを使うほど女性は暇ではないし、愚かではない。
萌花が俺に対して特別五月蝿いのも、一種の愛情の裏返しであり、俺に男として成長して欲しいから鬼のような形相で言ってくるのだ。
他人に怒るのだって大変なのだ。
萌花はいつも口が悪いけど、最近は他の男子と揉めることはなくなった。
前までは、陽キャだから他クラスの女子や男子と交流があったのかも知れないが、今は全く興味がないのだろうか。
「彼氏持ちは普通にそういうのに参加しなくていいんだよ。他クラスとの交流とか、顔出すだけの親戚の集まりみたいなもんだし」
萌花達の横の繋がりはよく分からんけど。
他のクラスの連中とは、結構ドライな関係なんだな。
秋月さんや萌花は、たまに前のクラスメートと仲良く話しているし、友達は多いんじゃないのか?
「ほら、恋人が他の異性と話しているのは見ていて嫌だろ? そういうもんじゃん。暗黙のルールだし」
「え? そうなのか?」
ほえぴぃ。
俺は陰キャだし、恋人が出来るのは初めてだから、その手のルールは分からん。
何事も初体験ばかりや。
普通に学生の常識だと言われても困る。
普通ってなんだ。
オタクに常識を語らないでくれ。
こちとら高校二年までぼっちだったんだぞ。
まあ、好きな女の子と仲良く話す男子が居たら、やっぱり嫌なのが普通なのか。
野郎というのは付き合ってもいないのに、美人に対して可愛いとか、綺麗とか軽々しく口する男子も多い。
綺麗な女性を褒めるのがレディファーストと勘違いしているタイプもいるが、それは間違いだ。
母親が言っていたが、男が女性を褒めていいのは、最愛の人だけだ。
この世で唯一。
それ故に価値がある。
男は、多くは語らなくていい。
最愛の人には取り繕うことなく、ただ本心で話せばいいのだ。
だから、二人はママを素直に褒めなさい。
ママはママであることを褒めて欲しいのです。
それは違うだろ……。
その時の俺と親父は、二人してドン引きしていた。
そんな記憶が甦る。
あの人、脳までヤンキーだし、本質をはしょるから意味が分からないが、好きな人や家族の言葉は自分の人生に深く関係するから重いが、それ以外の他人からの意見なんて軽くて耳障りなだけ。
そう言いたいのだろうか。
相手が母親だから気にしたことないが、あの人今でも結構モテるらしいし、美人は色々と大変なんだな。
街を歩くだけで声を掛けられ、出会う男が多ければ、それだけ面倒事に巻き込まれるわけだしな。
そこら辺は、小日向を見ていればよく分かるものだ。
そうなってくると、彼氏がいる女の子が、わざわざ見えた地雷を踏みに行く必要はあるまい。
同じ学校でも他人は他人だ。
無駄な話をしたくないだろう。
所詮は他人の戯れ言。
私の心に響かない。
それならば、仲の良いクラスメートである、周りの人間とつるんでいた方が幸せなのだ。
クラスの連中は大切な友達だし、困っている時は助けてくれる。
文化祭やテスト勉強。
メイド喫茶の時も手伝ってくれたのは、あいつらだ。
それに、みんな本心で語ってくれるからな。
自分を隠さなくていいから、気楽なのだ。
三馬鹿みたいなやつでも、その点では有難い。

「なるほど。美人も大変なんだな」
「……モノローグ見えている前提で話をすっ飛ばすなよ。全部分かっているわけじゃないんだよ。あと軽々しくもえのことを美人とか言うな」
「男が女性を褒めていいのは、……」
言ったら怒られた。
何でや。
俺は悪くない。


怒られながらもショッピングモールに到着し、一目散に水着売場にやってくる。
「水着だ! 水着だ! 水着だ!」
子供のようにはしゃぐ小日向風夏。
ぐるぐる回っている。
こいつ、犬かよ。
鞄を持ってやっているんだから、はよ行ってこい。
どうせ水着選びも二時間くらい悩むんだろうし、早く行ってきてほしい。
女子どもを見送り、一息吐く。
さて、こいつらの鞄はコインロッカーに入れて置こう。
スクール鞄とはいえ、何時間も手に持っていたら鬱血して死ぬわ。
そもそも俺の鞄だって二つ持ちだし、パソコンが入っていて重いし落としたら危ないからな。
みんな、財布は自分で持っているみたいだが、一応鞄を仕舞っていいか確認してからコインロッカーにぶち込む。
空いたスペースに黒川さん達の分も入れておこう。
コインロッカーのパスワードは、5963だ。


俺は遅れて水着売場に合流する。
流石、夏といえば水着である。
例年よりも広々とした売場が作られていた。
ショッピングモールの広場をめいいっぱい使っていて、数百着の水着が取り揃えてあるのだ。
読者モデルの雑誌に載っているような数万円するハイブランドの水着はないが、学生でも手を出せるレベルのものが多い。
お手軽かどうかは人それぞれだが、数千円から買えるものがある。
それは有難い。
普通の人が行き交うショッピングモールだし、まあ一般的なデザインが多い。
ビキニタイプやワンピース。
胸元にフリルが付いていて、胸元が隠れるタイプのオフショルダービキニ。
あとは、定番のタンキニとかか。
水着の種類はいっぱいあるが、どれも年齢層に関係なく着れるような綺麗に纏まったデザインが多い。
若者が遊びに来る都心ってわけじゃないから、変に凝ったデザインを出しても売れにくいからな。
あくまでインスタ映えよりも、デート目的で選ぶのだから、普通に無難で可愛い男受けがいいデザインを選ぶものだ。
シンプルイズザベスト。
可愛いは正義だ。
ジュリねえの時にも言ったが、男性の大半はファッションに興味がないし、彼女には流行に合わせて欲しいわけではない。
彼女に似合う、普通に可愛い格好をして欲しいのだ。
新宿や渋谷で売っているような大人びたデザインを、無理して着る必要はないだろう。
慎ましやかな女性こそ、美しい。
水着姿であることを恥じらう姿が見たいのだ。
「あ、これとこれ可愛い。あとこっちも買おうかな♪」
鼻歌交じりで選んでいやがる。
小日向は、開幕からぶっ飛ばして数着の水着を買い物かごにぶち込んでいた。
いや、小日向。
少しは吟味しろ。
目と目が逢う瞬間に決めるな。
可愛い洋服ちゃん達をお迎えするな。
今年の夏に何回水着を着るんだよ。
あ~ん。
この娘に、女性らしい慎ましさを求めるのは無理だな。
恥じらいはとうに捨ててきた。
小日向ママとは正反対である。
似ているのは、ブチ切れた時の形相くらいだろう。

小日向は、仕事が激務だった反動か、購買欲求がドン引きレベルである。

今日一日で、数万円を使い果たす気だ。
ストレスをショッピングで解消するタイプの人間は大変だな。
まあ、こいつの場合はちゃんと自分で稼いだお金だから、何に使おうかは自由だし、口出しはしない。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
いや、すまん。
小日向ママに、娘を止めて欲しいと言われていたわ。
全力で止めるわ。
すまんな、小日向。
彼女のお母様の命令には逆らえないんだ。
「小日向、無駄遣いするなよ」
「は? 水着は無駄じゃないよ??」
何言ってんだ、こいつ感が強い反応をされる。
当たりつえぇんだよ。
目付きがサイコ過ぎる。
読者モデルに命を懸けているだけある。
いや、だからって、ファッション絡みの時だけ人格変わるの止めてくれ。

「何着も買って、お母さんに怒られるのは小日向だろう? 半分にしなさい」
「やだ~! 全部可愛いから、全部欲しいの~!!」
「駄々こねるな。海行くだけで何着も水着を買うやつがいるか」
「え~、旅行は三日間だから、最低三着はいるよ! ……ううん。午前と午後で着替えないといけないから、六着は必要」
「そんな、いらねぇよ!」
「ぜったいにいる!!」
小日向風夏の駄々を捏ねる。
おかし買ってほしい幼稚園児かよ。
だから、数千円の水着を使い捨てみたいに何着も買おうとするな。


神視点。
ハジメと風夏のやり取りを遠巻きに見ていた萌花達であった。
「あの二人、相変わらず仲良いよな」
「まあ、一番付き合いが長いのはあの二人だからね。そこはしょうがないんじゃないの?」
「ふむ。良いことだろう。風夏が元気なのは、東山のお陰だからな」
よんいち組の面々は、騒がしく水着選びをしている二人を見ながら、水着を見つつ楽しそうに雑談していた。

小日向風夏に容赦なく口出し出来るのは、世界に唯一。
ハジメしか居ない。
声の大きさから喧嘩しているように見えるが、本人の為を思って言っているだけで、別に喧嘩しているわけではない。
子供が間違ったことをしていたら、道を正してあげる。
それが愛というものだ。
ハジメだって、相手が風夏故に水着を数着買うのは許そうと思っていたが、午前と午後で違う水着を着たいと言い始めたからには、もう駄目だ。
萌花達ですら、擁護しようもない。
どっからどう見ても、無駄遣いである。
普通に考えて、水着なんて一着買えばいい。
小日向風夏は毎年水着を購入しているが、一回くらいしか使っていないし、胸も頭も成長していない。
去年買ったものでいいのだから、何着も水着を爆買いしている風夏が特殊なのだ。
洋服を着るのが仕事の読者モデルなら、それもありだけど。
見逃せるものではない。
二人の口論は白熱していたが、風夏の一言で終息する。
「SNSの宣伝に使うもん」
「……なら、仕方ないか」
仕事かあ。
ハジメは馬鹿なので、納得するのが早過ぎる。
いつものように口喧嘩していても、読者モデルとしての小日向風夏のその姿を誰よりも見ていて、誰よりも信頼しているのはハジメだ。
だから、風夏が仕事で必要と言ったら疑うことはない。
理由は一つ。
絶対に彼女は嘘は付かない。
小日向風夏は、ファッションに対して、誰よりも真剣に向き合っている。
血が滲み出るほどの努力は、自分を裏切らない。
そう思いながら努力していても、その過程で辛いことだって幾つもあったはずだ。
そうだと言うのに、ハジメが知る彼女は、いつも笑顔を崩さず、太陽のように明るく輝いている。
読者モデルの彼女を見ていると、こう思うのだ。

彼女は、愛の意味を教えてくれる。

人が持つぬくもり。
生きている人間の尊さ。
ハジメが抱くそれは、恋愛における好きという感情よりも大きくて偉大な、全ての人を救うことが出来る愛。
我が子を愛する母親のように、その愛には見返りが存在しない。
純粋なアホだから、不器用な生き方しか出来ないのかも知れない。
読者モデルに向いているが、向いていない。
そういう人間だからこそ、人は惹かれ、知ることで心から尊敬することが出来て、いつしかそれは信頼になるのだ。
人として憧れ。尊敬し。
愛している。
しかし、いつも好き勝手するし、永遠に話し続けるし、落ち着きがない。
素直に好きになれないのが、小日向風夏なのだ。
手が掛かるやつと出逢ったのが運の尽きだ。

ハジメは小さく笑っていた。
他人が見たら表情が分からないレベルの仏頂面だ。
口元が少し動いただけ。
感情レベルの十段階で、二くらいしか叩き出していない。
生まれてからずっと、無愛想な男の子である。
全く以てイケメンじゃない。
それでも、その小さな笑いは、風夏は好きだった。
満面の笑みに等しい。
そう思えるくらいに、彼の愛を知っている。
「ハジメちゃん笑ってる~。可愛い~」
この女、容赦ない。
ツンツンツン。
風夏は、嬉しそうにハジメの肩をつついていた。
思春期の男性に対して、可愛いとか言い出すざんねんな女の子である。
男の子にそれは禁句だ。
ハジメからしたら可愛いなんて、母親からしか言われない言葉だ。
ハジメちゃん、ちゅっちゅ。
むちゅこたん。可愛い~。
感度3000倍になってるんか。
最推しの同人誌見て発狂するオタクと同じくらいのテンションの母性愛である。
彼が受ける可愛いは、そのレベルの狂喜を孕んでいるため、当の本人は素直に褒めているつもりだろうが、完全に逆効果である。
楽しそうにしている風夏とは真逆で、さっきまで笑っていたハジメは、虚無になっていた。
マイナスにおいては、感情の起伏が激しい男である。
ハジメからしたら、鬼のように元気な小日向風夏の相手は慣れたものであり、今さら指摘したり注意する気にもならない。
陽キャにクソみたいに絡まれていても、無のままなのは、むしろもう心が死んでいるのかも知れない。
彼女のどこが好きなんですか?
とファンに聞かれて。
え?
そう返すくらいに、風夏との付き合いが長いハジメは冷静であった。
世界一可愛い彼女が抱き付いても、眉一つ動かさない。
それは、変に思うかも知れない。
普通なら可愛い女の子が隣に居て、甘くていい匂いがしたらドキドキしそうだが、相手は小日向風夏だ。
抱き付かれても、赤ちゃんの匂いがするようなものだ。
はいはいつよいつよい。
好き嫌いがないせいか、丈夫に育ったものである。
「何だよ。……俺に恨みでもあるんか?」
風夏ちゃんの過度なスキンシップ。
抱き付いてくれば、小さいながらも胸の感触がする。
ラブコメならば、定番中の定番。
ある意味、色仕掛け以上に男の子なら喜ぶ。
ハプニングもハジメには通じない。
だって、相手は東山ハジメだ。
この子の脳みそには、メイド服とコーヒーしか詰まっていない。
この物語からその二つを抜いたら、何も残らない。
ハジメは、元々恋愛下手な部類の人間なので、直情的な恋愛をする風夏とは相性が悪いのだった。
いや、ハジメは過度なスキンシップが嫌いなだけで愛情表現はする方か。
どちらにせよ、男女の距離が近いのを嫌っていた。
「ちけぇよ」
「近くない」
「ちけぇって言ってんだろッ!」
「近くないよ!!」
絶対にスキンシップしたい人間と。
絶対にスキンシップしたくない人間のほこたて。

両手で掴み合い、取っ組み合いして、ぎゃあぎゃあする二人を見ながら、萌花達は各々の水着を吟味していた。
慣れた様子で流しみしている。
二人が騒がしいのはいつものことだ。
「東っちも別にあれくらい許容してもいいのにな。デートの時に手ぐらいよく繋ぐじゃん」
「え?」
「ん?」
麗奈と冬華は知らぬ存ぜぬ。
デートの時は何度もあっただろうに、手も繋いでいないんか。
「れーな、嵌めやがったな」
「いや、萌花が勝手に口にしただけでしょ……。萌花にしては珍しい失言だけど」
「お前を殺す」
「え、いや。何で私が殺されるのよ」
口封じに麗奈は殺されかけていた。
命の価値が何よりも軽い。
それが、この恋の世界だ。
ヒロインの代わりは幾らでもいる。
麗奈の命の価値は低い。
「なんで?!」
そんな冗談はさておき。
冬華は話を進める。
「ふむ。デートの際の出来事は情報共有しているが、デートでは多少の違いがあるようだな」
羨ましい。
彼氏と手を繋ぐことは、キスの時のように、よんいち組としてカウントすべきか否か。

手を繋ぐことくらい、幼稚園児でもやっていることだけれども、好きな人と手を繋ぎたい。
少しでも近い距離に居たい。
少しの間でも触れ合いたいのが、乙女心である。
麗奈は挙手する。
「カウントを所望します」
「何でお前が熱望してんだよ。居候してんじゃん。チャンスあんじゃん」
「近いからってチャンスがあるわけじゃないのよ。東山くん結構隙がないんだからね!?」
「思春期の男子高校生みたいな形相で彼氏を狙っていたら、あいつも逃げるわ!」
性欲強い系女子。
よんいち組のおっぱい担当だけあってか、セクシャルなアピールをするのは良しとしよう。
しかし、他人の家でやるなや。
あんだけ毎日世話になっているハジメの両親に悪いと思わないのか?!
他の部屋に家族居るのに、成功するわけないわ。
「え? 駄目なの……? じゃあ、手を繋ぐのってハードル高くない?」
「高くねえよ」
すん。
澄ましたんじゃねえよ。
萌花、当然の如くキレる。
麗奈は潜在的エロスのくせに、可愛い子ぶっていた。
普通にデートして。
普通に手を繋いで遊べ。
王道のラブコメをしろ。
それが普通の高校生なんだよ。
ハジメは、女の子の気持ちを察する能力はゴミカスだが、言ったらそのままやってくれる分マシである。
聞き分けがいいから、お願いすればいいだけだ。
親友に苛つく萌花であった。
「じゃあ、当分の課題は手を繋ぐな」
萌花はメモ帳を取り出し、記入しておく。
ずっと前にキスを済ましているのに、何で手を繋ぐことに躍起になっていたり、恋人同士ですることのランクが下がっているのかは不明だが、気にしていてもしょうがない。
相手は東山ハジメだ。
今どきな男の子にしては堅物の天然記念物で、頭がゆるいのだ。
無理なものは無理である。
男ならこうあるべきだ。
そんなお堅い性格をしているため、女の子とスキンシップをするのを嫌う。
嫁入り前の娘さんが、男性と仲良くするなんて、自分の価値を下げる行為をするのは悪いことだ。
操は硬い方がいい。
彼なりに彼女を大切にし、娘さんを大切に育ててくれた両親への最大限の敬意と義務を果たしているのだろう。
結婚するまで女性として身持ちが堅く、品行方正のよい行いをすべきなのは分かる。
えっちなことはその後でいい。
ハジメと付き合うことにおいて、人間としての品位が求められることは重々承知していた。
人との繋がりが深くなるということは、大人として我慢して生きていかなければならず、学生の立場からしたらしがらみが増える。
面倒で、逃げ出したいこともある。
だが同時に、そこに確かに見える愛があれば、大変なことも幸せだと言える。
全員そう思っていた。
よんいち組として深く関わることで、多くの人との繋がりが増え、誰かの為に色々しなければならない。
前よりもやることばかりで、慌ただしい毎日が流れていく。
ハジメを中心として、騒がしい面々ばかり集まっているが、そこに苦痛を感じたことはない。
人との出逢いは縁である。
小さくて、大きなもの。
かたちが違う出逢いがたくさんあって、私達の人生を紡いでいく。
十年後も、数十年後も同じように過ごしていたい。
どんな出来事でさえ、大切な思い出になっていく。
こうして、何気なく皆でショッピングをすることでさえ、ハジメが居なければ存在しなかったはずだ。

だから、出逢いは大切なのだ。
ハジメが居なかったら、同じクラスであっても、話すことなく終わっていただろうか。
それを可能に出来るのは一種の才能だ。
手を取り合うことは難しい。
ハジメや風夏のように、誰かの為に尽くすことが出来る完全なる善人はこの世にそんなに多くはない。
人は、生まれながらの才能がある。
祝福されて生まれ。
両親から愛を受けて育つのだ。
愛を知らなければ、人は優しく出来ない。
愛は全てを照らすほどの強烈な光であるが故に。
その祝福はいつしか呪いになる。
どれほど優れた人間であっても、人は人でしかない。
この世に弱くない人間など居ない。
ハジメも風夏も、人の助けを借りなければ前を向いて歩けないタイプの人間だ。
まだまだ子供だし、色々な人に支えられて、生きている。
人は弱いから、美しい。
それを教えてくれるのが、二人なのである。
人とは斯くあるべし。
華やかな舞台に立つ者は、百回以上血の滲む努力を繰り返しているのだ。
ファンからの憧れや夢を原動力として、人に勇気と愛を与える。
読者モデルとは、ファンに生きる姿を見せる仕事だ。
二人にとっての天職なのであった。
その為なら、百回も繰り返し行う努力は、苦ではないのだ。
「ねーねー。この水着は?」
「もう見た」
100回水着を見たハジメ。
それは違うだろ。
死んだ魚の目をしていた。


それから三十分後。
他のメンバーは真面目に水着を選び、風夏は六着の水着を購入することになった。
「ハジメちゃん、これも買う」
「いらねえだろ」
「いる」
「え、いらないだろ」
「いる!!」
ガチ目にキレる小日向風夏。
「……ええ、何でキレたの。どっからどう見ても同じビキニタイプじゃん」
彼女に怒られて、引き下がるのが早い男。
女性には頭が上がらない。
それは、東山家の血筋である。
元ヤンの尻に敷かれる父親の後ろ姿を見て育っただけあり、女性と喧嘩するメリットがないと理解していた。

風夏が手に取っていた水着は、白と赤の可愛い水着だ。
風夏が好きなデザイン。
白と赤のコントラストが可愛いビキニタイプであり、ハジメからしても小日向なら絶対に選ぶだろうと思っていた。
だがまあ、二着とも同じ系統のものを選ぶとは思わなかった。
両手に取った水着は、フォルムから色合いまで。
デザインが全く以ていて、正直瓜二つの水着だ。
何度見ても、男の立場からしたら細かい違いなど分からない。
同じようなデザインに数千円も支払うのは馬鹿らしく思えるのだった。
しかし風夏は断言する。
「ブランドが違うよ」
「嗚呼、なるほど」
ハジメは頷いていた。

どこに納得するところがあった?!

全員が全員、脳内でツッコミを入れる。
よんいち組のメンバーだけならまだしも、準備組も驚愕していた。
訳分かんない。
読者モデルの人ってみんなこんな感じなのだろうか。
あ、こいつアホだったわ。
納得する。
ハジメは風夏のことに対して微塵も疑うことがないから、話の展開がスムーズ過ぎる。
というのか、これデートだよな?
大人数でショッピングはしているが、ハジメと風夏が二人で話す姿は恋人同士なはずなのに。
他の恋人みたいな、彼女の水着選びに付き合わされて彼氏は恥ずかしいとか、彼女に対して自分が似合うと思う水着を着て欲しいとかがない。
真剣な表情。
読者モデルと読者モデルで、真剣に仕事の話をしていた。
水着のデザインや色の配色。
今年の流行色の水着がいい。
いや、あえてモダンなデザインを取り入れて、他の人が真似出来ない独自性を出すべきか。
ファッションの頂点に君臨する真紅の女帝。
風夏は、他の読者モデルとは一線を凌駕した存在であるが故に、仕事の話となると真剣であった。
それに毎度付き合わされているのに真剣に受け答えするハジメは、ある意味お人好しだ。
「小日向、こっちの水着の方がいいんじゃないか? インスタ映えするだろ」
「ううん。私も気になったんだけど、この子には、私よりも出逢いたい人がいるだろうから着れないの」
風夏はそう言って、勧められた水着を拒否する。
一流の読者モデルは、どんな洋服も自在に着こなす。
そう思われているが、それは間違いだ。
読者モデルはマネキンと変わらない。
可愛い洋服は着る者を選ぶ。
万物は意思を持ち、この世に存在するのだ。
この子は風夏を選ばなかった。
他に自分を探してくれる人を待ち望んでいる。
それがこの洋服の運命なのだ。
今日じゃない。
いつの日か。
この子を買った女の子が水着を着て、好きな男の子と二人っきりでデートをして、仲良くなる。
いつしか付き合って結婚するのかも知れない。
そんな出逢いを待っている。
たった一回しか輝けない運命だとしても、この子がそうありたいと願うのであれば、それは素晴らしいことだ。
人は生きている限り、毎日洋服を着て、人と出逢い生きていく。
洋服とは、大切な思い出の為に。
好きな人に可愛いと言われ、輝くために。
その為だけに存在する。
たった一日だとしても、人の子の一生に大きな意味を成す。
ならば、その願いを尊重すべきである。
小日向風夏は洋服を見れば、洋服は彼女に語りかけてくれる。
この子は、素晴らしき出逢いの為に存在していた。
世界一可愛い読者モデルだとしても、着ることは出来ない洋服があるのだ。
水着コーナーに並ぶ、他の子もそう。
誰かに出逢う為に生まれた尊い子なのだ。
大量に作られた製品だったとしても、ほんの小さなものであったとしても、デザイナーの愛を受けて生まれたはずだから。
この子達は、生まれながらにその愛を知っている。
意味を持って生まれた可愛い我が子が、美しく輝くことを願わない親はいない。
この世界は、愛に満ち溢れている。
目には見えないだけで、色々な想いがある。
まだまだ子供な風夏には、自分の気持ちすらよく分からないけれど。
かたちがないものだとしても。
確かにそれは、この世界に存在する。
洋服の袖を通して、目に見えないそれを感じる度に。
好きな人に可愛いと言ってもらえる幸せを知る。
彼女が着る洋服もまた、そうして風夏やハジメの記憶に刻まれていくのだろう。

風夏は、こんな自分に人との繋がりを与えてくれる洋服を、誰よりも愛している。
海よりも深く。
この子達は、不器用な生き方しか出来ない人間の愛を伝えてくれる担い手だ。
洋服で季節を感じ、可愛く着飾ってデートをすることで、意中の相手に思いを伝える。
貴方に可愛いと言って欲しい。
女の子はみんな不器用だから。
可愛くいることで、貴方に見てもらえるならば、どれほどの努力も厭わないだろう。
何故、この世に読者モデルは存在するのか。
それは、愛を表現出来るのは人間だけだからだ。

よんいち組の夏はまだ始まらない。
可愛いと言ってくれるであろう貴方に。
特別な日を彩るものは。
私を選んでくれた可愛い洋服。
そんな日の訪れをゆっくりと待ちながら。
この物語で一度っきりの出来事に思いを馳せ、貴方を想うのだ。


おまけ。
よんいち組だけではなく、準備組の四人も真面目に水着を選んでいた。
しかし、その大半が別に彼氏が居るわけでもないので、必死感はそんなにあるわけでもない。
可愛いと言ってくれて、褒めてくれる人がいなければ女の子は輝けない。
まあ、海では彼氏がいる人間のフォローをする立場だから、別に自分はいいか。
そうやって達観的になってしまう。
「姫ちんは、彼氏いるやん」
真島は、黒川さんにそう言いながら、マジレスする。
黒川姫鞠の彼氏は、一条だ。
よんいち組のみんなみたく、可愛い水着選びに専念すればいいものの、黒川さんは特にはしゃぐことなく普通にしていた。
「よんいち組のみんなみたいに、可愛い子が頑張るのは可愛いけど、私が頑張っても仕方ないし……」
「そんなことないよ。姫ちん可愛いもん」
「真島さん、ありがとう」
「姫ちんいい子だし、一条くんには勿体ない。……あれ? なんでぇあんなクソ男と付き合ってんの??」
脳裏によぎるのは、クラス一のイケメンである一条であった。
いいところが面とか遺伝子とか、人脈とか言われているが、勉強も運動も出来るし、テスト前には男子連中の面倒も見ている。
いいところは多い。
白石は、余計なことを口走る。
「クラス一の美人は風夏ちゃん」
「やっぱあいつクソ男やん」
どっからどう見ても、釣り合わねぇんだよなぁ。
面しか取り柄がない野郎と、日本が誇る読者モデル。国宝を同一視するのはお門違いだ。
一条なんて、球蹴っているくらいしか脳がない男だ。
あいつの友達はボールだけだろ。
こいつら……。
言っている言葉は強いが、あながち間違っていないから性質が悪い。
黒川さんや、西野さんは頭を抱えていた。
ツッコミ役の大変さ。
いつも優秀なツッコミ役が傍に居ることの大切さを痛感していた。
こんな時に、橘さんが居れば……。
いや、橘さんが居たら、三馬鹿のハッピーセットがもれなく付いてくるから駄目だ。
あいつらの相手をする方が、今の状況よりも混沌になるだろう。
西野さんはフォローする。
「一条くんの悪口は駄目だからね。黒川さんだって嫌な気分になるでしょうし」
「あ、いや、聞いている限り、一条くんに対する正当な評価だと思いますので……」
姫ちゃん?!
この子、何で一条くんと付き合っているの??
付き合っている女の子は、彼氏に対して悪態付くのが普通なのであろうか。
黒川さんは、一ナノミクロンも彼氏を擁護しないのであった。

準備組の面々は、罵倒が飛び交う教室に慣れてしまっていた。
大体は、アホなハジメと佐藤のせい。
と言えなくもないが、女の子との買い物から逃げ出した野郎に比べたらマシだ。
罵倒されても彼女に文句を一つも言わない二人に比べ、一条は水着を買いに行く前に敵前逃亡した。
ハジメも佐藤も彼女に迷惑ばかり掛けているが、アホなりに自分が出来ることを精一杯やっているのだ。
その過程で失敗することはあれど。
二人とも、頭が赤ちゃんだから仕方あるまい。
それに比べて一条は、クラスの男子と比べても数段優秀なはずであり、ハイスペックなのに批判されている始末であった。
彼女である姫ちゃんが居てこれなのだから、居なかったらボロカスだ。
だがまあ、一条にもちゃんと優しいところはある。
例えるならば、環境には入らないが普通に戦える優秀なテーマデッキみたいなものだ。
不満ばかりがあるわけではない。
あと一枚くらい強い新規カードもらえたら、全然使ってあげるんだけどな。
そういった類いの評価なのだ。
そもそも一条はイケメンだから、色々な人とも交流があり、モテるのは喜ばしいことだ。
自分の好きな人が頼りになり、みんなから評価されて嬉しくない人はいない。
友達として、自分以外の人との付き合いがあるのも分かる。
合コンに行ったのだって、騙された結果だし。
「へー。萌ちゃんとかは、付き合った瞬間から、今までの人間関係を精算しているけどね。恋人出来たら、普通は異性と話さないもんじゃないの?」
「……今言わなくていいでしょ?」
やめろよ。
西野さんは苦言を呈する。
親友は大変である。
マッシマーは、いつも不用意なことを言う。
それはまあ、よんいち組の女の子は恋する乙女だし。
真面目な女の子ばかりだ。
親しいクラスメートならまだしも、馬鹿みたいなことしかしない男子には興味ないだろう。
萌花に関しては、いつも口が悪いけど普通にハジメのことが好きだし。
他の野郎など見向きもしないのであった。
萌花は真顔で、あんなアホのことを好きだと思うか?
そう言うかも知れないが、親しい友人なら分かるレベルのツンデレだ。
彼氏のことを、まるで新宿を走り回る都会のネズミ。
ゴミカスを見るような目をしていても、歴としたツンデレだ。
ライトノベル全盛期が過ぎ去ったこの時代において、ツンデレという表現は古臭いが、そういう愛情表現しか出来ない女の子だっているのだ。
萌花みたいに、小さくて可愛い女の子なのに、いつも強気で口煩く、しかし二人っきりの時はちゃんと女の子として甘えてくれる。
萌花は、好きな人と手を繋いでデートしてくれる女の子だ。
ツンデレのテンプレートみたいなやり取りをする。
それが好きな人だっている。
そういう部分があるから、罵声を浴びせられていても嫌いになれない。
そう、ハジメはドMなのだ。
萌花のことを、誰よりも頭が良いのに他人に優しくて、いつも可愛い女の子としか思っていないアホだ。
女のくせに口煩いとか、態度がでかいと思うような人間ではない。
いや、ハジメは母親や妹という、肉親の中にやばいやつがいるから慣れていた。
家族が極端にブッ飛んでいると、よんいち組がするような多少の我が儘も気にならない。
母親や妹に比べれば、萌花の言動や風夏の我が儘は、女というカテゴリーからしたらまだまだ全然可愛い方だ。
ハジメは、よんいち組のことを一度たりとて迷惑だと思ったことはない。

「理由はどうあれ、合コンは浮気じゃないの?」
このアマ、また合コンの話をするな。
空気が読めない真島である。
一条は他クラスに嵌められて、カラオケ合コンしていたが、黒川さんが完全に許しているとは限らないのだ。
「え、なに?」
黒川さんの表情は笑顔。
それが逆に怖いのであった。
ボケ担当の奴等の共通点として、頭を使って発言しない。
それは、天然ちゃんとか、純粋な馬鹿とかではない。
頭の中にスポンジしか詰まっていないのだ。
白石もまた、頭スポンジボブである。
「カラオケ合コン。……男女三人が集まって王様ゲーム」
「いや、普通に歌うだけだから」

ーー黒川さん?!

流石に穏和な黒川さんもイラついていた。
空気が読めない連中に嫌気が指していた。
「一条くんカラオケ好きらしいし、たまにはいいんじゃないかな。……私は最近の曲はアニソンしか知らないし、一緒にカラオケ行ったことないんだよね」
お、おう。
くっそ重い話やんけ。
突如始まる愚痴。
彼氏居たことない人間に、闇を語るなよ。
誰もがそう思うのだった。
しかし、愚痴が始まった手前、会話を中断することは出来ない。
そんな沈んだ空気の中、黒川さんの愚痴を聞かされる三人であった。
静かにしていないと怒られる。
いくらやりたい放題の奴等でも、そこは察しているのか、黙っていた。
ずっと黒川さんが話す。
……あまり話さない人間ほど、喋る時は早口なのは何なんだろうか。
オタクはみんなこうなのか。
怖い。
そう思いながらも、黒川さんに全部話させて、ガス抜きをさせることにした。
まあ、彼氏への不満や、惚気話もあるんだろうけどさ。
いい加減に水着を選べよ。
姫ちゃんくらいは、普通のラブコメの話をしてくれ。
おまけの文字数を軽くオーバーしている。
可愛い水着を着て、可愛いと言ってもらえたら、黒川さんも一条と仲良くなれるのかも。
いや、そもそも黒川さんは怒っているから、みんなで楽しく水着を選べる状況ではないか。


黒川さんが落ち着いた頃に、ハジメに話す。
「え? 一条殺せばいいの?」
さすハジ。
野郎に容赦がない。
脳筋過ぎる。
「彼氏を殺さない程度に分からせる方法」
「……スマホの音声検索みたいな言い方すんなよ」
それはともかく、親友?である一条の窮地を救えるのはハジメしかいない。
よんいち組の面々も、今回ばかりは一条を擁護する気はないようだ。
合コンに行ったとしても、カラオケだよな。
それくらい許してあげてもいい気もしたが、イケメンには手厳しい。
萌花曰く。
「お前の親友だから、比較対象が厭がおうにもお前になるんだよ。悔い改めろ」
「……ええ、俺が悪いん?」
如何に一条が優秀なイケメンとはいえ、一般人だ。
どこまでいっても、普通の感性である。
よく分からないけど、愛があればヨシ!
どれほど無茶苦茶な状況でも、彼女の為なら愛のパワーでスパアマ抜けしてくるハジメとは違うのだ。
こいつが一番ぶっ壊れている。
ハジメは、母親の愛を受けて育っている主人公補正のかたまりみたいな人間だ。

一条は、常日頃からこいつの親友だからと比べられている。
普通に考えて、頭のネジが数本以上も外れている人間と比べられていたらたまったもんじゃない。
一条も彼は彼なりに頑張っているのだ。
準備組とも仲がいいし、白石や真島の勉強を見てあげたり、たまにはツッコミ役をしている。
それだけで仕事は果たしていると言える。
ハジメみたいな、よんいち組や三馬鹿の相手をしながら、同人作家と読者モデルの二足わらじで仕事をしている化物がおかしいだけだ。
劣等感を微塵も感じないほどに狂っていると、別の生き物に見えるようである。
一条は恋愛において優柔不断でダメダメだが、ハジメみたいになれとは言われない。

「萌花、俺も結構怒られていると思うんだけど?」
「誘われたら絶対に断らないのに、毎回面倒そうな顔するからだろ」
「すみません……」
ハジメもまた、萌花に似てツンデレだ。
オタクの世界でやれやれ系主人公が流行っているのか知らないが、みんなと遊びたいならごねるなよ。
そんなやつは女の子にはモテない。
誘われた段階で、素直に俺も行きたいと言ってくれたら、普通に好感度が上がるものだ。
いや、そんな性格をしていたら、陰キャじゃないし、ハジメじゃないか。
面倒な人間だな、こいつ。

ハジメは何かを思い出したからか、スマホを取り出す。
「そうだ。そういえば、一条からラインがあって、参加出来ない代わりに楽しんできてって、スタバのギフト三千円もらったから、みんなで行こうぜ」
一条だけあってか、全方位に対して気が利く。
しかもサラッと提案してくれるあたり、素敵である。
流石、イケメンである。
一条は普通の人間だが、女の子にモテそうな模範的な行動を取れる。
そこが一条の明確な強味である。
そうやってするフォローの仕方があるのか。
ハジメでは到底思い浮かばない考え故に、深く感銘を受ける。

「それ本当に一条くん??」

ーー黒川さん?!

二人の間にある問題は、かなり根深いようであった。
だがまあ、お茶をする頃には黒川さんの機嫌が良くなっていたのでよしとしようか。
女の子は、取り敢えず甘いもの食わしておけば勝手に機嫌が良くなるのであった。
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