この恋は始まらない

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第五十八話・メイド喫茶1

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神視点。
いざ、メイド喫茶が始まると、テーブルにクラスメートを案内して、人数分の紅茶と焼き菓子を用意する。
小日向風夏と白鷺冬華は女子の対応をし、アマネやルナは男子に紅茶を注いであげる。
クラスメートは、思う。
文化祭では自分達が頑張って提供する側だったからか、何だか新鮮であった。
慌ただしいだけの文化祭で、死ぬ思いをして、仕事を円滑に回していたが、今日は何もしなくていい。
静かに椅子に座っているだけで、紅茶が飲める。
ゆったりとした空間で、可愛いメイドさんを眺めながら美味しい紅茶とお菓子を食べているだけだ。
……超楽しい。
男子連中は、最初は休日にわざわざ出掛ける上に、学校の制服とは違って格好いい私服を準備する必要があったし、正直面倒でしかないそう思っていた。
クラスメートであれど、友達ではない。
小日向さんや白鷺さんが主催だから可愛いメイド姿を見れるとはいえ、クラスのカースト的に軽々しく話し掛けていいか分からない。
一抹の不安があった。
しかし、いざ実際に行ってみたら、気さくな態度で接してくれる大人のお姉さんが何人もいるではないか。
アマネさんは、落ち着いた雰囲気にマッチした丁寧な口調が似合う大人っぽくて綺麗で、いい匂いがする。
ルナさんは、雰囲気や態度は冬眠明けの寝起きの熊くらいに悪いけれど、アニメ好きの陰キャ男子でも気にしていないマイペースさだ。
大人の女性いい……。
クラスの男子達は、アマネさんやルナさんの大人の女性の魅力にメロメロであった。

本職がレイヤーさんであり、イベントを何十回もこなしている人達だ。 
カメラ慣れしているからこそ、魅力的に見える立ち振舞いは、洗練されている。
それを証明するように、どの角度で見ても綺麗だった。
高校生からしたら、大人のお姉さんと話す機会なんてYouTuberのライブ配信くらいだから、面と向かって目を合わせるだけで照れてしまうのだ。


きめぇな。
その光景を見ていた三馬鹿のささらとひふみは、ドン引きしていた。
大人の女性にデレデレしやがってからに。
あんな表情は見たことがない。
せっかくの美味しい紅茶も不味くなる。
三馬鹿は嫉妬していたけれど。
走るしか能がないハムちゃんズでは、絶対にアマネさん達には勝てない。
お前ら、大人の魅力ないじゃん。
ハジメはそう思っていたが、大人なので口を紡いでいた。
三馬鹿は別に悪いやつじゃないのだが、馬鹿だから言わなくていいことを言ってしまう。
可哀想な子なのだ。
そこが大人と子供の違いだ。
ハジメが何故にささらとひふみの愚痴を聞いているかというと、二人の座っているテーブルの給仕をしているからである。
事務所の人達が代わりに裏方をやってくれていた。
せっかくだから、友達と話してきなさいと優しく言ってくれた。
大人とはそういうものだ。
気遣いが出来てはじめて大人と呼べる。
「なあ、裏方に戻っていいか?」
何かもう疲れたので帰りたい。
ハジメは、朝一から動きっぱなしで疲れたのである。
無駄なことで、動き回りたくない。
「さらっと帰らないでよ!」
「うちのメイドは何でこんなやつなのよ!」
容赦なく帰ろうとするハジメを拘束し、空いている椅子に座らせる。
陰キャクソオタクでは、陸上部とはいえ身体能力では敵わなかった。
ハジメは死ぬほど嫌そうな顔をしているが、それでも三馬鹿よりも見た目が可愛いのがクソうざい。
母親譲りだ。
メイド服を着ている以上、野郎としての尊厳など捨て去り、メイドとしての立ち振舞いに徹していた。
完璧な給仕をしている。
紅茶の淹れ方が普通に上手い。
こいつ、女子力高かったわ。
メイド好きは全員狂っていやがる。
もえぴのメイド姿を見たいが為に、死ぬほど駄々を捏ねた男だ。
メイドに対する面構えが違う。
「麗奈ちゃんと、もえぴがメイド服に着替えてるんだから、ちゃんと待っててよ」
「そうだぞ! 土下座してまで彼女にメイド服着させてるんだから、素直に待ってろよ」
メイド服を着せる為なら、秒で土下座するやばいやつだ。
文化祭の時に着るんだからいいじゃないか。
という至極真っ当な意見もあったが、メイドリストが十月の文化祭まで待てるわけがないのだ。
五ヶ月も彼女のメイド姿を我慢出来るわけがない。
ハジメにとってメイドとは欠け替えのないもの。
尊い癒しなのだ。
ハンター×ハンターの連載を三年以上我慢出来ても、彼女のメイド姿は無理だった。
一ヶ月ですら長く感じてしまう。
毎日見ても足りない。
何なら、メイド姿の日めくりカレンダーを出して欲しいくらいだ。
朝起きて直ぐに、カレンダーを一枚めくって、ゆったりとメイド姿を眺めて堪能したら一日中ずっと幸せだ。
天才の発想である。
……そうだ、白鷺ならばサークルの商品としてカレンダーを販売してくれそうだから、それとなく話を付けて売ってもらう。
いや、白鷺の許可を得て、自分専用で作ってしまえば好きなシチュエーションの写真を使える。
そうしよう。
「ねぇ、ひふみ、ひふみ。この人の頭大丈夫かな? 狂い過ぎじゃない?」
「頭が大丈夫だったら、こんな場所でお茶してないわよ」
真理である。
普通の人間は、メイド喫茶を自分で企画して、クラスメートを誘わない。
性癖を押し付けてこない。


しばらくして、秋月麗奈はメイド服に着替え、化粧をして髪型をセットして出てきた。
流行りのゆるふわ女子のように、ボリュームのある髪型に、メイドさんの真っ白なカチューシャを付けている。
クラス一番の大きな胸は、メイド服の白黒の衣裳の下に隠れてしまっていたが、あえて大きく見えないところに女性としての品があった。
露出度がまったくないヴィクトリアンスタイルのメイド服だからこそ、見えない美学があるのだ。
本当の美しさとは、目に見えるものではない。
ハジメが世間一般的なメイドカフェみたいな、スカートが短くピンク色をしたメイド服が好きじゃない理由はこれである。
綺麗で大人っぽく。
ちゃんとしているからエロい。
シルフィードの完成されたメイド服は、もはや芸術の領域に近い。
車の車体に発情する人間がいるように、メイド服の洗礼されたフォルムにはエロスが宿るのだ。
……美しい。
これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう。
細部まで精巧に作り上げられたメイド服は、それ単体だけでも美しい。

やべぇな。
こいつ。

メイドの格好をした女の子が好きなのか、メイド服そのものが好きなのか分からないが、ハジメは目を輝かせていた。
「秋月さん、凄く綺麗ですよ!」
ハジメは、本心からそう思っていた。
無邪気に笑っている姿は、妹の陽菜ちゃんみたいである。
本当に嬉しい時に、大振りのリアクションを取っているところとかは、血の繋がった兄妹だ。
「この人、ちゃんと女の子が好きなんだね」
「いやぁ、メイド服に欲情しているだけかと思ってたわ」
三馬鹿の二人は、ハジメに対して辛辣な感想を述べる。
全部、事実だし。
性癖ぶっ壊れていやがる。
直接キモいと言わないだけ、友達としての良心がある。
まあ、聞こえたとしても、本人は可愛いメイド姿の秋月麗奈にメロメロで、全神経が一点集中していた。
心のシャッターを切っていた。
「キモいな、こいつ」
「やーやー」
何を言っても問題あるまい。
聞いていないのだから。
ハジメは、可愛い可愛いしか言っていない。
脳が退化していた。
「東山くん、ありがとう。でも、これはプロの人が化粧してくれたから可愛いんだと思うわ」
麗奈は照れた様子で、自分のことを謙遜していた。
この女、褒められ慣れていなかった。
攻められたらガードが緩くなるタイプだ。
ダメ女特有の特徴であった。
誰しも好きな人には、可愛いと言ってもらいたい。
そんな承認欲求は普通だし、麗奈に至っては人一倍強いのだが、いざその立場になると恥ずかしい。
メイドが絡むと理性がなくなるような変態が彼氏でも、彼女は嬉しいらしい。
そいつド変態だぞ?
彼女にメイド服を着てもらって喜んでいるだけならまだしも、自分も女装している。
自分で着るんじゃねえよ。
ささらとひふみは思う。
「何で東山くんがモテるんだろ」
「ほら、美人の人って変な男が好きだし。個性がある方が主人公っぽいし?」
メタ的な発言をするな。
人間は誰しも自分に持ってないものを求める。
それが、可愛い女の子の場合。
勉強も運動も得意で、愛想がよく。
何でも出来る完璧な女の子なら、何を求め、何が足りないのか。
それを知る術はない。
しかしながら、ハジメにはマイナス要素しかないんじゃないか?
テスト勉強を見てくれる立場上、あんまり悪く言いたくないが頭おかしいし。

暫くして、メイド服に着替え終えた萌花が現れる。
クラスで一番可愛い女の子。
子守萌花は、よんいち組の最後を飾るだけあってか、いつもの制服姿とは異なり、可愛くメイクをしていた。
本人は嫌うだろうが、小さい女の子の持つ特別な魅力があった。
男の子なら全力で守ってあげたくなるような、庇護欲求が芽生える。
お人形さんみたいに華奢で可憐な乙女である。
ハジメからしたら、いつもの萌花でも死ぬほど可愛いのだが、今日は別格で可愛い。
好きな人に可愛いと思ってもらいたくて頑張る姿が好きなのだ。
ハジメの趣味にドストライク過ぎたようで、狂ったようにバンバンと机を叩く。
萌花の可愛さの前では語彙力がなくなり、口が動かなくなる。
言葉など意味を成さない。
真の感動とは、頭で処理出来ないのだ。
幼稚園児みたいに、身体全体で幸せを表現していた。
いや、情緒が不安定なだけだな。
「ほら。もえぴが可愛すぎるから、東山くんおかしくなったじゃん」
「こいつは元々、頭がおかしい」
身も蓋もない言葉だ。
しかし、事実である。


ハジメ反省中。
萌花に怒られていた。
この場に、クラスメートと身内しか居なくてよかった。
こんな惨めな姿をファンの女の子には見せられない。
いや、こいつのファンなら、容赦なく蹴りを入れてくれるから、別にいいのか?
「れーなの時もこいつはこんな感じだったん?」
「え?」
麗奈は困っていた。
萌花は、裏方で着替えていたため、麗奈との先ほどのやり取りを知らなかった。
あんなに狂っていたかったって話?
麗奈なりに、少し考える。
何と答えれば正解なのか分からなかったのだ。
萌花は、あの攻撃的な性格だから、恋愛の話では結構な地雷がある。
萌花の本心は彼ピが好き好きで、ハジメちゃんラブな風夏と大して変わらないようなものなのだが、ひた隠しにしているつもりだ。
他人に知られたら、ショック死するだろう。
これがツンデレなのだ。
常日頃、ハジメをボロカスに言っていても、そこに愛があるのならば、それが可愛いともいえるが。
あの子は、可愛い動物ではない。
タスマニアデビルだ。
最悪、彼氏を殴り殺す可能性もある狂暴性を秘めている。
萌花のことを知り尽くしている麗奈だから危惧していた。
親友として、地雷を踏み抜かないようにするのが麗奈の仕事だ。

話を戻し。
ハジメが麗奈を褒めていた時は、風夏や冬華と同じく多少の差はあれど、可愛いしか言っていなかった。
陰キャ程度の語彙力しかなく、ミジンコ並みの脳みそでも、多少の理性はあったと思われる。
ハジメは何だかんだそこら辺の部分は彼女全員を同等に扱っていた。
四人とも褒め言葉に差はあっても、好意に関しては微塵の差もないはずだ。
好感度五億である。
しかし、萌花の場合は、他の三人よりも信頼し安心しているのだろう。
失言ばかりだけど、よんいち組で唯一気を遣わない相手は、萌花だけだった。
そこに例外はなく、唯一人だ。
ハジメはアホだが、他の人には言葉を選んで話している。
それは身内でも友達でも恋人でも変わらない。
日常的に罵詈雑言が飛び交う、三馬鹿が相手であっても、ちゃんと最低限の分別を付けている。
そんな中の例外として、萌花にはその類いの気遣いをしていないのだ。

唯一人だけだ。
月日の積み重ねや、交わした言葉があるから。
いや、そんなものなど関係なく、根本的な部分で同じなのだろう。
だから信頼をしていた。
二人とも口も性格も悪いが、何だかんだ周りの人間が大好きで、困っている人を放っておけない世話焼きタイプだ。
自分の幸せよりも他人を優先する。
生まれながらの善人。
人の幸せが自分の幸せなのだろう。
だから、どんなに自分を犠牲にしても助けてくれる。
本人達はひねくれているから、素直に褒めると嫌がるけれど。
……そんなところも似た者同士なのだ。
誰かを大切に思う心が同じならば、話さなくても相手の気持ちは分かる。
生き方や価値観が一緒だからこそ。
信頼出来るのだ。
恋人以上、夫婦未満かな。

「……ううん、萌花だけだよ」

やんわりと濁すことは出来たけれど、そうすべきではなかった。
ちゃんと真実を話すべきだ。
大切にされているなら、その想いを伝えた方がいい。
それが、いい。
ハジメは、萌花の可愛い姿を誰よりも楽しみにしていた。
羨ましいけれど、嫉妬はしていなかった。
麗奈は、そんな感情は浮かばない。
温かく見守っていた。
普通の女の子なら好きな人を独占したいし、自分より優秀な女の子に嫉妬し、自分が持っていないものを羨ましく思ってしまう。
私だけを見てほしいと、わがままを言いたくなる。
だが、口には出さない。
大人にならなければいけない。
この世の全てが綺麗に輝き、幸せな毎日が手に入ると思っていた子供ではないのだ。
いや、この世の全てが綺麗に輝き、幸せな毎日は手に入っていた。
これ以上の幸せを求めるのはおこがましいだろう。
今度は自分が幸せを誰かに分け与える番だ。
萌花は顔を赤らめて、恥ずかしがる。
それが可愛いから、ハジメが失言する。
ささらとひふみが茶化すから、状況が悪化していく。
みな、ギャンギャン吠える。
何を間違えたのか。
このテーブルでする話ではなかった。
メイドというか、冥土の地獄絵図だ。
クラスメートと楽しく過ごす。
秋月麗奈の幸せはそこにある。
いつまでも子供ではない。
自分だけの幸せで満足出来るような性格ではなくなった。
全ての人が幸せであってほしい。
そう願えるほどに、満たされていた。
紅茶を飲むと温かく、心がぽかぽかする。
「美味しい♪」
「てめぇは、なに呑気に紅茶を飲んでるんだよ!」
「え!? 何でよ、アシストしてあげたじゃないの!?」
「お前のは同士討ちだよ!!」
無自覚にフレンドリーファイアを噛ます麗奈であった。
萌花からしたら迷惑でしかない。
恋愛など好きではないし、自分の世界に親友や友達を深く関与させたいとは思わない。
自分だけで何とかするタイプだ。
正直、萌花からしたら、ささらやひふみに絡まれるのは苦痛でしかない。
「恥ずかしがるのも分かるけれど、友達に色々知ってもらえたら、なにかあったら助けてもらえるでしょう?」
駄目だ。
恋愛脳で狂気しかない人間が、人の気持ちを理解出来るのだろうか。
他力本願の化身だ。
「お前、神経図太いよな……」
友達多いやつの思考はそうなのか。
他人を頼るのが上手い。
それは、自分一人で解決するよりかは、慣れた人に対処してもらうのが効率的である。
感謝していれば、相手も気持ち良く引き受けてくれるはずだ。
麗奈みたいな、可愛くておっぱいが大きな女の子に頼られて嬉しくないやつはいない。
「なんでよ、おっぱいは関係ないでしょ。おっぱいは」
ハジメが居るのに胸の話をするな。
麗奈は怒りながら、スフレケーキみたいな、ふわふわのおっぱいを揺らしていた。
思春期の男の子には、聞かせる話題ではない。
いや、こういうラッキースケベな時に限ってハジメは絶対に聞いていない。
アホなのだ。
三馬鹿に絡まれていた。
「東っち、おっぱいに詰め物してるん?」
「ん? ああ、この中にはな。メロンパンが詰まってるんだぞ」
「え~、嘘だぁ!?」
「ささら。たしか、古典的なギャグで、ブラジャーの詰め物にメロンパンを使う漫画もあるんだってさ」
何かあった場合、非常食になる。
遭難時に役立つ。
詰め物を買って用意するのはかなりお金がかかるが、メロンパンならコンビニでも手に入るからある意味、コスパがいい。
胸にメロンパンは利にかなっている。
イカれている部分を除けば、合理的な発想だ。
「じゃあ本当に!?」
わくわく。
ささらもひふみも、純粋な子供のように目をキラキラさせている。
「……いや、嘘に決まってんだろ。お前ら、馬鹿なの??」
大乱闘スマッシュブラザーズが始まる。
乱闘をするな。
このアホですら、人を頼るのが上手い。
……その事実に殺意を覚える子守萌花であった。


ハジメサイド。
それからクラスメートとのささやかな一時を終えて、お昼過ぎには一般の人との交流が始まる。
身内ですら大変だったのだ。
知らないファンの人の相手は、大変だし忙しいけれど、楽しいものだ。
色々な人が挨拶をしてきてくれて、応援してくれるのは嬉しい。
ファンの人は、いつも元気をもらっていると言ってくれるが、元気をもらっているのは俺であった。
絵描きとしつ、ファンのみんなに支えられている。
みんなに応援され、感性をもらって出力しているだけでしかない。
男の俺には、女性のファンみたいに、可愛いファッションは分からないし、流行りに敏感でもない。
ファンに色々教えてもらわないと、仕事が成り立たないのだ。

テーブルに座る四人は、小日向のファンだった。
それは構わないのだが。
「風夏ちゃんファンクラブの会長はどう思います?」
「……そんなもん知らねぇんだが?」
あいつのファンなのは百歩譲っていいとして。
変な宗教に勝手に入れるんじゃねえよ。
あんなやつにもファンクラブあるんか。
まあ、一流の読者モデルだしな。
俺が案内しているテーブルには、高校生の四人がいた。
各々の面識はないようだが、ファンとしての一体感があった。
推しの愛が成せる技なのか。
初対面でも仲良くなれるのは凄いものだ。
「ハジメさん。ファンクラブのトップ画に、ハジメさんのイラストを使ってもいいですか?」
「ん? ああ、いいけど。新規でイラストを描こうか? その方がいい宣伝になるだろう?」
「めっちゃやる気満々ですね。……風夏ちゃん大好きですよね?」
俺のやる気を削ぐなよ。
こちらとしては、仕事として必要だから提案しているだけだ。
せっかくのファンクラブなんだから、新しいイラストを提供してあげたくなる。
「会長の風夏ちゃん愛には敵いません」
だから、会長にするな。
小日向にそんな感情はない。
俺を置いてきぼりにして、話を進めるな。
「会長みたいに、毎日イラストを上げるなんて、最高の愛のかたち。推し活ですからね!」
クソみたいに推し活を頑張る絵描きにされていた。
いやまあ、小日向のイラストを描き続けているのは事実だけどさ。
毎日感謝の正拳突きと一緒にするな。
毎日描き続けている時は、いつも小日向の為、ファンの為により良いイラストを描いていた。
最初はかなりの時間を掛けて描いていたのだが、いつしか考える前に勝手に手が動き、イラストが完成しているではないか。
俺の絵は、思考を置き去りにした。
念能力でも目覚めてるの?
なにこれ。
俺知らないんだけど。
実際にはネタであり、そこまで考えて小日向のイラストを描いていないのだが、俺はおかしいのか?
毎日絵を描くのは、手が鈍らない為でもあり、俺のような普通の人間は、一日でも絵から離れたら直ぐに感性は衰える。
毎日ペンを握るのはその為だ。
というのか、大体はファンが悪い。
こいつらが、遠慮なく小日向に似合う可愛い洋服の写真を投げ付けてくるから、毎日イラストを描かないと写真を消化仕切れないのだ。
私のオススメした洋服、風夏ちゃんに似合いますよね!?
何で描かないんですか!?
リプ欄で無言の圧力をかけてきやがる。

「だからって毎日やってくださいって言われても普通はやりませんよ。会長は、風夏ちゃんへの愛が壊れてるんすよ」
「365日も描き続けていたら、愛を超えた何かですよ」
「ファン全員を圧倒的な暴力でねじ伏せるのやめてくれません?」
「何で女装しているんです?」
最後のは関係ねえだろ……。
三十分くらい話しているのに、今更聞いてくるなよ。
年下の女の子にボロクソ言われていた。
「交流会なのに、何で俺のところだけマジレスなんだよ。あっちみたいに優雅なティータイムにしようぜ」
「ハジメさん。メイド服を着て、男言葉を使うのやめてくれますか?」
「え? いきなり? あ、うん。……違和感あるよな。すまない」
元々小日向のファンだから、本当なら小日向の担当するテーブルに座りたかったはずだ。
可愛い女の子と会話したい気持ちは理解出来る。
現に、小日向や白鷺のテーブルでは女の子達が楽しそうにしているし、理知的な会話で盛り上がっていた。
野郎の相手は不本意だろう。
何なら、新幹線に乗ってここまで来た人もいる。
「いえ、違うんです」
「え?」
「新しい性癖に目覚めそうなんで、あまり強い言葉を使わないでください」
マジで帰れよ。
真顔で言うことじゃない。
「JKの性癖にドストライクしないでください」
「そうです! 私なんか、アクスタ外れたんですよ! 早く新作出してください!」
ファンだし、年下だし、女の子だけれど、おもっくそハリセンでぶっ叩いていいかな?
こんな一時はもうないだろうに、無駄な話題で時間を使いやがる。
交流イベントで話す内容とは到底思えないのだった。
「ほら、時間なくなってきたし、話したい内容とかないのか?」
折角だから、小日向のプライベートのこととか、お前らが好きそうな話題を話すべきか。
男の俺では、今どきのJKが好む話題は分からない。
しかし、小日向の貴重な話なら、俺にも話せる。
ファンの娘からしたら、高いお金を出して新幹線で来た甲斐があるだろう。
「え、惚気話ですよね? 彼女が好き過ぎるのはいいですが、マウント取るのはやめてもらえますか??」
「だから、違うって言ってんだろがッ!!」
大乱闘スマッシュブラザーズDX。
戦いの火蓋が切られるのであった。


初対面同士で何をやっているのか。
三馬鹿のようなテンションで接してくれるのはやりやすいが、乱闘騒ぎをしたいわけではないのだ。
「そうです。他のメイドさんもハジメさんの知り合いですよね? 他の彼女さんも居るんですか?」
パワーワードである。
みんな、楽しそうにしている他のテーブルを指差す。
小日向を筆頭に、メイドさんの中に可愛い女の子が多いから気になるのだろう。
クラスメートの時間が終わり、何人かは小日向達と一緒に仕事がしたいとのことで、手伝ってくれていた。
秋月さんや萌花。
準備組や三馬鹿も、暇だからと手伝ってくれていた。
いや、本当に一部のやつは暇なんだろうけどさ。
タダ働きの上にかなり忙しいというのに、手伝ってくれるとはいい奴等である。
「ああ。彼女とクラスメートに手伝ってもらっている」
「どなたが彼女ですか? ふゆちゃん以外は一般人ですから、ツイッターに写真あげてないですよね?」
「あそこにいる一番可愛い女の子」
「……貴方の感性で一番可愛い女の子とか言われても、全然分かりませんよ。馬鹿なんですか? 大体彼女が四人もいるのに、一番可愛いって言葉を使うのは適切ではないですよね? 差別ですか???」
女こわ。
十六歳くらいの女の子が早口でまくし立てる。
殺気立っていやがる。
だって、みんな一番可愛いじゃん。
俺に順位なんて決められるわけがない。
全員が全員、メイド姿がめっちゃ可愛いんだもん。
この想いは曲げられない。
「この人、頭イカれていやがりますね」
「メイドが絡むと判定ゆるゆるなんですか?」
「まあまあ、逆に誰か分からないなら、誰がハジメさんの彼女なのかクイズにしましょ」
「わぁ、楽しそう」
人の彼女で遊ぶな。
他のやつも軽々しく同意をするな。
四人も女子が集まると騒がしい。
他のテーブルの迷惑になるから、静かにしてほしいものだ。
「……仲良いのは構わないんだが、全員初対面だよな?」
それがなにか?
そう言いたげに、視線を向けられるのであった。


……それから、どの時間帯でも同じようなテンションのファンばかりが集まり、俺の精神が削られていくのであった。
何度か繰り返し。
ふと気付くのであった。
他のテーブルでは、静かに紅茶を堪能しつつ、初対面の人達でありながらも優雅に会話をしていた。
小日向のところはファッションの話題をして楽しそうにしているし、白鷺のところはお嬢様のような女の子ばかりだからか、詩集を読んでまったりとしていた。
アマネさんや、クラスメート達のところも普通だ。
問題発言をするようなやつはいない。
極めて普通のメイド喫茶だ。
滞りなく仕事をしていた。
……俺以外はな。
……いや、俺のせいなの?
俺のテーブルだけ、おかしいやつが集まっているんじゃないか??
名指しで俺のテーブルに座ってくれる人がいるのは有難いんだけどさ。
冷静に考えて、小日向や白鷺と会話するのを蹴ってまで俺のテーブルに座って話したがるやつなのだ。
狂っている。
俺のファンはやばいやつしかいないの???

次のファンの予約を回す前に、裏に戻って紅茶と焼き菓子の準備をする。
慌ただしい。
人数が増えていなかったらやばかった。
裏方は、事務所の人やクラスの男子達がやってくれていた。
美味しい紅茶を飲んでいたら、佐藤の手伝いがしたくなったらしい。
文化祭のように、みんなで楽しくやるのがいい。
男子は男子で仲良しだからな。
みんな、綺麗な大人のお姉さんと一緒に仕事が出来るとか思っているみたいだが、まあ真面目に働いているから見逃そう。
食器を片付けるついでに、感謝を告げる。
「みんな、すまないな。裏方は任せる」
結局、文化祭と同じくクラスのみんなや、一条や佐藤の手を借りっぱなしで、借りを返せずにいた。
誰か一人でも欠けていたら、ここまで歩むことは難しかったかも知れない。
一条は笑って許してくれる。
「袖振り合うも多生の縁だろう? 困っていたら誰だって助けるさ。東山は、自分がすべきことを優先すればいいよ」
「ああ、いつもありがとう」
優しいクラスメートに感謝だ。
親友に後ろを任せられるからこそ、集中して仕事が出来る。
助けてもらわなくて済むように、頑張らないといけないだろう。
やばいファンに精神を削られている場合ではない。
頑張るしかないのだ。
表から小日向がやってくる。
「早く戻ってきて。ハジメちゃんの知り合いをテーブルに案内しておいたよ」
「ああ、すまない。ありがとう」
小日向は、一番頑張ってくれていた。
自分の知り合いの方が多いのだ。
俺にまで気を遣わなくてもいいのにな。
俺の知り合いねぇ。
ツイッターで交流がある人は大体挨拶をしてあるから、それ以外になると誰だろうか。
そんな悠長なことを考えながら、表に出ると、見知った奴等と顔合わせをする。
母親とメイドさんとジュリねえだ。
化物に化物をぶつけんなよ!
合体したらどうするんだよ!!
妖怪大戦争である。
なにあのテーブル。
円卓よりギスギスしてないか?
仲良さそうに会話しているのが、違和感しかない。
「あらあら、まあまあ。ハジメちゃん、可愛いわねぇ」
「ご主人様。いえ、今はお嬢様ですかね? お邪魔致しております」
「ハジメちゃん、すまないな。お邪魔しているよ」
母親やメイドさん。
ジュリねえは優しく出迎えてくれた。
いや、マジで仲良いのか?
我のかたまりみたいな性格した奴等が、同じテーブルに座っていることすら奇跡だ。
俺だけ警戒している修羅場みたいになってるんだけど、この場に俺が居ても大丈夫なのか?
俺のことが好き。
というのも自意識過剰かも知れないが、この人達は特殊な趣向を持っているから怖いんだよな。
まるで野生動物のように、予測不可能な行動をしてくる。
「……縄張り争いしないの?」
「ハジメちゃん?」
母親は普通にキレていた。
いや、怒るのはいいんだが、子供のイベントに顔を出してくる母親は嫌なんだが。
わざわざ抽選の予約をして枠を確保してまでイベントに参加しているわけだしな。
「ママには、子供の成長を見守る義務があるの!!」
いや、知らん。
何か違う気がするけど、三人を相手にしないといけないので深追いはしない。
警戒を怠ると、背後を襲われるぞ。
「まあ、母親はいいとして。他の二人の言い分は?」
「時に少年。何で大人のお姉さん達が怒られているんだ?」
「……大人はな、大人としての態度を身に付けたら大人なんだよ。そうじゃないなら、まだ子供だよ」
「あはは、なるほど。的を得ているな」
ジュリねえ、爽やかに笑ってんじゃねぇよ。
こっちはガチめに怒ってるんだよ。
問題ばかり起こしやがってからに。
この人のせいで、こちとら女装させられているんだよ。
可愛いとか言われたくないんだよ。
俺は男だ。
「まあまあ、似合っているならいいのではないか?」
マネージャーとして読者モデルを売り出すなら、普通に男性として売り出してくれ。
貴方の下で働いていると、読者モデル感がないのだ。
ずっと事務仕事をしたり、女装をしたり、関係ないことばかりやってるんだよ。
この前なんて、事務所の一室に一日中箱詰めにされ、読者プレゼントの色紙を数十枚描かされていた。
この世界じゃなきゃ、ただの軟禁なんだよな。
「あはは」
いや、笑っても許されないからな?
ジュリねえは、社会に揉まれている上に剛胆な性格だから、一切動じない。
笑っているばかりだ。
俺の母親と打ち解けている時点で、おかしいともいえる。

それに比べて。
我等がメイドさんには文句は言わない。
やばい人だけど、いつも率先して仕事の手伝いをしてくれるし、今回のイベントの功労者である。
メイド喫茶シルフィードのおかげで、大人数でも問題ないくらいにメイド服や茶葉。
ティーセットや道具を貸してくれていた。
この日の為に、わざわざ新しいメイド服を新調してくれるあたり、店長には頭が上がらない。

大人の人の世話になってばかりである。
メイドさんは、メイド長としての急務がある中で、休みの日に俺達に美味しい紅茶の淹れ方の指導をしてくれた。
プライベート返上で付き合ってくれる。
流石、メイド協会の資格を持つ歴としたメイドだ。
紅茶を淹れる所作一つ取っても、綺麗で美しい。
メイド服を着ている時だけは。
その時だけは、な。
美味しい紅茶には、可愛い店員さんが必要だが、その意味では右に出る者はいない。
メイドとしての仕事ぶりを加味したら、頭がおかしい狂った言動など許容範囲だ。
「ぶーぶー」
「ぶーぶー」
二人とも吠えるな。
母親やジュリねえは、別に何もしてないだろうが。
逆にいつも俺の邪魔をしているくらいだ。
ずっと喋りまくるから、二酸化炭素を出している時点で、許されない行為だ。
「呼吸出来てえらい」
なんや、この母親。
ポジティブ過ぎるだろ。
意識が高いんだか、低いんだか分からなくなってきた。
頭の中が花畑かよ。
ストレスが溜まり過ぎて、頭と心臓が痛い。
一対一でも対峙したらやばいやつなのに、三人もいるのだから困ったものだ。
なんだ。
……この卓を破壊したら、こいつら帰るかな?
いや、無理だな。
テーブルを弁償させられるだけだ。
冷静に考えよう。
「んで、何を話すの?」
俺は三人とも知っている人だからいいが、本人達は初対面だ。
仲良さそうにしているけれども、マウントを取られないように静かな攻防が繰り広げられていた。
名前や職業を述べて、大人としての対応をする。
コンパみたいな自己紹介をするな。
メイドさんとジュリねえは、俺にも名刺をくれる。
こうして、二人からちゃんと名刺を貰うのは初めてかも知れない。
まあ、名刺を貰うまでもなく、名前も性格も知っているからな。
改めて自己紹介する方が恥ずかしいくらいだ。
「あらあら、ごめんなさいね。私はずっとママだから仕事をしたことないし、名刺を持ってないの」
壮絶なるマウントを取るなや。
そういうことを平然と言うから、友達がいないんだよ。
幸せな話は、他人にとって幸せとは限らない。
学生恋愛して直ぐに結婚した幸せそうな話は、三十路に利く。
致命傷を受けていた。
上昇負荷を受けて、血反吐を吐く。
いや、お前ら成れ果てやろ。

正直、俺からしたら仕事を頑張っている人間の方がえらいと思う。
二人のことを立てるわけではなく、普通に凄い人なのだ。
メイド喫茶の実質的な店長と、読者モデルの事務所のマネージャーであり、肩書きはかなり上だからな?
高給取りであるし、人を導く指導者だ。
俺とは生きている畑は違えど、その生きざまは尊敬している。
一応、フォローを入れておく。
「母親、多様性が尊ばれている今の時代では、女性の幸せは結婚だけじゃないから」
「……それも致命傷なのでやめて頂けますか?」
「君は、恋人以外には容赦がないタイプなのかな?」
普通に怒られた。
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