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第39.5話・チョコレートはビター味?
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駅前のバレンタインコーナー。
恋する女の子にとって、バレンタインとは戦争である。
血のバレンタインとも呼ばれている。
それくらい恋愛において、特大イベントだ。
バレンタイン商戦に乗せられているとはいえど、この機会に好きな男の子にチョコレートを合法的に贈ることが出来るのであれば、気にしないものだ。
女の子はみんな、ウキウキである。
いつもより割高なチョコレートでも、脳死で買ってしまう。
よんいち組と準備組は、一緒に買い物に出掛けていた。
男子がいない分、自由気ままに出掛けられる。
その反面、ハジメがいないので問題児は野放しになっている。
風夏はまあ、いいとして。
問題児の白石、真島などは完全に放置することにした。
黒川さんや西野さんは、自分のチョコレート選びに集中していた。
黒川さんは、彼氏である一条にプレゼントするので、それなりに悩んでチョコレートを吟味していた。
西野さんには、付き合っている恋人も、意中の相手もいないが、バレンタインは好きだった。
この雰囲気が好き。
自分で恋愛するのは手間でしかないが、誰かが幸せなのは見ていたい。
時たまに、恋愛映画を観に行きたいのと同じである。
今は、黒川さんのチョコ選びを手伝っていた。
「わぁ、チョコレートっていっぱい種類があるんですね」
「……黒川さんはバレンタイン贈るの初めて?」
「そうなんです。だから、何がいいか分からなくて……」
恋人にチョコレートを贈るとして、どういうのが喜ばれるのか。
五百円から数千円まで値段はピンキリだし、有名なパティシエが開発した限定品。
可愛い動物のかたちをしたチョコレートまであって、選ぶのが難しかった。
プレゼントを選びにきたはずなのに、自然と自分が食べたいものが増えてしまう。
これぞバレンタインマジック。
友チョコや女子チョコが流行るわけである。
財布の持ち合わせが少ないからまだ自制心があるけれども、幾つ買っても足りなくなる。
隣では萌花に注意される風夏だった。
「ふうはチョコ買いすぎでしょ」
「え~、色んな人にいっぱい配るんだもん。全然少ないよ~」
風夏は深く考える前にチョコレートを手に取っていた。
読者モデルともなれば、数十個もプレゼントするのか、かごいっぱいにチョコレートを入れる。
見ているだけで胸焼けしそうだ。
あの娘の場合、ハジメちゃんに数十個渡しそうだから、みんな焦っていた。
好感度が、五億くらいいってそうだからだ。
そうならなくて安心である。
ハジメの場合、数十個でも普通に受け取りそうだからな。
風夏は愛の強さがガバガバだけど、それでも許してくれる人が恋人だと幸せなのだろう。
黒川さんも、彼氏である一条のことはずっと好きで現状には満足だけれども、ちょっと羨ましかった。
「ねえねえ、姫と月」
親友の白石さんと、真島さんが話し掛けてきた。
「え、どうしたの?」
「……あなた達二人が一緒に来るってやばいことでしょう?」
安定と信頼の実績である。
文化祭以降も何度も遊び、仲良くなったからこそ言える言葉だった。
「向こうにジョークチョコあるから買わない?」
「ジョークは貴方の存在でしょ」
「たはー! 秀逸っ!」
真島には容赦がない西野であった。
彼女の変なもの好きは、今に始まったことではないが、時と場合は選んでほしかった。
「月よ。相変わらずの真面目か」
「せっかくこのメンバーで遊べるんだから、真面目にするでしょう?」
自分達だけなら集まろうと思えばいつでも可能だが、よんいち組のメンバーは仕事やら部活やらで全員集まるのは難しい。
わざわざ時間を作ってくれていた。
西野さんも、文化祭組のみんなで何かをするのが好きだった。
だから、このみんなで集まれる時間は有意義に使いたい。
「あなた達二人は遊んでいるのはいつもだからまあいいとして、東山くんへのお礼も兼ねているんだからちゃんと選んでよ」
アホ二人は、ハジメに勉強を教えてもらっていた。
相手がハジメなので勉強を教えたくらいでお礼を求めることはなかったが、クラスメートの礼儀としてバレンタインくらいは渡しておきたい。
西野さんはそのためにハジメにチョコレートを渡していいか、萌花に聞いていた。
「舐めないでよね。ちゃんと考えていたんだから」
「そう。ちゃんと選んでいたのね」
「うんちょこ」
「……はっ倒されるわよ」
何でこんなやつの親友をしているのか。
西野さんは心底後悔していた。
本気で愛している相手にお礼としてそんなもの渡す女子がいたら、可愛い女の子だってブチ切れて全力で殴り飛ばすだろう。
よんいち組の女の子は、ああみえて全員真面目なので、その手の冗談は通用しない。
「義理って分かっていいじゃん。結構高いんだよ?」
「それを貰うくらいなら、まだキットカットの方がいいわよ」
「何で??」
まじで分かっていない真島であった。
……感性ぶっ壊れいるのか。
「白石さんは?」
アホは放っておくことにした。
まだ白石さんの方がまともだから話を振る。
「ゴリラチョコ」
「隣のイルカチョコじゃダメなの?」
「だめだよ。男の子は、みんなゴリラが好き」
「白石さん、何でゴリラ?」
「ゴリラは森の賢者」
ブラックチョコとホワイトチョコのゴリラがセットになっている。
二つのゴリラで、二度美味しい。
ツッコミ役がいない。
黒川さんは空気を察してか、よんいち組の方に逃げていた。
楽しそうに彼氏にあげるチョコレートを選んでいる。
これが境界線。
彼氏がいる。
いないという、女子での格差社会だ。
「え? 黒川さん……?」
問題児二人をぶん投げられていた西野さんであった。
それから、風夏は大量のチョコレートを先に購入していた。
かなり大きな紙袋を両脇に抱える。
それを見て、萌花は驚く。
「いや、まじでっか」
「でしょでしょ。プレゼント用の紙袋もいっぱい入っているからね」
「ようやるわ」
読者モデルだから仕事仲間や、ファンにあげたりもするのだろうが、誰かのために数万円をポンと出せるのは彼女くらいだろう。
もちろん、ハジメの分だけではなく萌花達の分も買ってくれている。
いい娘である。
彼女が読者モデルとしてファンに指示される理由がよく分かるのであった。
「萌花は何にするの?」
「適当にコーヒーが付いてるやつ」
「わぁ、いいね。ハジメちゃん喜んでくれるよ」
素直に共感してくれる。
「……ふうは、その中のどれを東っちにあげるん?」
「……」
「……」
「あれ……? 忘れちゃった……」
「何で一緒に買ったっしょ」
アホである。
ハジメが居たら、死ぬほど頭を抱えていたであろう。
萌花からしたら絶対にやらないヘマではあるが、風夏がやる分には可愛いのかも知れない。
「しゃーないな。もえが探してやんよ。どこのやつ買ったん?」
風夏に案内してもらい、展示物を確認し、包み紙からどれが本命チョコか把握する。
色々なブランドチョコを満遍なく買っていたから何とか分かったが、同じものばかり買っていたら危なかった。
風夏には、本命チョコなら贈答用の高い包み紙にしてもらうように促す。
「萌花、ありがとう」
「ん……」
風夏もまた、優しい萌花が好きだった。
また忘れないうちに、ハジメちゃんのチョコの包み紙を変えてもらいに行くのだった。
ご機嫌にスキップする風夏である。
萌花は、それを見送る。
「あら、萌花。優しいじゃない」
「れーな以外には優しいからな」
「何で私だけ当たりが強いの?!」
「れーなは、甘やかすと図に乗るやん」
麗奈がかるく茶化したら、三倍くらいの威力で反撃されていた。
「そうかも知れないけれど、少しは優しくしてよね。この前だって二人っきりにしてあげたでしょ」
この前のことだ。
放課後にハジメと萌花で帰らせてあげていた。
わざわざ三馬鹿を止めてくれていたし、彼女なりに萌花にお膳立てしてあげていたのだ。
その結果、二人の仲が思っていた以上に進展して、自分が一番遅れる結果になるあたり、麗奈の幸の薄さがよく分かる。
クソほど親友の麗奈を煽ることも出来たが、萌花はそうしなかった。
自分の気持ちを、他の誰かに言うことはない。
誰かに自慢するためにハジメを好きになったわけではないのだ。
そもそも、他のメンバーもハジメの自慢話はしないので、暗黙の了解であった。
「え? あの時、何かあったの?」
「いや、なにも」
「萌花って、案外嘘付くの下手よね」
「フルオープン、ドスケベ女に言われてもな」
麗奈からしたら普段から大人の女性っぽい毅然とした態度をしているつもりだろうが、麗奈のことを詳しく知っている人間からしたら、彼女は歩く変態である。
風夏や冬華がハジメに抱く感情は、女の子らしい純粋な好意からくる恋愛感情なので微笑ましいが、麗奈のソレは餓えた狼と同じなのだ。
密室空間に数分くらいハジメと一緒に入れたら、即座にハンターと化すだろう。
メスカマキリである。
よんいち組のみんながハジメをずっと好きだったり、尊敬していたり、悔いのない恋愛をしていたりする最中、一人だけ物理的な愛情がほしいと変態行為を画策している。
それをドスケベと言わずして何と言うのであろうか。
高校生になれば、えっちな行為くらいするだろうが、どう考えても今じゃない。
「……」
「れーなだし、愛されているのか不安なのは分かる。だけど、あいつが不義理を働くやつじゃないってのは、れーなが一番分かっているっしょ?」
「そうね。そうだもんね。心配かけさせて、ごめんね」
すぐに不安になる自分のことを恥じていた。
自分一人では、普通の恋愛は出来なかっただろう。
四人でないと乗り越えられなかった今があるからこそ、こうやって同じ人を好きになったのは必然だったのか。
「れーなはチョコどうするん?」
「う~ん、私は手作りかな。あ、萌花も一緒に作らない? 一人で作るの詰まらないし、わいわいやりたいじゃない」
「いや、手作りって面倒じゃん」
「そんなことないわよ。湯煎して簡単に作れるから、手間もかからないもの」
「それにほら。彼氏に手作りチョコとか激重やし、愛情のおまじないとか言って体液入れてそうなイメージじゃん」
「…………そんなことないわよ」
「即答しろや」
恋する女の子にとって、バレンタインとは戦争である。
血のバレンタインとも呼ばれている。
それくらい恋愛において、特大イベントだ。
バレンタイン商戦に乗せられているとはいえど、この機会に好きな男の子にチョコレートを合法的に贈ることが出来るのであれば、気にしないものだ。
女の子はみんな、ウキウキである。
いつもより割高なチョコレートでも、脳死で買ってしまう。
よんいち組と準備組は、一緒に買い物に出掛けていた。
男子がいない分、自由気ままに出掛けられる。
その反面、ハジメがいないので問題児は野放しになっている。
風夏はまあ、いいとして。
問題児の白石、真島などは完全に放置することにした。
黒川さんや西野さんは、自分のチョコレート選びに集中していた。
黒川さんは、彼氏である一条にプレゼントするので、それなりに悩んでチョコレートを吟味していた。
西野さんには、付き合っている恋人も、意中の相手もいないが、バレンタインは好きだった。
この雰囲気が好き。
自分で恋愛するのは手間でしかないが、誰かが幸せなのは見ていたい。
時たまに、恋愛映画を観に行きたいのと同じである。
今は、黒川さんのチョコ選びを手伝っていた。
「わぁ、チョコレートっていっぱい種類があるんですね」
「……黒川さんはバレンタイン贈るの初めて?」
「そうなんです。だから、何がいいか分からなくて……」
恋人にチョコレートを贈るとして、どういうのが喜ばれるのか。
五百円から数千円まで値段はピンキリだし、有名なパティシエが開発した限定品。
可愛い動物のかたちをしたチョコレートまであって、選ぶのが難しかった。
プレゼントを選びにきたはずなのに、自然と自分が食べたいものが増えてしまう。
これぞバレンタインマジック。
友チョコや女子チョコが流行るわけである。
財布の持ち合わせが少ないからまだ自制心があるけれども、幾つ買っても足りなくなる。
隣では萌花に注意される風夏だった。
「ふうはチョコ買いすぎでしょ」
「え~、色んな人にいっぱい配るんだもん。全然少ないよ~」
風夏は深く考える前にチョコレートを手に取っていた。
読者モデルともなれば、数十個もプレゼントするのか、かごいっぱいにチョコレートを入れる。
見ているだけで胸焼けしそうだ。
あの娘の場合、ハジメちゃんに数十個渡しそうだから、みんな焦っていた。
好感度が、五億くらいいってそうだからだ。
そうならなくて安心である。
ハジメの場合、数十個でも普通に受け取りそうだからな。
風夏は愛の強さがガバガバだけど、それでも許してくれる人が恋人だと幸せなのだろう。
黒川さんも、彼氏である一条のことはずっと好きで現状には満足だけれども、ちょっと羨ましかった。
「ねえねえ、姫と月」
親友の白石さんと、真島さんが話し掛けてきた。
「え、どうしたの?」
「……あなた達二人が一緒に来るってやばいことでしょう?」
安定と信頼の実績である。
文化祭以降も何度も遊び、仲良くなったからこそ言える言葉だった。
「向こうにジョークチョコあるから買わない?」
「ジョークは貴方の存在でしょ」
「たはー! 秀逸っ!」
真島には容赦がない西野であった。
彼女の変なもの好きは、今に始まったことではないが、時と場合は選んでほしかった。
「月よ。相変わらずの真面目か」
「せっかくこのメンバーで遊べるんだから、真面目にするでしょう?」
自分達だけなら集まろうと思えばいつでも可能だが、よんいち組のメンバーは仕事やら部活やらで全員集まるのは難しい。
わざわざ時間を作ってくれていた。
西野さんも、文化祭組のみんなで何かをするのが好きだった。
だから、このみんなで集まれる時間は有意義に使いたい。
「あなた達二人は遊んでいるのはいつもだからまあいいとして、東山くんへのお礼も兼ねているんだからちゃんと選んでよ」
アホ二人は、ハジメに勉強を教えてもらっていた。
相手がハジメなので勉強を教えたくらいでお礼を求めることはなかったが、クラスメートの礼儀としてバレンタインくらいは渡しておきたい。
西野さんはそのためにハジメにチョコレートを渡していいか、萌花に聞いていた。
「舐めないでよね。ちゃんと考えていたんだから」
「そう。ちゃんと選んでいたのね」
「うんちょこ」
「……はっ倒されるわよ」
何でこんなやつの親友をしているのか。
西野さんは心底後悔していた。
本気で愛している相手にお礼としてそんなもの渡す女子がいたら、可愛い女の子だってブチ切れて全力で殴り飛ばすだろう。
よんいち組の女の子は、ああみえて全員真面目なので、その手の冗談は通用しない。
「義理って分かっていいじゃん。結構高いんだよ?」
「それを貰うくらいなら、まだキットカットの方がいいわよ」
「何で??」
まじで分かっていない真島であった。
……感性ぶっ壊れいるのか。
「白石さんは?」
アホは放っておくことにした。
まだ白石さんの方がまともだから話を振る。
「ゴリラチョコ」
「隣のイルカチョコじゃダメなの?」
「だめだよ。男の子は、みんなゴリラが好き」
「白石さん、何でゴリラ?」
「ゴリラは森の賢者」
ブラックチョコとホワイトチョコのゴリラがセットになっている。
二つのゴリラで、二度美味しい。
ツッコミ役がいない。
黒川さんは空気を察してか、よんいち組の方に逃げていた。
楽しそうに彼氏にあげるチョコレートを選んでいる。
これが境界線。
彼氏がいる。
いないという、女子での格差社会だ。
「え? 黒川さん……?」
問題児二人をぶん投げられていた西野さんであった。
それから、風夏は大量のチョコレートを先に購入していた。
かなり大きな紙袋を両脇に抱える。
それを見て、萌花は驚く。
「いや、まじでっか」
「でしょでしょ。プレゼント用の紙袋もいっぱい入っているからね」
「ようやるわ」
読者モデルだから仕事仲間や、ファンにあげたりもするのだろうが、誰かのために数万円をポンと出せるのは彼女くらいだろう。
もちろん、ハジメの分だけではなく萌花達の分も買ってくれている。
いい娘である。
彼女が読者モデルとしてファンに指示される理由がよく分かるのであった。
「萌花は何にするの?」
「適当にコーヒーが付いてるやつ」
「わぁ、いいね。ハジメちゃん喜んでくれるよ」
素直に共感してくれる。
「……ふうは、その中のどれを東っちにあげるん?」
「……」
「……」
「あれ……? 忘れちゃった……」
「何で一緒に買ったっしょ」
アホである。
ハジメが居たら、死ぬほど頭を抱えていたであろう。
萌花からしたら絶対にやらないヘマではあるが、風夏がやる分には可愛いのかも知れない。
「しゃーないな。もえが探してやんよ。どこのやつ買ったん?」
風夏に案内してもらい、展示物を確認し、包み紙からどれが本命チョコか把握する。
色々なブランドチョコを満遍なく買っていたから何とか分かったが、同じものばかり買っていたら危なかった。
風夏には、本命チョコなら贈答用の高い包み紙にしてもらうように促す。
「萌花、ありがとう」
「ん……」
風夏もまた、優しい萌花が好きだった。
また忘れないうちに、ハジメちゃんのチョコの包み紙を変えてもらいに行くのだった。
ご機嫌にスキップする風夏である。
萌花は、それを見送る。
「あら、萌花。優しいじゃない」
「れーな以外には優しいからな」
「何で私だけ当たりが強いの?!」
「れーなは、甘やかすと図に乗るやん」
麗奈がかるく茶化したら、三倍くらいの威力で反撃されていた。
「そうかも知れないけれど、少しは優しくしてよね。この前だって二人っきりにしてあげたでしょ」
この前のことだ。
放課後にハジメと萌花で帰らせてあげていた。
わざわざ三馬鹿を止めてくれていたし、彼女なりに萌花にお膳立てしてあげていたのだ。
その結果、二人の仲が思っていた以上に進展して、自分が一番遅れる結果になるあたり、麗奈の幸の薄さがよく分かる。
クソほど親友の麗奈を煽ることも出来たが、萌花はそうしなかった。
自分の気持ちを、他の誰かに言うことはない。
誰かに自慢するためにハジメを好きになったわけではないのだ。
そもそも、他のメンバーもハジメの自慢話はしないので、暗黙の了解であった。
「え? あの時、何かあったの?」
「いや、なにも」
「萌花って、案外嘘付くの下手よね」
「フルオープン、ドスケベ女に言われてもな」
麗奈からしたら普段から大人の女性っぽい毅然とした態度をしているつもりだろうが、麗奈のことを詳しく知っている人間からしたら、彼女は歩く変態である。
風夏や冬華がハジメに抱く感情は、女の子らしい純粋な好意からくる恋愛感情なので微笑ましいが、麗奈のソレは餓えた狼と同じなのだ。
密室空間に数分くらいハジメと一緒に入れたら、即座にハンターと化すだろう。
メスカマキリである。
よんいち組のみんながハジメをずっと好きだったり、尊敬していたり、悔いのない恋愛をしていたりする最中、一人だけ物理的な愛情がほしいと変態行為を画策している。
それをドスケベと言わずして何と言うのであろうか。
高校生になれば、えっちな行為くらいするだろうが、どう考えても今じゃない。
「……」
「れーなだし、愛されているのか不安なのは分かる。だけど、あいつが不義理を働くやつじゃないってのは、れーなが一番分かっているっしょ?」
「そうね。そうだもんね。心配かけさせて、ごめんね」
すぐに不安になる自分のことを恥じていた。
自分一人では、普通の恋愛は出来なかっただろう。
四人でないと乗り越えられなかった今があるからこそ、こうやって同じ人を好きになったのは必然だったのか。
「れーなはチョコどうするん?」
「う~ん、私は手作りかな。あ、萌花も一緒に作らない? 一人で作るの詰まらないし、わいわいやりたいじゃない」
「いや、手作りって面倒じゃん」
「そんなことないわよ。湯煎して簡単に作れるから、手間もかからないもの」
「それにほら。彼氏に手作りチョコとか激重やし、愛情のおまじないとか言って体液入れてそうなイメージじゃん」
「…………そんなことないわよ」
「即答しろや」
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