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第25.5話・湯けむりと恋バナ
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描写少なめ。
エロ描写、猥談注意。
大筋には関係ありませんので、飛ばしても大丈夫です。
女子達は時間になると、入浴の為に更衣室に集まっていた。
「すごい広い!」
「大きい温泉は初めてだぞ!」
「そんなに驚く? まだ更衣室だよ?」
「いや、普通の銭湯と変わらんやろ」
風夏と冬華は、初めての経験で驚いており、はしゃいでいる。
幼い頃から銭湯をよく利用している二人は慣れた手つきでコインロッカーを使用している。
「みんなで温泉なんて初めてだから楽しみだね!」
「ああ、こういうのも楽しいものだな」
修学旅行の雰囲気を楽しみながら、キャッキャしているのが学生らしい反応だ。
「早く入ろーぜ」
「え? はあ。あのね、もえはもう少し羞恥心を持って?」
銭湯の時と同じように、適当に脱いで生まれたてのまま仁王立ちしていた。
「ゆーて、女子しかいないんだからよくない?」
「そういうわけにもいかないでしょ。ほら。湯船用のタオルもあるんだから、前を隠すのに使ってね」
麗奈はタオルを手渡す。
「もえには隠すほどのものなんてないけどな」
「知らないわよ。あと、私のことジロジロ見るの止めて」
「流石、クラスのエロ担当だけある。何食べたらそうなるん? 料理上手いと有利的な?」
「え、なにそれ……。料理は関係ないと思うけど。裸のまま居ると風邪引くから、早く入りましょ」
「そーだね」
「二人とも脱ぐの早いね」
「すまない、待ってくれ」
風夏と冬華も衣類をコインロッカーに仕舞い込んでいた。
萌花は、二人と見比べて。
「デブ」
「ーーは?」
「は?」
学生向けの旅館だけあってか温泉は広く、学生が数十人いても問題なくゆっくり出来るものだった。
文化祭準備組の黒川さん達は、小日向風夏がはしゃいでいる陽キャグループを見つつ、細々と目立たないように温泉に入っていた。
「友達とはいえ、一緒に温泉は恥ずかしいね」
仲が良いので裸の付き合いでも相手は気にしないと分かっていても、一緒に温泉に入るのは恥ずかしい。
黒川さんや白石さん。
西野さんと真島さんは、更衣室が隣だった流れ的に同じ湯船に浸かり、身体を温めながら会話をしていた。
西野さんはどちらかといえば三本指に数えられるくらい美人だが、元々恥ずかしがり屋なので見知った人と一緒に居たかった。
それでも恥ずかしい為、温泉で温まったら、直ぐに出ていくつもりだ。
「クラスの大半は友達だけど、裸を見るのも見せるのも恥ずかしいわね」
西野さんがそういうと、説得力がある。
女同士であっても、美人の綺麗な身体には興味があるわけで、顔がいい人間は女体まで優れているものなのかとすら思っていた。
西野さんは他の女子に隠れているが、潜在能力は読者モデルの小日向並に高い。
この場に混じっているのも不思議なくらいである。
「月ちゃんは美人だからいいじゃん。スタイル悪い人間は、引け目に感じちゃうよね?」
白石さんは、黒川さんと真島さんの方を見る。
「同意を求めないで」
「え? 私も仲間?」
一日目の奈良でも、西野さんはナンパされるくらい美人だが、他の三人はクラスの男子からすらも話し掛けられていなかった。
恋愛脳で異性を求めて嘆いている運動部の三馬鹿よりはマシではあるが、地味な女の子だって恋バナくらいはしたいものだ。
「恋バナしようよ」
「え? やるの? 今、ここで」
真島さんの一言に即座にツッコミを入れる西野さんである。
「月、裸の付き合いだからこそ出来る話題だよ」
「……普通。恋バナって、寝る前にするものでしょ?」
「だって寝る前だと、風夏ちゃん達いるし恋バナ出来ないじゃん」
「ああ、うん」
それは出来ないな。
クラスの女子は全員仲良しだが、そこだけは触れてはいけない禁忌である。
「みんな、三日目にデートするって言っていたから問題ないんじゃないかな?」
一条側から軽く予定を聞いていた黒川さんはそういい、別にバチバチしているわけではないことを話す。
まあ、彼女達が抱えている修学旅行への想いや内心は分からないけれど、四人ともどこまでも性格がいい女の子なので安心して見ていられる。
白石さんは黒川さんのフォローに付け加える。
「風夏ちゃん達、四月くらいは陽キャだから話し掛けていいか分からなかったけど、普通に良い娘だもんね。男の趣味は悪いけど」
「ああ、うん……」
全員黙る。
誰がどう言おうと、男の趣味は悪い。
東山ハジメは悪い人ではないが、別のベクトルでアホっぽいところがある。
心配性なお兄ちゃんみたいに世話焼きな性格なくせに、ラノベ主人公並に鈍感なアホ。
早く相手の好意に気付いて、好きな人を決めて付き合え。
と全員が思っていただろう。
「まあでも、東山くんが女の子が好きだったら、風夏ちゃん達と仲良くしていないと思うから」
「もえちゃん男嫌いだからね。女の子目当てだったらその時点で間引かれていると思うし、東っちはよくしばかれないで生きていると思うよ」
そうか。
鈍感レベルで女の子に興味がない人間じゃないと、萌花に嫌われて終わる。
それにみんなナンパ慣れしていて、普通の野郎だと恋愛対象外になる。
かなりの美人相手に好意を持つことは、デメリットとして働く。
風夏ちゃんくらいの美人だと、恋愛に興味がない女の子にただただ優しいだけのアホじゃないと駄目なのか。
「そう考えたら、地雷源多い中で難易度高いのに良くやってるよね」
「でもさ。東っちは、ただの天然なアホだと思うけどね」
真島さんはサラッと暴言を吐く。
皆、それは分かっているけど。
アホでも共通の男友達なので悪く言えない。
文化祭が盛り上がったのも、ハジメのお陰であり、文化祭を機に仲良くなれた人も多い。
真島さんは少しだけ怒っていた。
「正直、あんなに可愛い女の子が側にいたら、好きになっちゃうと思うのに!」
それでもアホほど鈍感なのは事実なので、友達の恋愛事情にやきもきする。
性欲すらない堅物なのか。
何だか苛ついてくる。
「わぁ! 私達も入っていい?」
四人で会話している中に入りたいらしく、風夏が目の前にやってきた。
現役最強の読者モデルであり、クラスの顔である女の子がきた。
湯船に浸かったまま、彼女を見上げる。
「……なるほど」
クオリティが高い。
何がとはいわないが、クオリティが高い。
読者モデルはスタイルからして、一般人と次元が違うのかも知れない。
全体的にハイライトが凄い。
「どしたの?」
風夏は、きょとんとしていた。
裸でいるのが普通な温泉とはいえ、タオルを前に巻いてほしい。
見ているこちら側が恥ずかしかった。
目の前の完璧美少女である小日向風夏を相手に、平常心を保っている男子がいる事実。
あいつやばいな。
「えっとね。小日向さん、早く湯船に入って?」
「うん? 分かった」
風夏は素直に湯船に入る。
それに続いて、他のメンバーもやってくる。
「風夏、待ってくれ」
「みんな先に入ってたんだ。お邪魔するわね」
「よ!」
他の娘も、クオリティが高い。
あまりの光景に、口を開けてあんぐりしている者もいた。
真島さんは、ふと思ったことをそのまま真顔で言う。
「もえちゃん。東山くん、今度しばいていい?」
「ムカつくから、ええよ」
ハジメの扱いに誰も文句はいわなかった。
可愛い女の子に好かれているやつは、死ぬほど苦労すればいいのだ。
みんなで外にある露天風呂に入りに行き、少しした頃に萌花だけサウナに向かうことにした。
一人でサウナに入るのは気が引けたが、サウナ室にはいつもの三馬鹿がいた。
「あ、もえぴ」
「いらっしゃい」
「ふぃ~、めちゃくちゃ熱いよ」
三人は萌花に挨拶を交わし、一番いい席を空ける。
「せんきゅ」
サウナ室に流れているテレビを見ながら、静かにサウナを楽しんでいた。
萌花は特に気にする素振りはなかったが、三馬鹿は話題を振りたそうにしている。
「ねぇ、もえぴ」
「どしたん?」
「もえぴ、肌綺麗だね」
「あ、ごめん。わたしはノーマルなんで」
萌花は即座に斬り捨てる。
主語が私になるほどに冷徹な対応をする。
「違うの。もえぴ。わたしを嫌わないで」
「よーわからんけど、裸で情緒不安定になるなよ。肩を掴むな」
全裸同士で変な空気になっている。
単純に言葉選びをミスった馬鹿なだけだが、他の仲間も若干引いていた。
「んで、何を言いたいん?」
「もえぴって東山くんのこと好きでしょ? 修学旅行中、わたし達で上手くフォローしてあげるね」
「いや、自分のことは自分でやるんで大丈夫」
完全なる拒絶であった。
「うわあぁぁぁぁん、もえぴぃぃぃぃ」
サウナ室で咽び泣く。
だから裸で変なことをするなと思っていたが、言っても分からないのでスルーする。
「つか、別に東っちは好きじゃないぞ?」
「あはは、ご冗談を。仲良しじゃん」
「東山くんとよく一緒にいるし」
「もえぴは、他の男子が嫌いなのは分かるけど、東山くんにはすっごく優しいじゃん」
イケメン好きと言っている割には、ハジメには特に優しい。
よんいち組の一員だし、共通の友達なので多少は仲間意識があるだろうが、萌花があんなに弄っている相手は麗奈とハジメくらいだ。
その部分では、親友の麗奈と同じ位置にいる相手ともいえるか。
気を許しているのは外野から見ても歴然であった。
「もえぴが東山くんを好きなのは知っているから安心して」
「……はあ」
三馬鹿故に変な勘違いをしているようだったが、萌花は色々あって疲れていたので空返事をしていた。
「もえぴは可愛いから、大丈夫だよ」
「東山くんロリコンっぽいし」
「多分ドMだよ」
実際には好きな人ではないが、好きな人のことをロリコン変態ドMメイド野郎と目の前で言っている。
性癖をバラされているハジメの為にちょっとは怒るべきか悩んだが、否定出来るところがないのがハジメであった。
性癖は大体合っている。
「もえは、好きとかよーわからんけど」
「ほら、東山くんとえっちなことしたいとかあるでしょ??」
「きゃー。えっち!」
だから、裸で話す内容ではない。
モテない女子達の他愛ない話ではあるが、全裸で猥談をするのは絵面的にやばかった。
「よーわからんが、そういうのは彼氏を作ってから言って」
彼氏作りたいのはそっちだろう。
お前らの修学旅行を頑張れ。
と優しい萌花は心の中で思っていた。
そして。
サウナから出た萌花は、容赦なく三馬鹿に冷水をぶっかけていた。
恋バナ中は終始真顔ではあったが、結構イライラしていたのか。
十数分後。
温泉上がりの萌花から、理不尽に肩パンされるハジメちゃんであった。
エロ描写、猥談注意。
大筋には関係ありませんので、飛ばしても大丈夫です。
女子達は時間になると、入浴の為に更衣室に集まっていた。
「すごい広い!」
「大きい温泉は初めてだぞ!」
「そんなに驚く? まだ更衣室だよ?」
「いや、普通の銭湯と変わらんやろ」
風夏と冬華は、初めての経験で驚いており、はしゃいでいる。
幼い頃から銭湯をよく利用している二人は慣れた手つきでコインロッカーを使用している。
「みんなで温泉なんて初めてだから楽しみだね!」
「ああ、こういうのも楽しいものだな」
修学旅行の雰囲気を楽しみながら、キャッキャしているのが学生らしい反応だ。
「早く入ろーぜ」
「え? はあ。あのね、もえはもう少し羞恥心を持って?」
銭湯の時と同じように、適当に脱いで生まれたてのまま仁王立ちしていた。
「ゆーて、女子しかいないんだからよくない?」
「そういうわけにもいかないでしょ。ほら。湯船用のタオルもあるんだから、前を隠すのに使ってね」
麗奈はタオルを手渡す。
「もえには隠すほどのものなんてないけどな」
「知らないわよ。あと、私のことジロジロ見るの止めて」
「流石、クラスのエロ担当だけある。何食べたらそうなるん? 料理上手いと有利的な?」
「え、なにそれ……。料理は関係ないと思うけど。裸のまま居ると風邪引くから、早く入りましょ」
「そーだね」
「二人とも脱ぐの早いね」
「すまない、待ってくれ」
風夏と冬華も衣類をコインロッカーに仕舞い込んでいた。
萌花は、二人と見比べて。
「デブ」
「ーーは?」
「は?」
学生向けの旅館だけあってか温泉は広く、学生が数十人いても問題なくゆっくり出来るものだった。
文化祭準備組の黒川さん達は、小日向風夏がはしゃいでいる陽キャグループを見つつ、細々と目立たないように温泉に入っていた。
「友達とはいえ、一緒に温泉は恥ずかしいね」
仲が良いので裸の付き合いでも相手は気にしないと分かっていても、一緒に温泉に入るのは恥ずかしい。
黒川さんや白石さん。
西野さんと真島さんは、更衣室が隣だった流れ的に同じ湯船に浸かり、身体を温めながら会話をしていた。
西野さんはどちらかといえば三本指に数えられるくらい美人だが、元々恥ずかしがり屋なので見知った人と一緒に居たかった。
それでも恥ずかしい為、温泉で温まったら、直ぐに出ていくつもりだ。
「クラスの大半は友達だけど、裸を見るのも見せるのも恥ずかしいわね」
西野さんがそういうと、説得力がある。
女同士であっても、美人の綺麗な身体には興味があるわけで、顔がいい人間は女体まで優れているものなのかとすら思っていた。
西野さんは他の女子に隠れているが、潜在能力は読者モデルの小日向並に高い。
この場に混じっているのも不思議なくらいである。
「月ちゃんは美人だからいいじゃん。スタイル悪い人間は、引け目に感じちゃうよね?」
白石さんは、黒川さんと真島さんの方を見る。
「同意を求めないで」
「え? 私も仲間?」
一日目の奈良でも、西野さんはナンパされるくらい美人だが、他の三人はクラスの男子からすらも話し掛けられていなかった。
恋愛脳で異性を求めて嘆いている運動部の三馬鹿よりはマシではあるが、地味な女の子だって恋バナくらいはしたいものだ。
「恋バナしようよ」
「え? やるの? 今、ここで」
真島さんの一言に即座にツッコミを入れる西野さんである。
「月、裸の付き合いだからこそ出来る話題だよ」
「……普通。恋バナって、寝る前にするものでしょ?」
「だって寝る前だと、風夏ちゃん達いるし恋バナ出来ないじゃん」
「ああ、うん」
それは出来ないな。
クラスの女子は全員仲良しだが、そこだけは触れてはいけない禁忌である。
「みんな、三日目にデートするって言っていたから問題ないんじゃないかな?」
一条側から軽く予定を聞いていた黒川さんはそういい、別にバチバチしているわけではないことを話す。
まあ、彼女達が抱えている修学旅行への想いや内心は分からないけれど、四人ともどこまでも性格がいい女の子なので安心して見ていられる。
白石さんは黒川さんのフォローに付け加える。
「風夏ちゃん達、四月くらいは陽キャだから話し掛けていいか分からなかったけど、普通に良い娘だもんね。男の趣味は悪いけど」
「ああ、うん……」
全員黙る。
誰がどう言おうと、男の趣味は悪い。
東山ハジメは悪い人ではないが、別のベクトルでアホっぽいところがある。
心配性なお兄ちゃんみたいに世話焼きな性格なくせに、ラノベ主人公並に鈍感なアホ。
早く相手の好意に気付いて、好きな人を決めて付き合え。
と全員が思っていただろう。
「まあでも、東山くんが女の子が好きだったら、風夏ちゃん達と仲良くしていないと思うから」
「もえちゃん男嫌いだからね。女の子目当てだったらその時点で間引かれていると思うし、東っちはよくしばかれないで生きていると思うよ」
そうか。
鈍感レベルで女の子に興味がない人間じゃないと、萌花に嫌われて終わる。
それにみんなナンパ慣れしていて、普通の野郎だと恋愛対象外になる。
かなりの美人相手に好意を持つことは、デメリットとして働く。
風夏ちゃんくらいの美人だと、恋愛に興味がない女の子にただただ優しいだけのアホじゃないと駄目なのか。
「そう考えたら、地雷源多い中で難易度高いのに良くやってるよね」
「でもさ。東っちは、ただの天然なアホだと思うけどね」
真島さんはサラッと暴言を吐く。
皆、それは分かっているけど。
アホでも共通の男友達なので悪く言えない。
文化祭が盛り上がったのも、ハジメのお陰であり、文化祭を機に仲良くなれた人も多い。
真島さんは少しだけ怒っていた。
「正直、あんなに可愛い女の子が側にいたら、好きになっちゃうと思うのに!」
それでもアホほど鈍感なのは事実なので、友達の恋愛事情にやきもきする。
性欲すらない堅物なのか。
何だか苛ついてくる。
「わぁ! 私達も入っていい?」
四人で会話している中に入りたいらしく、風夏が目の前にやってきた。
現役最強の読者モデルであり、クラスの顔である女の子がきた。
湯船に浸かったまま、彼女を見上げる。
「……なるほど」
クオリティが高い。
何がとはいわないが、クオリティが高い。
読者モデルはスタイルからして、一般人と次元が違うのかも知れない。
全体的にハイライトが凄い。
「どしたの?」
風夏は、きょとんとしていた。
裸でいるのが普通な温泉とはいえ、タオルを前に巻いてほしい。
見ているこちら側が恥ずかしかった。
目の前の完璧美少女である小日向風夏を相手に、平常心を保っている男子がいる事実。
あいつやばいな。
「えっとね。小日向さん、早く湯船に入って?」
「うん? 分かった」
風夏は素直に湯船に入る。
それに続いて、他のメンバーもやってくる。
「風夏、待ってくれ」
「みんな先に入ってたんだ。お邪魔するわね」
「よ!」
他の娘も、クオリティが高い。
あまりの光景に、口を開けてあんぐりしている者もいた。
真島さんは、ふと思ったことをそのまま真顔で言う。
「もえちゃん。東山くん、今度しばいていい?」
「ムカつくから、ええよ」
ハジメの扱いに誰も文句はいわなかった。
可愛い女の子に好かれているやつは、死ぬほど苦労すればいいのだ。
みんなで外にある露天風呂に入りに行き、少しした頃に萌花だけサウナに向かうことにした。
一人でサウナに入るのは気が引けたが、サウナ室にはいつもの三馬鹿がいた。
「あ、もえぴ」
「いらっしゃい」
「ふぃ~、めちゃくちゃ熱いよ」
三人は萌花に挨拶を交わし、一番いい席を空ける。
「せんきゅ」
サウナ室に流れているテレビを見ながら、静かにサウナを楽しんでいた。
萌花は特に気にする素振りはなかったが、三馬鹿は話題を振りたそうにしている。
「ねぇ、もえぴ」
「どしたん?」
「もえぴ、肌綺麗だね」
「あ、ごめん。わたしはノーマルなんで」
萌花は即座に斬り捨てる。
主語が私になるほどに冷徹な対応をする。
「違うの。もえぴ。わたしを嫌わないで」
「よーわからんけど、裸で情緒不安定になるなよ。肩を掴むな」
全裸同士で変な空気になっている。
単純に言葉選びをミスった馬鹿なだけだが、他の仲間も若干引いていた。
「んで、何を言いたいん?」
「もえぴって東山くんのこと好きでしょ? 修学旅行中、わたし達で上手くフォローしてあげるね」
「いや、自分のことは自分でやるんで大丈夫」
完全なる拒絶であった。
「うわあぁぁぁぁん、もえぴぃぃぃぃ」
サウナ室で咽び泣く。
だから裸で変なことをするなと思っていたが、言っても分からないのでスルーする。
「つか、別に東っちは好きじゃないぞ?」
「あはは、ご冗談を。仲良しじゃん」
「東山くんとよく一緒にいるし」
「もえぴは、他の男子が嫌いなのは分かるけど、東山くんにはすっごく優しいじゃん」
イケメン好きと言っている割には、ハジメには特に優しい。
よんいち組の一員だし、共通の友達なので多少は仲間意識があるだろうが、萌花があんなに弄っている相手は麗奈とハジメくらいだ。
その部分では、親友の麗奈と同じ位置にいる相手ともいえるか。
気を許しているのは外野から見ても歴然であった。
「もえぴが東山くんを好きなのは知っているから安心して」
「……はあ」
三馬鹿故に変な勘違いをしているようだったが、萌花は色々あって疲れていたので空返事をしていた。
「もえぴは可愛いから、大丈夫だよ」
「東山くんロリコンっぽいし」
「多分ドMだよ」
実際には好きな人ではないが、好きな人のことをロリコン変態ドMメイド野郎と目の前で言っている。
性癖をバラされているハジメの為にちょっとは怒るべきか悩んだが、否定出来るところがないのがハジメであった。
性癖は大体合っている。
「もえは、好きとかよーわからんけど」
「ほら、東山くんとえっちなことしたいとかあるでしょ??」
「きゃー。えっち!」
だから、裸で話す内容ではない。
モテない女子達の他愛ない話ではあるが、全裸で猥談をするのは絵面的にやばかった。
「よーわからんが、そういうのは彼氏を作ってから言って」
彼氏作りたいのはそっちだろう。
お前らの修学旅行を頑張れ。
と優しい萌花は心の中で思っていた。
そして。
サウナから出た萌花は、容赦なく三馬鹿に冷水をぶっかけていた。
恋バナ中は終始真顔ではあったが、結構イライラしていたのか。
十数分後。
温泉上がりの萌花から、理不尽に肩パンされるハジメちゃんであった。
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