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第13.5話・ホラー映画は映画館で
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俺と陽菜と秋月さんで、駅前まで出かけていた。
ホラー映画を観る為に来ていたが、上映まで時間があるのでタピオカ屋で軽く水分補給をすることにした。
陽菜は注文する。
「タピオカチャージ三回、氷フリー、ノーオプション」
人造昆虫カブトボーグV×V
みたいな頼み方をするな。
野郎でも知っている人が限られるネタだぞ。
陽菜はもらったタピオカを嬉しそうに飲む。
「めちゃうま! 暑い日にはタピオカだよね」
「甘いのは喉が乾くしきついわ」
俺と秋月さんは普通に映画館で烏龍茶でも買うことにする。
そのため、美味そうにタピオカを飲んでいるのは陽菜だけだ。
「麗奈ちゃんも飲む?」
「うん。一口だけもらおうかな」
「えへへ、冷たくて美味しいよ」
仲良さそうだよな。
何なら、俺よりも姉妹みたいな感じすらするレベルである。
「秋月さん、いつも陽菜の相手をしてもらってすまない」
「どうしたの? 急に」
「いや、陽菜がうるさいじゃん」
「そんなことないよ。他の子に比べたら全然静かだよ」
秋月さんの真顔が怖い。
目にハイライトがない。
名前を出すまでもなく、他の子達のやばさが伝わってくる。
悪いやつではないが、あいつらは問題児だからな。
「ウチの子達がすみません」
「東山くん、立場逆になってるよ?」
「あれ?」
気付かぬ間に、マインドコントロールされている。
我が子のように思ってしまうんだよな。
よく話はするし仲はいいのだろうが、そこまで面倒見る必要はないと思う。
でも、放っておくと危なっかしい。
自分のことより優先してしまう。
これが母性か?
「お互い大変だね」
「そうだな。俺としては慣れたくはないんだけど……」
「そのうち全員分のタオルとか準備し出すから気を付けてね」
こっわ。
リアルな映像をイメージしてしまった。
近い将来そうなりそうだ。
時間を潰してから映画館に行くと、夏休みだからか若いカップルや学生の団体が多く、話題の新作や劇場版アニメを観る人ばかりだった。
そんな中、B級ホラー映画を愛するクソ映画マイスターである秋月さんは、嬉しそうにホラー映画のチケットを握っている。
俺のせいで、彼女の人生をぶち壊してしまった気がする。
あれだけいい子だったのに、今ではユーチューブでホラー映画キラー殺害まとめ動画みているくらい、人の道を踏み外している。
オタクのように、沼に嵌まり堕ちるのは一瞬である。
「お兄ちゃん、ポップコーン食べたいなぁ」
「自分で払うなら食べれば?」
「え~、酷い」
いや、自分が食べたいなら自分で払えよ。
ポップコーンだって結構高いんだぞ。
「セットで頼んだら安くなるし、一緒に頼んであげようよ。私達も少しは食べたいでしょ?」
「そういうなら、構わないが」
俺達用の烏龍茶二つとバケツサイズのポップコーンを買う。
「ありがとうございます。カップル割適用でお値段はこちらですね」
一瞬、何とも言い難い空気になった。
秋月さんの顔が見れない。
そんなこんなで、映画が始まり、内容を楽しむことにした。
家で何回か観たホラー映画の続編だ。
例の洋館に住まうチェーンソーのキラーから逃げながら脱出する映画の前日譚であり、時代背景は百年以上前に遡る。
悪霊になる前。生身のキラーが題材で、洋館に現れた強盗との壮絶な殺し合いが始まった。
サイコキラーである殺人鬼が絶対的な悪役ではあるが、殺人や窃盗を繰り返しこの洋館に忍び込んできた強盗にも非がある為に、前作とは違い人が襲われても同情しにくかった。
生身同士の殴り合いや、強盗が仲間を見捨てるけど逃げた先で罠に掛かったり、作品愛を感じつつも新しい切り口で意欲的に殺人方法を取り入れていた。
殺しのテーマパークだ。
いや、殺人を楽しむ映画ではなく、ホラー要素にビビるべき何だが。
隣の席の秋月さんがワクワクしながら観ていて、それが一番ホラーである。
プリキュア応援しているレベルで目がキラキラしていた。
シーン的には人が死んでいるんだがな。
映画の最後には、強盗がランプオイル片手に特攻し、キラーと相討ちになり自爆した姿は、涙無しには見られなかった。
強盗とはいえ、仲間の仇討ちの為に立ち向かう様は、この作品の醍醐味だ。
映画が終わり、スクリーンが明るくなると、怖かった人と大爆笑している人がいて、ファンかどうかの違いがハッキリと分かれていた。
感想としては、正直面白かった。
うん、既存のファンでも、一見様でも違う視点で楽しめるとは、ホラー映画という括りに関係なく素晴らしかった。
この作品に注がれている情熱は、参考にしたいくらいだ。
「面白かったね。後でパンフレット買わないと」
「そうだな」
「また続編出るみたいだから、楽しみだね」
秋月さん。
そこまでハマっているんですね。
パンフレットに時系列とか明かされていない設定とか載っていそうだし、買ったらちょっと見せてもらおうかな。
大画面で映画を観るのもいいものだ。
赤色は当分お腹いっぱいだけどね。
ホラー映画を観る為に来ていたが、上映まで時間があるのでタピオカ屋で軽く水分補給をすることにした。
陽菜は注文する。
「タピオカチャージ三回、氷フリー、ノーオプション」
人造昆虫カブトボーグV×V
みたいな頼み方をするな。
野郎でも知っている人が限られるネタだぞ。
陽菜はもらったタピオカを嬉しそうに飲む。
「めちゃうま! 暑い日にはタピオカだよね」
「甘いのは喉が乾くしきついわ」
俺と秋月さんは普通に映画館で烏龍茶でも買うことにする。
そのため、美味そうにタピオカを飲んでいるのは陽菜だけだ。
「麗奈ちゃんも飲む?」
「うん。一口だけもらおうかな」
「えへへ、冷たくて美味しいよ」
仲良さそうだよな。
何なら、俺よりも姉妹みたいな感じすらするレベルである。
「秋月さん、いつも陽菜の相手をしてもらってすまない」
「どうしたの? 急に」
「いや、陽菜がうるさいじゃん」
「そんなことないよ。他の子に比べたら全然静かだよ」
秋月さんの真顔が怖い。
目にハイライトがない。
名前を出すまでもなく、他の子達のやばさが伝わってくる。
悪いやつではないが、あいつらは問題児だからな。
「ウチの子達がすみません」
「東山くん、立場逆になってるよ?」
「あれ?」
気付かぬ間に、マインドコントロールされている。
我が子のように思ってしまうんだよな。
よく話はするし仲はいいのだろうが、そこまで面倒見る必要はないと思う。
でも、放っておくと危なっかしい。
自分のことより優先してしまう。
これが母性か?
「お互い大変だね」
「そうだな。俺としては慣れたくはないんだけど……」
「そのうち全員分のタオルとか準備し出すから気を付けてね」
こっわ。
リアルな映像をイメージしてしまった。
近い将来そうなりそうだ。
時間を潰してから映画館に行くと、夏休みだからか若いカップルや学生の団体が多く、話題の新作や劇場版アニメを観る人ばかりだった。
そんな中、B級ホラー映画を愛するクソ映画マイスターである秋月さんは、嬉しそうにホラー映画のチケットを握っている。
俺のせいで、彼女の人生をぶち壊してしまった気がする。
あれだけいい子だったのに、今ではユーチューブでホラー映画キラー殺害まとめ動画みているくらい、人の道を踏み外している。
オタクのように、沼に嵌まり堕ちるのは一瞬である。
「お兄ちゃん、ポップコーン食べたいなぁ」
「自分で払うなら食べれば?」
「え~、酷い」
いや、自分が食べたいなら自分で払えよ。
ポップコーンだって結構高いんだぞ。
「セットで頼んだら安くなるし、一緒に頼んであげようよ。私達も少しは食べたいでしょ?」
「そういうなら、構わないが」
俺達用の烏龍茶二つとバケツサイズのポップコーンを買う。
「ありがとうございます。カップル割適用でお値段はこちらですね」
一瞬、何とも言い難い空気になった。
秋月さんの顔が見れない。
そんなこんなで、映画が始まり、内容を楽しむことにした。
家で何回か観たホラー映画の続編だ。
例の洋館に住まうチェーンソーのキラーから逃げながら脱出する映画の前日譚であり、時代背景は百年以上前に遡る。
悪霊になる前。生身のキラーが題材で、洋館に現れた強盗との壮絶な殺し合いが始まった。
サイコキラーである殺人鬼が絶対的な悪役ではあるが、殺人や窃盗を繰り返しこの洋館に忍び込んできた強盗にも非がある為に、前作とは違い人が襲われても同情しにくかった。
生身同士の殴り合いや、強盗が仲間を見捨てるけど逃げた先で罠に掛かったり、作品愛を感じつつも新しい切り口で意欲的に殺人方法を取り入れていた。
殺しのテーマパークだ。
いや、殺人を楽しむ映画ではなく、ホラー要素にビビるべき何だが。
隣の席の秋月さんがワクワクしながら観ていて、それが一番ホラーである。
プリキュア応援しているレベルで目がキラキラしていた。
シーン的には人が死んでいるんだがな。
映画の最後には、強盗がランプオイル片手に特攻し、キラーと相討ちになり自爆した姿は、涙無しには見られなかった。
強盗とはいえ、仲間の仇討ちの為に立ち向かう様は、この作品の醍醐味だ。
映画が終わり、スクリーンが明るくなると、怖かった人と大爆笑している人がいて、ファンかどうかの違いがハッキリと分かれていた。
感想としては、正直面白かった。
うん、既存のファンでも、一見様でも違う視点で楽しめるとは、ホラー映画という括りに関係なく素晴らしかった。
この作品に注がれている情熱は、参考にしたいくらいだ。
「面白かったね。後でパンフレット買わないと」
「そうだな」
「また続編出るみたいだから、楽しみだね」
秋月さん。
そこまでハマっているんですね。
パンフレットに時系列とか明かされていない設定とか載っていそうだし、買ったらちょっと見せてもらおうかな。
大画面で映画を観るのもいいものだ。
赤色は当分お腹いっぱいだけどね。
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