15 / 111
第10.5話・ご主人様、私だってヒロインです
しおりを挟む
華麗なる?メイド長の一日
「お帰りなさいませ。ご主人様」
メイド喫茶シルフィード。
秋葉原にある本格的な紅茶や珈琲を楽しむことが出来る喫茶店である。
メイド喫茶として銘打ってはいるが、女性と会話を楽しんだりゲームをするようなお店ではなく、純粋に疲れた身体や心を癒す憩いの場として活用するご主人様やお嬢様が多い。
数十種類の紅茶や選び抜かれた珈琲は、季節に合わせてラインナップを変え、主がいつ戻って来ても最高な空間を提供出来るのだった。
メイドの本質とは、主の為に尽くし、研鑽を積み重ねて、何時如何なる時でも上質な空間を提供しなくてはならない。
シルフィードのメイド長は、ごく一部にクレイジーサイコメイド長とか言われているものの、そんな状態は一時だけだ。
基本的にはシルフィードを代表とするメイド長として活躍してくれているし、皆に好かれる人付き合いの良さがある。
しかしながら、好きな男の子がいるとそうもいかないらしい。
好きな男の子に毎回いたずらしたり。
知能指数がチンパンジーと同等だったり。
恋の病が突然変異して、バイオのB.O.W.化するようなものだ。
恋する追跡者だ。
その気になれば、壁だって破壊する。
「はあ…」
思い人が居たら居たで頭がおかしくなるが、居ないと居ないで恋する乙女のようなムーヴをしてくるのが問題である。
秋葉原を代表とするメイド喫茶の店員とはいえど、殆どの者はリアルが充実している彼氏持ちであり、倦怠期が発生するくらいに付き合いは長い。
メイド長のような、恋に恋するような甘酸っぱい恋バナは、正直面白い話題だ。
ただ、この勝負には勝ち目がない。
二十◯歳の女性が、高校生に恋しているって言われても、メイド仲間からは助言は出来ないし、そもそも相手には完璧超人なお嬢様がいる。
話題を振るべきか否か。
広々としたバックヤード。
そこには二人のメイドが居た。
(そして何故に、メイド長と同じ時間に休憩してしまったのか)
職場の先輩と同じ部屋で二人っきりだと、話すべきか、放っておくべきか悩むものだった。
彼女の名前はダージリン。
紅茶の名から付けたメイド名だ。
口数が少なく凛とした長身の女性であり、人見知りなのがキャラ付けみたいな扱いをされているので、不器用な人間には有り難かった。
素の自分を受け入れてくれるこの喫茶店が好きで、メイド長に次いで長く働いていた。
ダージリンは静かに休憩しつつ、詩集を手に取りゆっくりと読んでいた。
シルフィードでは、罰ゲーム感覚で愛の唄を読む決まりが出来て、最初は嫌々だったが、長く続けていくとメイドもご主人様も気にすることなく詩を読む時間を楽しんでいる。
大人になると興味がないものを知るのは難しく、そんな自分にきっかけを与えてくれるのは、いつだってメイド長だった。
彼女からすれば喫茶店をマンネリ化させないための手段だったのだろうが、詩を通して人との繋がりが広がり、他のメイド達も楽しそうにしている。
好きなものを好きと素直に言うのは、案外難しいことに気付かせてくれる。
仕事中のメイドが、ドアをノックして入ってくる。
「メイド長、ハジメご主人様がお帰りになられました」
「ありがとうございます。直ぐに向かいますので、お伝え下さい」
「かしこまりました」
メイド長の休憩時間はまだあるはずだった。
だが、早く向かうために身なりを整えて、メイド服にホコリ一つもないかチェックしていた。
「ダージリン。ごめんなさいね。また今度お話しましょう」
ご主人様が戻ってきて嬉しそうにしている彼女を見送りながら。
ダージリンは微かに笑うのであった。
少しだけ、会話が聞こえてきた。
「お帰りなさいませ。ご主人様」
メイド喫茶シルフィード。
秋葉原にある本格的な紅茶や珈琲を楽しむことが出来る喫茶店である。
メイド喫茶として銘打ってはいるが、女性と会話を楽しんだりゲームをするようなお店ではなく、純粋に疲れた身体や心を癒す憩いの場として活用するご主人様やお嬢様が多い。
数十種類の紅茶や選び抜かれた珈琲は、季節に合わせてラインナップを変え、主がいつ戻って来ても最高な空間を提供出来るのだった。
メイドの本質とは、主の為に尽くし、研鑽を積み重ねて、何時如何なる時でも上質な空間を提供しなくてはならない。
シルフィードのメイド長は、ごく一部にクレイジーサイコメイド長とか言われているものの、そんな状態は一時だけだ。
基本的にはシルフィードを代表とするメイド長として活躍してくれているし、皆に好かれる人付き合いの良さがある。
しかしながら、好きな男の子がいるとそうもいかないらしい。
好きな男の子に毎回いたずらしたり。
知能指数がチンパンジーと同等だったり。
恋の病が突然変異して、バイオのB.O.W.化するようなものだ。
恋する追跡者だ。
その気になれば、壁だって破壊する。
「はあ…」
思い人が居たら居たで頭がおかしくなるが、居ないと居ないで恋する乙女のようなムーヴをしてくるのが問題である。
秋葉原を代表とするメイド喫茶の店員とはいえど、殆どの者はリアルが充実している彼氏持ちであり、倦怠期が発生するくらいに付き合いは長い。
メイド長のような、恋に恋するような甘酸っぱい恋バナは、正直面白い話題だ。
ただ、この勝負には勝ち目がない。
二十◯歳の女性が、高校生に恋しているって言われても、メイド仲間からは助言は出来ないし、そもそも相手には完璧超人なお嬢様がいる。
話題を振るべきか否か。
広々としたバックヤード。
そこには二人のメイドが居た。
(そして何故に、メイド長と同じ時間に休憩してしまったのか)
職場の先輩と同じ部屋で二人っきりだと、話すべきか、放っておくべきか悩むものだった。
彼女の名前はダージリン。
紅茶の名から付けたメイド名だ。
口数が少なく凛とした長身の女性であり、人見知りなのがキャラ付けみたいな扱いをされているので、不器用な人間には有り難かった。
素の自分を受け入れてくれるこの喫茶店が好きで、メイド長に次いで長く働いていた。
ダージリンは静かに休憩しつつ、詩集を手に取りゆっくりと読んでいた。
シルフィードでは、罰ゲーム感覚で愛の唄を読む決まりが出来て、最初は嫌々だったが、長く続けていくとメイドもご主人様も気にすることなく詩を読む時間を楽しんでいる。
大人になると興味がないものを知るのは難しく、そんな自分にきっかけを与えてくれるのは、いつだってメイド長だった。
彼女からすれば喫茶店をマンネリ化させないための手段だったのだろうが、詩を通して人との繋がりが広がり、他のメイド達も楽しそうにしている。
好きなものを好きと素直に言うのは、案外難しいことに気付かせてくれる。
仕事中のメイドが、ドアをノックして入ってくる。
「メイド長、ハジメご主人様がお帰りになられました」
「ありがとうございます。直ぐに向かいますので、お伝え下さい」
「かしこまりました」
メイド長の休憩時間はまだあるはずだった。
だが、早く向かうために身なりを整えて、メイド服にホコリ一つもないかチェックしていた。
「ダージリン。ごめんなさいね。また今度お話しましょう」
ご主人様が戻ってきて嬉しそうにしている彼女を見送りながら。
ダージリンは微かに笑うのであった。
少しだけ、会話が聞こえてきた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる