8 / 111
第5.1話・無駄話
しおりを挟む
「私、メイド長なのですよ」
「無駄話っすね」
完
「いやいや、最近私の扱いが酷くなっていませんでしょうか?」
「放課後の僅かな時間で、わざわざ秋葉原にあるメイド喫茶まで足を運んで、下らない話を聞かされながら金まで払っている俺達の心境も考えてください」
「ツッコミが、秀逸ッーー!」
いや真面目に。
メイドとしての責務くらい果たして欲しいものであった。
というのか、他のメイドさんがこの席に来ないのは、お前のせいだったのか。
何で逆指名しているんだよ。
「私なベルガモットティーください」
「では、アールグレイで出しますね」
白鷺に至っては、動じずに注文している。
こんなものに慣れたくはないが、白鷺みたく軽く流すべきなのだろう。
「俺はホットコーヒーでお願いします」
「そういえば新しい豆が入ってきたので、そちらにしますか?」
「あんまり苦くないなら」
「ご主人様、苦いのが苦手ならなんでコーヒー飲むんですか?」
「……なんで、毎回突っ掛かってくるのかねぇ。喋りながら飲むんだから、苦くて喉に残るのが嫌なんだよ。コーヒーは普通に好きだよ」
落ち着いた空間で読書しながらコーヒーを楽しむならまだしも、うるさい人がいるしな。
「いつもコーヒーを飲んでいるが、美味しいのか?」
「白鷺にはまだ早いかな?」
「そうか……」
残念そうにしている。
「ご用意致しますので、暫しお待ち下さい」
サラッと詩集を出してくる。
あの一件から、シルフィードでは詩を読み上げるのが流行っていて、男女関係なく一人一回がルールである。
メイド喫茶だからこそ、寛げる良質な空間を提供し、お店のコンセプトを大切にするのは分かるが、男同士だと罰ゲームでしかないのだ。
メイドさんが読むならはにかんでいる姿も可愛いが、野郎が恥ずかしそうに詩を口にするとか呪詛レベルの特級呪物だ。
特に詩だと、気に入ったものを選んで口に出すため、そもそもが恥ずかしい。
自分の趣味が出てしまう。
「うむ。先に決めていいぞ」
「愛の唄とか苦手なんだけどな。キャラじゃないし」
パラパラとめくりながら、探していく。
せめて読むなら好きなものにしたい。
適当に選ぶとメイドに文句言われそうだしな。
「ご主人様、お嬢様、お待たせしました」
その間にティーセットを運んでくる。
これがいつもの光景だった。
「無駄話っすね」
完
「いやいや、最近私の扱いが酷くなっていませんでしょうか?」
「放課後の僅かな時間で、わざわざ秋葉原にあるメイド喫茶まで足を運んで、下らない話を聞かされながら金まで払っている俺達の心境も考えてください」
「ツッコミが、秀逸ッーー!」
いや真面目に。
メイドとしての責務くらい果たして欲しいものであった。
というのか、他のメイドさんがこの席に来ないのは、お前のせいだったのか。
何で逆指名しているんだよ。
「私なベルガモットティーください」
「では、アールグレイで出しますね」
白鷺に至っては、動じずに注文している。
こんなものに慣れたくはないが、白鷺みたく軽く流すべきなのだろう。
「俺はホットコーヒーでお願いします」
「そういえば新しい豆が入ってきたので、そちらにしますか?」
「あんまり苦くないなら」
「ご主人様、苦いのが苦手ならなんでコーヒー飲むんですか?」
「……なんで、毎回突っ掛かってくるのかねぇ。喋りながら飲むんだから、苦くて喉に残るのが嫌なんだよ。コーヒーは普通に好きだよ」
落ち着いた空間で読書しながらコーヒーを楽しむならまだしも、うるさい人がいるしな。
「いつもコーヒーを飲んでいるが、美味しいのか?」
「白鷺にはまだ早いかな?」
「そうか……」
残念そうにしている。
「ご用意致しますので、暫しお待ち下さい」
サラッと詩集を出してくる。
あの一件から、シルフィードでは詩を読み上げるのが流行っていて、男女関係なく一人一回がルールである。
メイド喫茶だからこそ、寛げる良質な空間を提供し、お店のコンセプトを大切にするのは分かるが、男同士だと罰ゲームでしかないのだ。
メイドさんが読むならはにかんでいる姿も可愛いが、野郎が恥ずかしそうに詩を口にするとか呪詛レベルの特級呪物だ。
特に詩だと、気に入ったものを選んで口に出すため、そもそもが恥ずかしい。
自分の趣味が出てしまう。
「うむ。先に決めていいぞ」
「愛の唄とか苦手なんだけどな。キャラじゃないし」
パラパラとめくりながら、探していく。
せめて読むなら好きなものにしたい。
適当に選ぶとメイドに文句言われそうだしな。
「ご主人様、お嬢様、お待たせしました」
その間にティーセットを運んでくる。
これがいつもの光景だった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
Home, Sweet Home
茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。
亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。
☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13


【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる