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エレンはローズを連れて、再びルミアの元を訪れる。
「エレン様、態々ご足労戴かなくても、私から向かいましたのに!」
「ありがとう。でも、気にしないで頂戴。貴女にはもっと気にするべきことがあるのだから」
「……はい?」
1年前、もしも本当に事件が起こっておらず、人が死んでいないとしたら。
それが事実なら、一体何をルミアは見間違えたのか。
「答えは見間違いではない。その死体とは、貴女なのですから」
「……はい?」
「被害者の少女は犯人の少女に殺された。その後、犯人の少女は被害者の身体を奪った。そしてその条件が、誰かに見られる事」
「………」
「ただ身体を奪うだけならばわざわざ図書室に死体があると報告する必要が無い。にも拘らずしたのは、誰かの目が必要だったと言う事です。違いますか?」
「……続けて下さい」
「私達の誘拐事件。事件は起きて居なくて、実際には私達は幻術の中にかかっていた」
「それなら魔力痕跡があるのでは?」
「微弱なので見付かりませんでした。ただ、その切っ掛けはこれです」
そう言って私はルミアにメモを2枚見せる。
1枚は『貴女が過去に殺した少女の秘密を知っている。放課後、王立記念公園に一人で来てください』と書かれたメモ。
これに触れることが発動条件。回し読みしてしまったから、ルミアやローズも呼ばれてしまった。
そしてこのメモには2つの証拠があった。
それがルミアが持つもう1枚のメモ。昨日ルミアから渡された連絡先の書かれているメモである。
「このメモと同じ指紋、同じ筆跡であることが分かりました。言い逃れ、出来ませんわよね?」
「エレン様、私は一体何を言われようとしているのでしょうか?」
「ルミア・フェーズ。貴女が1年前、スフィアに殺害された少女です」
スフィアは当時平民に対しての素行が悪かったため、ヒット数が多い。しかし、その当時その素行が影響してもみ消した件数は途端に少なくなる。
その中にある名前の中で、スフィアが殺害した少女についてもみ消しをした案件は一件。
それがルミア・フェーズの身体の中に入っている少女の正体だ。
「そうですわね? アリッサ・ラズライトさん?」
ルミアは目を見開く。そして、そのまま口を手で覆う。
エレンはルミアの顎に手を当てて、その顔を覗き込む。
「あの日の調教じゃ、足りなかったか。本当にバカな女だわ、エレン。何も知らなければ、平和に暮らせたのに」
「条件付きの幻影魔法の使い手、アリッサ・ラズライト。貴女を殺人・誘拐・不敬・傷害・強姦の罪により、捕縛致します」
「そのメモに触ったら起動すると分かって私の目の前で触るなんて、本当にバカな……魔法が発動しない……?」
「でしょうね。このメモ、ただの書き写しですもの。メモに触れることが起動条件なのに、そのメモを敵の前で触れるのはバカ、ですわね?」
ルミアはエレンに摑みかかろうとするが、エレンの周りで風が逆巻き、ルミアを弾き飛ばす。
まるで風に守られているような状況にルミアは目を見開く。
そして、エレンはルミアに向けて笑う。
公爵令嬢としての笑いではない。それは、獲物を追い詰めた狩人の笑みだった。
捕らえられた彼女は公爵邸の地下牢に魔力封じの状態で捕らえられる。
そのお陰か、スフィア、エレン、ローズの腹部から奴隷紋も同時に本当の意味で消え去った。
「2年前のあの日、なんとかして生き延びた私はスフィア令嬢を殺害する計画を立てた。別人になる魔法でそのまま平和に暮らしても良かったけど、あの女の気紛れで新しい人生も滅茶苦茶にされると思った。だから、あの女に恐怖を植え付けられればそれで良かった」
「けれども実際は私やローズも付いて来てしまった。だから、貴女はスフィアには拷問をし、私とローズにはそれぞれ自尊心を壊す真似をしたのね」
「えぇ。そうすれば、貴族である貴方達も大人しくなると思ったから。まさか、1年越しに真実を突き止めて、こうして処刑台に送られることになるとは思わなかったけれども」
殺人・誘拐・不敬・傷害・強姦の罪とも揃えば処刑は免れない。
折角生き延びたアリッサは、生活の安寧のため行った行為で結局死地に送られることになる。
「どうすれば、良かったのかしらね……。ねぇ、エレン公爵令嬢?」
「……」
「私は、貴族に復讐したはずなのに、逆に私が裁かれるなんてね。滑稽だわ」
「アリッサ・ラズライト。貴女には死刑が言い渡されました。何か、言い残すことはありますか?」
「無いわ」
「そう。では、最期に一つ、貴女にお願いがあります」
エレンは処刑台に上ったアリッサを見送る。
最後に見た彼女の目は、自分の犯した罪に対する後悔の色など全くなかった。
処刑台に登ってから、彼女はエレンに呟く。
それを聞いて、エレンは寂しそうに笑う。
彼女のしたことは許されないことだった。けれども、それでも彼女が自らの犯した罪と向き合おうとしていたことだけは事実だった。
それが貴族に復讐をしようとした彼女に与えられた罰。
その最期は、1年前エレンが見た光景と同じ、己の命を以て罪を償う光景だった。
17歳の生涯。アリッサは裸にされて磔にされると、民衆に石を投げられる。
その時、エレンの腹部には奴隷紋が浮かび上がる。
(最後に一つ、貴女にお願いがあります。性奴隷の呪いを掛けて下さい。死んだら解呪されないとのこと、貴女の罪を私が生涯背負います)
その痛みに耐えながら、アリッサは最期まで笑いながら死んでいった。
(――本当にばかなやつ。その罪を生涯背負う? そんなこと、させるわけないじゃない……)
本当に息を引き取る直前に、アリッサは呪いを解呪して、死んでも尚、石をぶつけられ続けて17歳の少女の処刑が完了するのだった。
「エレン様、態々ご足労戴かなくても、私から向かいましたのに!」
「ありがとう。でも、気にしないで頂戴。貴女にはもっと気にするべきことがあるのだから」
「……はい?」
1年前、もしも本当に事件が起こっておらず、人が死んでいないとしたら。
それが事実なら、一体何をルミアは見間違えたのか。
「答えは見間違いではない。その死体とは、貴女なのですから」
「……はい?」
「被害者の少女は犯人の少女に殺された。その後、犯人の少女は被害者の身体を奪った。そしてその条件が、誰かに見られる事」
「………」
「ただ身体を奪うだけならばわざわざ図書室に死体があると報告する必要が無い。にも拘らずしたのは、誰かの目が必要だったと言う事です。違いますか?」
「……続けて下さい」
「私達の誘拐事件。事件は起きて居なくて、実際には私達は幻術の中にかかっていた」
「それなら魔力痕跡があるのでは?」
「微弱なので見付かりませんでした。ただ、その切っ掛けはこれです」
そう言って私はルミアにメモを2枚見せる。
1枚は『貴女が過去に殺した少女の秘密を知っている。放課後、王立記念公園に一人で来てください』と書かれたメモ。
これに触れることが発動条件。回し読みしてしまったから、ルミアやローズも呼ばれてしまった。
そしてこのメモには2つの証拠があった。
それがルミアが持つもう1枚のメモ。昨日ルミアから渡された連絡先の書かれているメモである。
「このメモと同じ指紋、同じ筆跡であることが分かりました。言い逃れ、出来ませんわよね?」
「エレン様、私は一体何を言われようとしているのでしょうか?」
「ルミア・フェーズ。貴女が1年前、スフィアに殺害された少女です」
スフィアは当時平民に対しての素行が悪かったため、ヒット数が多い。しかし、その当時その素行が影響してもみ消した件数は途端に少なくなる。
その中にある名前の中で、スフィアが殺害した少女についてもみ消しをした案件は一件。
それがルミア・フェーズの身体の中に入っている少女の正体だ。
「そうですわね? アリッサ・ラズライトさん?」
ルミアは目を見開く。そして、そのまま口を手で覆う。
エレンはルミアの顎に手を当てて、その顔を覗き込む。
「あの日の調教じゃ、足りなかったか。本当にバカな女だわ、エレン。何も知らなければ、平和に暮らせたのに」
「条件付きの幻影魔法の使い手、アリッサ・ラズライト。貴女を殺人・誘拐・不敬・傷害・強姦の罪により、捕縛致します」
「そのメモに触ったら起動すると分かって私の目の前で触るなんて、本当にバカな……魔法が発動しない……?」
「でしょうね。このメモ、ただの書き写しですもの。メモに触れることが起動条件なのに、そのメモを敵の前で触れるのはバカ、ですわね?」
ルミアはエレンに摑みかかろうとするが、エレンの周りで風が逆巻き、ルミアを弾き飛ばす。
まるで風に守られているような状況にルミアは目を見開く。
そして、エレンはルミアに向けて笑う。
公爵令嬢としての笑いではない。それは、獲物を追い詰めた狩人の笑みだった。
捕らえられた彼女は公爵邸の地下牢に魔力封じの状態で捕らえられる。
そのお陰か、スフィア、エレン、ローズの腹部から奴隷紋も同時に本当の意味で消え去った。
「2年前のあの日、なんとかして生き延びた私はスフィア令嬢を殺害する計画を立てた。別人になる魔法でそのまま平和に暮らしても良かったけど、あの女の気紛れで新しい人生も滅茶苦茶にされると思った。だから、あの女に恐怖を植え付けられればそれで良かった」
「けれども実際は私やローズも付いて来てしまった。だから、貴女はスフィアには拷問をし、私とローズにはそれぞれ自尊心を壊す真似をしたのね」
「えぇ。そうすれば、貴族である貴方達も大人しくなると思ったから。まさか、1年越しに真実を突き止めて、こうして処刑台に送られることになるとは思わなかったけれども」
殺人・誘拐・不敬・傷害・強姦の罪とも揃えば処刑は免れない。
折角生き延びたアリッサは、生活の安寧のため行った行為で結局死地に送られることになる。
「どうすれば、良かったのかしらね……。ねぇ、エレン公爵令嬢?」
「……」
「私は、貴族に復讐したはずなのに、逆に私が裁かれるなんてね。滑稽だわ」
「アリッサ・ラズライト。貴女には死刑が言い渡されました。何か、言い残すことはありますか?」
「無いわ」
「そう。では、最期に一つ、貴女にお願いがあります」
エレンは処刑台に上ったアリッサを見送る。
最後に見た彼女の目は、自分の犯した罪に対する後悔の色など全くなかった。
処刑台に登ってから、彼女はエレンに呟く。
それを聞いて、エレンは寂しそうに笑う。
彼女のしたことは許されないことだった。けれども、それでも彼女が自らの犯した罪と向き合おうとしていたことだけは事実だった。
それが貴族に復讐をしようとした彼女に与えられた罰。
その最期は、1年前エレンが見た光景と同じ、己の命を以て罪を償う光景だった。
17歳の生涯。アリッサは裸にされて磔にされると、民衆に石を投げられる。
その時、エレンの腹部には奴隷紋が浮かび上がる。
(最後に一つ、貴女にお願いがあります。性奴隷の呪いを掛けて下さい。死んだら解呪されないとのこと、貴女の罪を私が生涯背負います)
その痛みに耐えながら、アリッサは最期まで笑いながら死んでいった。
(――本当にばかなやつ。その罪を生涯背負う? そんなこと、させるわけないじゃない……)
本当に息を引き取る直前に、アリッサは呪いを解呪して、死んでも尚、石をぶつけられ続けて17歳の少女の処刑が完了するのだった。
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