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第2話:囚われの令嬢
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放課後、案の定伯爵令嬢は金髪公爵令嬢と赤髪伯爵令嬢と共にやって来る。
あの伯爵令嬢は、どうやら金髪公爵令嬢の取り巻きだったようだ。
「エレン様まで私事にお付き合い戴く必要はありませんでしたのに」
「何を言ってるのスフィア。貴女への冒涜は私の冒涜。誰に喧嘩を売ったのかを分からせるべきですわ」
「ま、どんなやつが来ても、エレン様もスフィアも、このアタシがぼこぼこにしてやるから、安心しな!」
「ローズ、伯爵令嬢なのだから、言葉遣いは気を付けなさいといつも言っているでしょう?」
「悪い、エレン様。けど、こっちの方が楽なんですわ」
呑気な話を3人がしている。これから自分達の身に何が起こるかも分からずに。
やがて、伯爵令嬢達は、私が指定した王立記念公園へとやって来た。
私は木陰から、3人の前に姿を現す。
すると、金髪公爵令嬢が敵意剥き出しの表情で私を睨み付けた。
やはり彼女は貴族なのだろう、伯爵令嬢と違って表情を隠すのが下手だ。まあ、私も人のことを言えないけど。
「貴女が私のスフィアを冒涜した愚民ですの?」
「そうだ、と言ったら?」
「随分度胸あるじゃねぇか。入学主席魔法使いであるエレン様、その側近で次席魔法使いであるスフィア、そして第三席魔法使いにして主席剣闘士たる私ローズを前に、1人でやって来たんだからな。褒めてやるよ」
赤髪伯爵令嬢がそう言うと、彼女は何処からともなく長剣を取り出した。
しかし、その長剣は刃が無く、どう見ても鈍器にしか見えなかった。
それは、彼女が主席魔法使いにして主席剣士である事に疑いを持たせるものだった。
「ローズ。責任は私が取ります。殺しても構いませんわ」
「あいよ」
ローズが前に出る。構えはフェンシングのようだ。
……それにしても、頭が悪すぎて私は呆れてしまう。
「私が、何の備えも無しに来ると本気で思っているなら、お目出度い頭をしている」
「……あん?」
ローズもようやく違和感に気付いたのだろう、表情を強張らせた。
そう、私は予め、王立記念公園の木々に魔法をかけて、至る所に罠を仕掛けておいたのだ。
ローズが剣を振るい、魔法を行使するよりも早く、私は無数の枝を出現させ、彼女を拘束した。
すると、今度はエレン公爵令嬢が杖を構えて魔法を行使する。
彼女の杖から、無数の氷柱が私に向かって発射される。私は即座にそれを避けた。
公爵令嬢の魔法は、決して弱いものでは無かった。寧ろ、学園でもトップクラスの実力を持つ魔法使いだろう。しかし、私には通用しないのだ。
エレン公爵令嬢が再度魔法を行使しようとするが、それよりも私は自身の魔法で彼女の杖を弾き飛ばす。
勿論、素手による魔法を無詠唱でだ。
「なっ!? 魔法使いは詠唱と杖が必須なのに、どちらも持たずに魔法を行使した!? いえ、誰か隠れているのですわね!」
「正真正銘私は一人だよ、バカ貴族娘」
「バカ貴族……、今、私のことをバカと言いましたわね!」
「そうだよ、頭が悪い娘。貴女もスフィア伯爵令嬢も、そしてローズ伯爵令嬢も、のこのこと相手のホームにやって来た。バカなのはどちらかしら?」
私は、エレン公爵令嬢の腹部を思い切り蹴り飛ばした。公爵令嬢は、ぐふっ! と呻きながら蹲る。
そう、これこそが私の復讐。彼女が私にした仕打ちだ。
「3人がかりでこの様か、なんだかガッカリ」
「何を言いますの。私達は、決して負けたわけじゃありませんわ」
「そう、エレン様は公爵令嬢で主席魔法使いなんだ。負けなわけがない!」
エレン公爵令嬢とローズ伯爵令嬢が立ち上がると、私と対峙する。
そして、3人がかりで私を取り囲んだ。私はやれやれと肩を竦くめると、あからさまに周囲を見渡すようにキョロキョロする。
「な、なんですの……?」
「……静かすぎる。スフィア、エレン様、この時間で誰も居ないの、おかしくありませんか?」
一番脳筋そうなのに、一番洞察力と頭の回転が速いローズ。
彼女が周囲を見渡し、違和感に気が付いたようだ。
そして、エレン公爵令嬢も遅れて気が付いたのか、顔が真っ青になる。
そう、この公園は王立記念公園で、たくさんの人が訪れる場所である。そんな場所で誰も居ないのはおかしいのだ。
私は大袈裟に肩を竦めて見せた。
「本当におバカさんな令嬢達。まぁ、だから簡単に誘い込めたし、簡単に捕らえることも出来るのだけど」
「っ、エレン様! コイツ、何かしてます!」
「ええ、分かっていますわ。ローズ、急いでこいつを拘束しますわよ!」
しかし、時既に遅しである。
3人がかりで私に攻撃を仕掛けるも、私はそれを全て回避する。
3人は何度も攻撃を繰り返すが、掠りすらしない。
スフィアとエレンは息が上がる。魔法使いは元来体力が無い。
特に荒事はローズが引き受けていることが多かったのだろう。そのローズは冷や汗こそ浮かべど、まだ余裕がある。
「お仕舞にしましょうか」
私は彼女達の足元に大きな穴を作ると、そのまま地下空間へと3人を落下させる。
穴の中に私も入り穴が塞がると、公園は再び人で賑わうのだった。
あの伯爵令嬢は、どうやら金髪公爵令嬢の取り巻きだったようだ。
「エレン様まで私事にお付き合い戴く必要はありませんでしたのに」
「何を言ってるのスフィア。貴女への冒涜は私の冒涜。誰に喧嘩を売ったのかを分からせるべきですわ」
「ま、どんなやつが来ても、エレン様もスフィアも、このアタシがぼこぼこにしてやるから、安心しな!」
「ローズ、伯爵令嬢なのだから、言葉遣いは気を付けなさいといつも言っているでしょう?」
「悪い、エレン様。けど、こっちの方が楽なんですわ」
呑気な話を3人がしている。これから自分達の身に何が起こるかも分からずに。
やがて、伯爵令嬢達は、私が指定した王立記念公園へとやって来た。
私は木陰から、3人の前に姿を現す。
すると、金髪公爵令嬢が敵意剥き出しの表情で私を睨み付けた。
やはり彼女は貴族なのだろう、伯爵令嬢と違って表情を隠すのが下手だ。まあ、私も人のことを言えないけど。
「貴女が私のスフィアを冒涜した愚民ですの?」
「そうだ、と言ったら?」
「随分度胸あるじゃねぇか。入学主席魔法使いであるエレン様、その側近で次席魔法使いであるスフィア、そして第三席魔法使いにして主席剣闘士たる私ローズを前に、1人でやって来たんだからな。褒めてやるよ」
赤髪伯爵令嬢がそう言うと、彼女は何処からともなく長剣を取り出した。
しかし、その長剣は刃が無く、どう見ても鈍器にしか見えなかった。
それは、彼女が主席魔法使いにして主席剣士である事に疑いを持たせるものだった。
「ローズ。責任は私が取ります。殺しても構いませんわ」
「あいよ」
ローズが前に出る。構えはフェンシングのようだ。
……それにしても、頭が悪すぎて私は呆れてしまう。
「私が、何の備えも無しに来ると本気で思っているなら、お目出度い頭をしている」
「……あん?」
ローズもようやく違和感に気付いたのだろう、表情を強張らせた。
そう、私は予め、王立記念公園の木々に魔法をかけて、至る所に罠を仕掛けておいたのだ。
ローズが剣を振るい、魔法を行使するよりも早く、私は無数の枝を出現させ、彼女を拘束した。
すると、今度はエレン公爵令嬢が杖を構えて魔法を行使する。
彼女の杖から、無数の氷柱が私に向かって発射される。私は即座にそれを避けた。
公爵令嬢の魔法は、決して弱いものでは無かった。寧ろ、学園でもトップクラスの実力を持つ魔法使いだろう。しかし、私には通用しないのだ。
エレン公爵令嬢が再度魔法を行使しようとするが、それよりも私は自身の魔法で彼女の杖を弾き飛ばす。
勿論、素手による魔法を無詠唱でだ。
「なっ!? 魔法使いは詠唱と杖が必須なのに、どちらも持たずに魔法を行使した!? いえ、誰か隠れているのですわね!」
「正真正銘私は一人だよ、バカ貴族娘」
「バカ貴族……、今、私のことをバカと言いましたわね!」
「そうだよ、頭が悪い娘。貴女もスフィア伯爵令嬢も、そしてローズ伯爵令嬢も、のこのこと相手のホームにやって来た。バカなのはどちらかしら?」
私は、エレン公爵令嬢の腹部を思い切り蹴り飛ばした。公爵令嬢は、ぐふっ! と呻きながら蹲る。
そう、これこそが私の復讐。彼女が私にした仕打ちだ。
「3人がかりでこの様か、なんだかガッカリ」
「何を言いますの。私達は、決して負けたわけじゃありませんわ」
「そう、エレン様は公爵令嬢で主席魔法使いなんだ。負けなわけがない!」
エレン公爵令嬢とローズ伯爵令嬢が立ち上がると、私と対峙する。
そして、3人がかりで私を取り囲んだ。私はやれやれと肩を竦くめると、あからさまに周囲を見渡すようにキョロキョロする。
「な、なんですの……?」
「……静かすぎる。スフィア、エレン様、この時間で誰も居ないの、おかしくありませんか?」
一番脳筋そうなのに、一番洞察力と頭の回転が速いローズ。
彼女が周囲を見渡し、違和感に気が付いたようだ。
そして、エレン公爵令嬢も遅れて気が付いたのか、顔が真っ青になる。
そう、この公園は王立記念公園で、たくさんの人が訪れる場所である。そんな場所で誰も居ないのはおかしいのだ。
私は大袈裟に肩を竦めて見せた。
「本当におバカさんな令嬢達。まぁ、だから簡単に誘い込めたし、簡単に捕らえることも出来るのだけど」
「っ、エレン様! コイツ、何かしてます!」
「ええ、分かっていますわ。ローズ、急いでこいつを拘束しますわよ!」
しかし、時既に遅しである。
3人がかりで私に攻撃を仕掛けるも、私はそれを全て回避する。
3人は何度も攻撃を繰り返すが、掠りすらしない。
スフィアとエレンは息が上がる。魔法使いは元来体力が無い。
特に荒事はローズが引き受けていることが多かったのだろう。そのローズは冷や汗こそ浮かべど、まだ余裕がある。
「お仕舞にしましょうか」
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