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第4話 盗人猛々しくも

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他国から国に調査のためスパイが送り込まれると言う情報が入っていた。
先の暗殺を目的としている訳ではなく、まだた、世界最高峰の魔王の治める国であると言う所からもかなり実力の高い冒険者が送り込まれてくるらしい。
魔王ガルムは、その密偵について警戒をしていたが、来るのはどうやら冒険者の中でも職業がシーフ(盗人)の双子の冒険者のようだった。
既に国の情報を得ているのか、正面から堂々と偽装の通行証と身分証明書を見せて、旅行者の風貌で入ってくる。
入ってからは二手に別れて情報を収集している。

「・・・・・・だが、我の能力までは何重にもプロテクトが掛かっている以上早々突破は出来まい。そもそも、一国民から得られる情報など知れている」
「いかがいたしますか?」
「泳がせておけ」

そう言ってガルムは継続して水晶を見守った。



少女達の任務は危険を想定して一泊二日で組んでいた。
得られる情報は表面的なものしかないが、それでも持ち出すには機密レベルを突破する覚悟が必要だった。
だが彼女達にとって機密レベルを突破出来ることが最低条件だ。
だから、細心の注意を払ってはいるが、今回の任務も町の情報を得るだけでSランクに認定されている任務は美味しい以上の感想を持っていなかった。
帰りもまた通行証と身分証明書を持って門を出ようとしたところ、兵士が何やら待たせ始める。
手元にある機密情報は暗号化されている上に、何重にもプロテクトされて偽装されているので、一兵士に気付かれることは絶対にあり得ない。
そして不測の事態に対しても堂々としているため、彼女達に隙は無かった。
無論ガルム相手に種明かしされた直後に何度やったところで結末は同じところしか辿れないのだが。

「ねぇ、お姉ちゃん……なんか、様子……」
「問題無いわよ。仮に……本当に仮に、万一バレたとしても、この情報の価値は、彼等に分からない」
「そう……だね」
「お待たせしました。少しお話をお伺い出来ますでしょうか、この
「「え?」」

2人は顔を見合わせる。
確かにそれは盗品だった。
但し、盗んだはあるが、盗んだが思い出せない。

「捕らえろ!」

二人は訳が分からないままに後ろ手に拘束されて、馬車の荷台に載せられる。
逃げようと思えば逃げられる、そう思っていた二人は、しかし魔法が使えず拘束が解けないことに気付く。
そして、馬を引いてる人物を見て姉妹は絶望する。
魔王軍双剣の一人、レン。
2桁の億超である賞金首である。魔法が使えない今逃れられる相手ではない。
そして、向かう先は詰所などではなく魔王城である所からも、今自分達の正体がバレている事を遅ればせながら察した。

二人はメイドに連れられると、服を襤褸衣に着せ替えられる。
膝上のワンピース状で、袖付きの物ではあるが、所々解れて裾とかは敗れている。
両足首を鎖で繋がれ、歩くことは出来るが満足に走ることが出来ない。
そして、二人がつれられて入った玉座には王が、即ち世界最強にして最凶の魔王が座っていた。

「あ、あの、あぁ……」
「やぁ……いやぁ……」
「ふむ、恐怖で声が出ないか。まぁ、耳だけ聞こえれば良い」

心臓を掴まれた感覚、首に刃物を当てられた感覚に、二人は萎縮する。
だが、怖いもの知らずと謳われていたが、それでも一歩前に出る。

「も、申し訳、ありません……。私達にとっては、それ程大きな、大変な物だと、気付きませんでした……。どうか、お慈悲を……。お許し頂けるのであれば、その、何でも、します……」
「……公開処刑を行う。明日、其のつもりで民に声を掛けよ。それと、二人は別々の牢へ入れて置け」

震える声で魔王に許しを乞うたが、問答無用で刑を言い渡される。
そして、最期の一夜も姉妹は一緒に居ることを許されなかった。



翌朝までは何事も無く、二人はそれぞれ首輪を引かれて広場へと歩かされる。
町民達からの哀れな目、それと興味本位の目が半々になっていた。
特に男達は下卑た笑みを浮かべており、ただ首を刎ねられるだけでは済まないことを二人は悟る。

――辱められる。

ただ盗みを働いたことの重大さ、或いはこの町での大なり小なり「罪」と言う存在の絶対的な罰。
門を超えた先は、ただの町ではない。そこにあるのは、絶対的な罪に対する罰のある街だ。

広場に最初からそれだけを目的としたかのように、不自然に広い演説台が聳え立つ。
二人は重い足取りの中、無理矢理引かれた首輪に繋がれた鎖に連れて行かれる。
そして立ち上がった先に広がるのは、町の人々との近い距離感とその圧倒的な人数。
その中で二人は、簡易的に作られた檻の中に閉じ込められる。
周囲を檻に囲われて、ただ一つの出入り口にはカギがかけられ、彼女達は完全に見せしめ状態になっていた。

「聞け皆の者。この者達は、大罪を犯した。それは、この黄玉の指輪である。この黄玉の指輪は、我が作成した指輪であり、この国の法では国外への持ち出しを禁止している」

盗んだだけでは大罪ではない。
だが、魔王直々に作り、その魔王が国外へ持ち出しを禁じているものを、盗んで持ち出そうとした罪はこの国では万死に値する。
そしてそれを実行した犯人は、例え未成年の少女で有っても償わなくてはならなかった。
この国の「公開処刑」によって。

ただ、この国の公開処刑は文字通りの意味を成さない。
見せしめに大量虐殺をしている魔王ではあるが、それ以来血は流れていない。
ではここで言う公開処刑は何を表すか、それはこの国の民にしか知られていない情報である。

「罪人達よ、先程許されるならばなんでもすると言ったな?」
「は……はい……」
「その言葉に嘘偽りは無いな?」
「ありません……!」
「では、誓約の首輪付けよ」
「「!!」」

誓約の首輪。自らが誓ったことを強制的に実行させる首輪。
この首輪は、自ら誓ったことを強制的に実行させ、それを破れば奴隷の首輪にも変貌する。
二人は足元に投げられた首輪を手に取り、お互いに顔を見合わせる。
「何でもする」とは言ったが、その範囲が何処までかは分からない。
特に相手は最強にして最恐の魔王ガルム、何をさせられるか分かったものでは無かった。
だが、殺されるよりはマシと思い至ったのか、自らの首にその首輪をはめる。

「それでは、これより公開処刑を行います。まず始めに、誓いのキスをお願いします」
「誓いのキス……?」
「我々に、何でもするとキスで誓うのです」

司会を務めるレンの言葉に、二人は頬を染めながらゆっくりとその手を取る。
そして、視線を反らして恥じる妹の頬に手を当てた姉は、そのまま唇を妹に当てる。
舌が絡み合う。お互いの吐息が触れ合い、血の繋がった姉妹なのに、欲してしまう。
いつもオドオドとしているが、それでもここぞと言う時には力強い芯のある妹。
だからこそ、いつも姉である彼女自身が前衛として前に立ち、戦っている。
そんな彼女を、今は姉である彼女が、魔王達の言いなりになって襲っている。

「んっ、んんっ……」
「はふっ、んっ、んんっ……」

思わず漏れ出る声、離れようにも、首輪の効力でこの甘い蜜を強制的に吸い続けさせられる。
口の周りが、どちらのものか分からない唾液に絡む。

「やめっ」
「「ぷはっ……!!」」

その命令に二人は拘束力が解かれ離れる。その勢いに、姉は鉄格子に背を預け、妹はその場に尻もちを付く。
お互いが肩で息をして、口元を拭う。
その姉の両手両足が鉄格子に拘束される。視線を向ければ、縄に魔力が籠っており、姉の力を奪っていた。

「姉のことをイかせろ。この民衆の前に、姉の醜態を晒すのだ」
「そ、そんなこと出来るわけ……あぐっ!! かはっ……!!」

拒絶をする妹の首が締まり、意識が失いかけるところで緩む。
民衆の前でキスをするだけならば別に良い、だが、醜態を晒すなど出来る訳が無かった。
だがそうなると、妹が死んでしまう可能性があり、姉は視線を反らして自ら股を開く。

「だめだよ、お姉ちゃん……!!」
「やって! どの道それしか、助かる道は……!!」
「そんな……お願いします、私はどうなっても良いので、お姉ちゃんだけは……!!」
「何でもやるのだろう? さっさとやれ」
「ひぐっ! うっ、いやだ、いやっ! かはっ……!!」

流石は背に隠れておどおどしていてもSランク冒険者、軽い強制力では抵抗されてしまう。
だが、姉の後ろに立つオークの姿に妹は、直ぐに手を伸ばす。

「そうだ、お前がやらなければオークに襲わせることも出来るのだ。さぁ、やるが良い」
「この外道……!!」

妹は姉の太ももに両手を当てると、そのまま舌先で彼女の陰部を刺激する。
普段触れられない所を、生暖かい舌先で触れられた姉は汗を滲ませて必死に耐える。

「いいぞ、もっとやれ!!」
「これは良い見物だ!」
「罰を受けろ!!」

信じられないが、人間も魔物も、共に同じ感想で彼女達を見ていた。
魔物に滅ぼされたのかと思われていたが、この国では見世物として扱われる姿に同じ感想を抱いていた。
この魔王、恐怖心だけではない、この国全体に唯一の娯楽を与えたのだ。
その結果、この国は他の国とは違い生きる意味と大罪を同時に背負った。
人としての業を捨てたのだ。
そしてこの国は男尊女卑が蔓延っている。だから見物に来ている男女の比率はそれほど差が無いが、歓喜している男達に比べて女達は目を逸らせずに堪えている表情をしていた。
男達はただ首を刎ねられるだけに対して、女たちはどのような扱いを受けるか分からないから。

「あっ……」
「そのまま吸い付け」
「うぷっ!!」

絶頂を迎えて潮を噴き出す姉の体液に吸い付き、そのまま妹は喉を鳴らして飲みほして行く。
飲み干した直後、直ぐに反対方向に走り、その場で吐く。
両手を鉄格子に握り締めてある程度吐くと、その両手首が拘束されてそのまま無理矢理立たされる。

「次は姉が妹に施す番だ」

拘束が解けた姉は、這って妹の背後に移動する。
スカート状になっている服を巻くりあげ、白い柔肌のお尻に舌を這わせる。
服の上から妹の胸をまさぐり、それから手を股に入れて穴に指を這わせる。

「ひっ、いやっ、やだっ……!!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」

歓声が上がる。彼女達は何度も何度もお互いにイカされ、4度目の絶頂を迎えると同時に意識が飛ぶ。
そんな二人を檻から出すと、汗に塗れた少女達を住民達の前に晒すように十字架に固定する。
丸裸にされて、胸も股も隠せずに民衆に曝け出された状態で、二人は丸一日放置されるのである。
こうして、彼女達は「水に流される」ことにより、公開処刑は完了になる。
ただ、この「水に流す」と言う意味が、本当の意味で使われていないということを民衆は知らず、その意味を知るのは実際に「水に流される」彼女達だけなのだが。
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