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第23話 ミリア2
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クロエの様子がおかしいが、恐らくミリアのことを想ってのことだろう。
元々原案としてはあったが、まさか四天王にまで上がって来るとは思わなかった。
とは言え、無理矢理就けたから、残念ながら上級冒険者相当レベルかと思われる。
ミリア、クロエの傍付きとして主人公と戦い、そして蹂躙される上に命を落とす引き立てキャラ。
けれどもこの世界ではクロエが彼女の方に付いたから、その空席を次席として就いたと見るべきだろう。
「クロエ。今回は降りても良いのよ」
「降りる?」
「あの城は貴女の城、貴女の愛しのミリアを私が殺す所は見たくないでしょう?」
「……そうですわね」
クロエは決してレイの方へ視線を向けない。
表情からは彼女が何を考えているのかも分からない。
けれども、逆にそんな彼女が珍しくもあり、つまり普段そんな表情をしないからこそ彼女の心情が逆に良く分かる。
「ルリ、行くわよ。クロエは今回、降ろすから」
「誰が降りると言いまして? 私の可愛い可愛いミリアに、最期の引導を渡すのも、私の役割でしてよ?」
「……その言葉、嘘偽り無いのね?」
不敵な笑みが張り付いた、魔王軍四天王の一人に相応しい表情。
しばし目を合わせていたけれども、私から目を逸らして歩を先に進む。
目指すは東の魔王城。
魔王軍四天王とは銘打たれているけれども、その実一人一人が一騎当千の実力を持つ『二つ名持ち』の特級冒険者相当。
この広い大陸を統べる軍勢の王として、東の魔王、北の魔王と言う名称が使われている。
そしてこの魔王軍四天王には、当然真の魔王が居る。
レイが住んでた世界も異世界だが、どちらかと言えば異空間的な意味の異世界に棲む魔王は、四天王が倒れた時に姿を現す。
今は『破壊神』ウェストはレイの親友、西條晶が乗っ取ったようである。
彼女達が東の魔王城に着くと、突如ゴブリンの群れが襲い掛かって来る。
とは言え、自身のステータス改変無効化されたところで抜ける方法は幾らでもある。
HP 700 → HP 1(改変)
EXP 5 → EXP 99999(改変)
敵の体力を極限まで削り、経験値を跳ね上げる。敵の数が多ければ多いほど、入る経験値が跳ね上がる。
そしてレイは魔法を使うことを主力にしている。
それゆえに、簡単に敵を屠ることが出来る。
そんな奴等が次に用意をして来たのは矢や石と言った投擲するもの。
けれども、それもレイの魔法の前では近付くことすら出来ない。
レイはただ歩いているだけで、目の前でゴブリンの群れが消し炭になって行く。
最奥部に歩くだけで辿り着くチートを、ゲーム作成者としては良くないけれども、バグを取り除くには最適な方法だった。
後ろでルリが飽きれた表情を、クロエは涼し気な表情で楽をしている姿がありありと分かった。
「……助……け」
「あがっ、いっ……」
「死にたく無い……死にたく無い……」
大広間にたどり着くと、見覚えのある少女達が全裸姿のまま、地面に建てられた木の槍に胸を貫かれ串刺しにされた状態で苦しんでいた。
6本立った木の槍、既に3人は息絶えているようだった。
公開処刑の大広間、そこで殺された少女達ははじまりの村の娘達だった。
「いやっ! お許しを! お許しを!! うぐっ!!」
その奥で牛頭の魔物が、別の裸にされた少女の髪を引っ張って連れて来ると、そのまま髪を引っ張ったままぶん投げる。
落下した少女が見たのは赤い絨毯の床。けれどもその床にたどり着くよりも早くに、腹部に摩擦熱で焼ける痛みが走る。
手足が痙攣し、刺さった木の槍を伝って血が流れ出ていた。
「少し見ない間に、随分と人の城を汚してくれましたわね?」
その言葉を言い終えるよりも早くに、すさまじい風がクロエから放たれると、周囲の魔物達と木の槍が消し炭になる。
そのまま落下してきた少女達は、3階の高さから落ちる様なもので皆地面に叩きつけられた上であらぬ方向に身体や手足、首を曲げて落下する。
全員が全員、即死は免れなかった。
「クロエ様……!!」
「クロエお姉さまが、帰って来た!!」
暗くて見えなかったけれども、どうやら奥には、更に裸にされた少女達が数人檻に閉じ込められていた。
微かに耳の先が長い、恐らくクロエと同族の妖魔、サキュバスの少女達だ。
クロエが魔法で檻を破壊すると、彼女達が一気にクロエに集まって安堵に涙を零して抱き着いて行く。
「なんとも美しい関係だこと」
「妬いてるの?」
「むっ……」
「それよりも、妙ね。人間だけじゃなく、サキュバスの方も捕らえられているなんて……」
「それに、クロエが居た頃よりも城の中も変わっているらしいし、ミリアの考えでは無いでしょうね」
クロエが仲睦まじくしている姿を遠くで見ながら、私達はそれぞれこの城の中で起きている状況について分析する。
此処から先、きっとまた何かが違うのでしょうね。
いつまでも、私が創った世界を勝手に弄繰り回すのをやめて欲しいわ。
レイとルリは、そのまま奥へ進み、玉座の間へと突き進む。
「……早いお付きですね。或いは、遅かった」
「貴女に会えたなら間に合った、ミリアを助けるなら遅かったというべきね」
そう、ミリアを助けるには遅かった。
『老獪』アルベア。見た目は子供のまま、西の四天王にして最年長の魔王。
そして、その能力は命の吸収。後ろに倒れているミリアは、傷一つ無く眠っていた。
まるで病死したかのように、老衰するかのように、安らかではなくても、眠る様に、死んでいる。
それが彼女の能力だった。
「私の役割は終わりました。それでは――」
「逃がすとお思いですの? 私の可愛い妹分を殺しておいて」
感動の再会を果たし終えた後、辛い邂逅を果たしたクロエの表情はいつもと変わらない。
だけど、言葉の端々は彼女のかたき討ちをすると言外に言っている。
「……『千本桜』クロエ、貴女を殺す命令は受けていません。……しかし、楽には帰して貰えそうに無いですかね」
「当然ですわ。招かれざる客を勝手に招待したんですもの。生きて返す訳には行きませんわ」
「……此処で、私が皆さんを殺すことは容易い。ですが、先も言った通り、魔王様からの命令に貴女達の殺戮は入っていません。ここで失礼します」
その言葉を言い終えるよりも早くに、東の魔王城が巨大な何かに潰される。
ミリアの遺体も、逃げ遅れたサキュバスの少女達も、瓦礫に圧し潰されて跡形も無くなった。
その瓦礫の山をクロエは見詰める。
後ろからでは彼女が何を考えているか分からないけれども、それは多分前から見てもきっと同じ。
『老獪』アルベア。彼女はどうやら『破壊神』側についていて、その上で私の改変デバッグも効かない。
南北の魔王は、一体どっちの味方になるのやら……。
元々原案としてはあったが、まさか四天王にまで上がって来るとは思わなかった。
とは言え、無理矢理就けたから、残念ながら上級冒険者相当レベルかと思われる。
ミリア、クロエの傍付きとして主人公と戦い、そして蹂躙される上に命を落とす引き立てキャラ。
けれどもこの世界ではクロエが彼女の方に付いたから、その空席を次席として就いたと見るべきだろう。
「クロエ。今回は降りても良いのよ」
「降りる?」
「あの城は貴女の城、貴女の愛しのミリアを私が殺す所は見たくないでしょう?」
「……そうですわね」
クロエは決してレイの方へ視線を向けない。
表情からは彼女が何を考えているのかも分からない。
けれども、逆にそんな彼女が珍しくもあり、つまり普段そんな表情をしないからこそ彼女の心情が逆に良く分かる。
「ルリ、行くわよ。クロエは今回、降ろすから」
「誰が降りると言いまして? 私の可愛い可愛いミリアに、最期の引導を渡すのも、私の役割でしてよ?」
「……その言葉、嘘偽り無いのね?」
不敵な笑みが張り付いた、魔王軍四天王の一人に相応しい表情。
しばし目を合わせていたけれども、私から目を逸らして歩を先に進む。
目指すは東の魔王城。
魔王軍四天王とは銘打たれているけれども、その実一人一人が一騎当千の実力を持つ『二つ名持ち』の特級冒険者相当。
この広い大陸を統べる軍勢の王として、東の魔王、北の魔王と言う名称が使われている。
そしてこの魔王軍四天王には、当然真の魔王が居る。
レイが住んでた世界も異世界だが、どちらかと言えば異空間的な意味の異世界に棲む魔王は、四天王が倒れた時に姿を現す。
今は『破壊神』ウェストはレイの親友、西條晶が乗っ取ったようである。
彼女達が東の魔王城に着くと、突如ゴブリンの群れが襲い掛かって来る。
とは言え、自身のステータス改変無効化されたところで抜ける方法は幾らでもある。
HP 700 → HP 1(改変)
EXP 5 → EXP 99999(改変)
敵の体力を極限まで削り、経験値を跳ね上げる。敵の数が多ければ多いほど、入る経験値が跳ね上がる。
そしてレイは魔法を使うことを主力にしている。
それゆえに、簡単に敵を屠ることが出来る。
そんな奴等が次に用意をして来たのは矢や石と言った投擲するもの。
けれども、それもレイの魔法の前では近付くことすら出来ない。
レイはただ歩いているだけで、目の前でゴブリンの群れが消し炭になって行く。
最奥部に歩くだけで辿り着くチートを、ゲーム作成者としては良くないけれども、バグを取り除くには最適な方法だった。
後ろでルリが飽きれた表情を、クロエは涼し気な表情で楽をしている姿がありありと分かった。
「……助……け」
「あがっ、いっ……」
「死にたく無い……死にたく無い……」
大広間にたどり着くと、見覚えのある少女達が全裸姿のまま、地面に建てられた木の槍に胸を貫かれ串刺しにされた状態で苦しんでいた。
6本立った木の槍、既に3人は息絶えているようだった。
公開処刑の大広間、そこで殺された少女達ははじまりの村の娘達だった。
「いやっ! お許しを! お許しを!! うぐっ!!」
その奥で牛頭の魔物が、別の裸にされた少女の髪を引っ張って連れて来ると、そのまま髪を引っ張ったままぶん投げる。
落下した少女が見たのは赤い絨毯の床。けれどもその床にたどり着くよりも早くに、腹部に摩擦熱で焼ける痛みが走る。
手足が痙攣し、刺さった木の槍を伝って血が流れ出ていた。
「少し見ない間に、随分と人の城を汚してくれましたわね?」
その言葉を言い終えるよりも早くに、すさまじい風がクロエから放たれると、周囲の魔物達と木の槍が消し炭になる。
そのまま落下してきた少女達は、3階の高さから落ちる様なもので皆地面に叩きつけられた上であらぬ方向に身体や手足、首を曲げて落下する。
全員が全員、即死は免れなかった。
「クロエ様……!!」
「クロエお姉さまが、帰って来た!!」
暗くて見えなかったけれども、どうやら奥には、更に裸にされた少女達が数人檻に閉じ込められていた。
微かに耳の先が長い、恐らくクロエと同族の妖魔、サキュバスの少女達だ。
クロエが魔法で檻を破壊すると、彼女達が一気にクロエに集まって安堵に涙を零して抱き着いて行く。
「なんとも美しい関係だこと」
「妬いてるの?」
「むっ……」
「それよりも、妙ね。人間だけじゃなく、サキュバスの方も捕らえられているなんて……」
「それに、クロエが居た頃よりも城の中も変わっているらしいし、ミリアの考えでは無いでしょうね」
クロエが仲睦まじくしている姿を遠くで見ながら、私達はそれぞれこの城の中で起きている状況について分析する。
此処から先、きっとまた何かが違うのでしょうね。
いつまでも、私が創った世界を勝手に弄繰り回すのをやめて欲しいわ。
レイとルリは、そのまま奥へ進み、玉座の間へと突き進む。
「……早いお付きですね。或いは、遅かった」
「貴女に会えたなら間に合った、ミリアを助けるなら遅かったというべきね」
そう、ミリアを助けるには遅かった。
『老獪』アルベア。見た目は子供のまま、西の四天王にして最年長の魔王。
そして、その能力は命の吸収。後ろに倒れているミリアは、傷一つ無く眠っていた。
まるで病死したかのように、老衰するかのように、安らかではなくても、眠る様に、死んでいる。
それが彼女の能力だった。
「私の役割は終わりました。それでは――」
「逃がすとお思いですの? 私の可愛い妹分を殺しておいて」
感動の再会を果たし終えた後、辛い邂逅を果たしたクロエの表情はいつもと変わらない。
だけど、言葉の端々は彼女のかたき討ちをすると言外に言っている。
「……『千本桜』クロエ、貴女を殺す命令は受けていません。……しかし、楽には帰して貰えそうに無いですかね」
「当然ですわ。招かれざる客を勝手に招待したんですもの。生きて返す訳には行きませんわ」
「……此処で、私が皆さんを殺すことは容易い。ですが、先も言った通り、魔王様からの命令に貴女達の殺戮は入っていません。ここで失礼します」
その言葉を言い終えるよりも早くに、東の魔王城が巨大な何かに潰される。
ミリアの遺体も、逃げ遅れたサキュバスの少女達も、瓦礫に圧し潰されて跡形も無くなった。
その瓦礫の山をクロエは見詰める。
後ろからでは彼女が何を考えているか分からないけれども、それは多分前から見てもきっと同じ。
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