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第14話 キザリス公国 - エピローグ -

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日の光が部屋に差し込み始め、ルンとユイは目を覚ます。
それから元々眠る必要の無いレイとリンの順に起き上がり、窓を開ければ心地良いそよ風が流れ込む。
気分が晴れて、町もそれに合わせて活気が広がっていた。
今日は町の活気が普段よりもあふれ出し、だろう。
それはユイにとっては辛いことだ。何せ、自分が奴隷であると言うことを多くの人間に知られてしまうのだから。
身支度を始め、着替えが終わったころ、短いノックと共に宿屋の娘が怯えたような表情で部屋を訪れる。
その後ろには大男が2人控えており、上半身裸の男についた刺青は堅気の人間で無いことを表していた。
そして彼等が誰なのか、どう言う目的でここを訪れたのか、それは蒼褪めたユイの表情を見るに明らかだった。

「"闇ギルド"の指示より奴隷商から派遣されました、ゲオルと申します。レイ様でお間違いありませんでしょうか?」

大きな体躯の男は、見た目の厳つさに反して非常に礼儀正しく接する。
視線は決して他の奴隷に目を向けず、私に対しては誠実に、奴隷に対しての偏見を持たずに接する。

「"色欲の捕食者プレデター"レイよ」
「二つ名をお持ちでしたか。このたびは逃亡奴隷の確保にご協力下さりまして、誠にありがとうございます。まず、こちらが謝礼金になります」

そう言って金貨が大量に入った袋を渡される。そこには謝礼金とは銘打っているが、口止め料も含まれているのだろう。
レイがそのお金を受け取った瞬間に、もう一人の男がユイへと近付く。
一瞬、ルンが彼女を庇おうと動こうとしたけれども、奴隷の身分である彼女にはもう、ユイを守るだけの力は無かった。
だから、彼女は目と耳を塞ぐほか無く、ユイが泣き叫び、暴れる彼女を連れて行かれることから目を背けることしか出来なかった。

「一つ良いかしら」
「何でしょう?」
「彼女は、これからどうなるのかしら?」
「逃亡した奴隷は、奴隷に対する足舐めをさせた上で、奴隷達の前で見せしめに殺されます」
「!? いやだ! 助けて!! なんでもします! なんでもしますから!! 死にたくない!! 助けて、ままぁぁぁぁぁあああああ!!!」
「失礼しました。彼女の口を塞いで下さい。猿轡をした上で麻袋を被せ、外で待っていて下さい。部屋の外ではなく、店の外です」

男は少女をと、鼻を摘まんで強制的に口を開き、その口に布を詰めるだけつめこむ。
その外側に更に布を巻いて彼女の後頭部で締め付ける。
其の上で彼女に麻袋を頭から被せ、男はそのまま彼女を外へと運び出した。

「話が途中になりました。多くの素行の悪い、もしくは躾をしても怯えて動けない奴隷の前で、同じ奴隷達に足舐め行為をさせ、彼女の尊厳を奪います。それから、アンデッドモンスターである"蛆猿"を使って犯し、数時間の魅せしめによる性行為を行った後に"苦悩の梨"を使った処刑を行います」
「彼女に、苦悩の梨が何かを教えてもらっても?」
「分かりました。苦悩の梨は、女性の精器を破壊するためのものになります。形は"梨状"で、ネジを回すことにより大きく開き、膣内でそれが大きくなります。そうして決して治らない、内臓を破壊した激痛と失血によって命を落とすのです」
「なんて恐ろしいものを……!! それを幼い子供にするの!?」
「幼くても、長く生きていても、奴隷の脱走は極刑に当たる罪なのです。そしてそれを助長させないため、抑制のために公開処刑は必要なのです」
「それ、よければ見学出来るかしら」
「……!? まさか、昨日言ってた『より恨まれることをするつもり』って……!!」
「お願い出来るかしら?」
「上長に掛け合ってみますため、お時間を頂ければ」
「お願いね。私にも、彼女に教育が必要だと思っているから」
「アンタねぇ……!! がっ!? あっ、ああああああああ!!!?」

今のは侮蔑の意味のアンタと判断されたらしい。
普段はチクチク刺す痛みだが、今のは胸に焼き付く痛みが走っているのだろう。

「待って! その子の代わりに、私が処刑されるからっ! だから、その子だけは、許して!!」
「良いのかしら、で? まぁ、もう手遅れだけれども」
「どう言う……」
「外を見て見なさい」

ルンがベッドの上に乗り、外を見る。何事も無いただの喧騒だから気付かないのも無理は無い。
けれども、
ユイは先程の男によってに入れられており、目の前にそれより小さい少女と、若い女が別の檻に入れられていた。

「その子だけ許してあげる。だけど、代わりは必要でしょう?」
「あの人たちは、まさか……」
「あの子の母親と妹よ。そして彼女は母奴隷なの」
「母奴隷……。労働奴隷、性奴隷に並ぶ三大奴隷の一つ。子供を産むだけに存在する、足舐め行為をさせられた奴隷以下の存在で、子供を産むことだけの存在……」
「そして彼女は同じ村で、あの子の母親だったの。だから、ユイにとっては、目の前で母親と妹が閉じ込められているの」

母親、明らかに15歳くらいの少女だ。そして妹の方は、ユイと同じくらいの少女。
その母親のお腹は、明らかに大きくなっていた。
恐らく『千手』レイトが、彼女を殺す為にお腹に居た子供を成長させたのでしょう。
檻から出された母親は、ユイや町の人間の目の前で大の字に張り付けられていた。
そして別の男が母親にナイフを突き立てる。中の子供も、アレでは生きていないだろう。
男の子と分かっていたから、諸共に殺した。それから妹も檻から出されると、顔を母親の腹部に押し付ける。
腹部から止めどなく流れる血の中に妹の顔を潜り込ませ、もがき苦しむ妹を母親の血肉で溺れさせる。
母親にまだ微かな意識があるのか、母娘共に激痛にもがき苦しむ姿が、明確に公開処刑になっていた。
ユイは叫びたいでしょうけど、その口には猿轡が付けられており、檻の中から何も出来ずに二人は殺されて行く。
それから、二人の遺体はそのままユイの檻の中に入れられた。

「人でなし……うぐっ……たとえ、胸を何度も焦がされても、言い続けるわよ……!! この人殺しっ……!!」
「そうね。私は人殺しだし、人でなしだわ。覚えておきなさい。気分が変わったわ。ユイはそのまま連れて行って。でも、殺さないでね。彼女達と、ルンに免じて、あの子だけは生かしてあげるわ」

そう言うとゲオルは無言で一礼をして部屋を出て行った。
あの男、終始礼儀を欠かなかったけれども、感情の揺るぎも無かった……。
精神だけは、完全にロボットと言うことかしらね。

「うぐっうぁぁあぁぁあああ!!!?」
「馬鹿な娘ね。今はおやすみなさい。そして、目が覚めたら今度は、どんな罵詈雑言を聞かせてくれるのかしらね、ルン?」

意識を奪われたルンの身体は、そのまま倒れる。
レイはリンにルンを見る様に命じて、宿屋を後にした。
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