SPIRIT~スピリット~

SHOW

文字の大きさ
上 下
17 / 88
第一章 胡蝶の夢

第一章 第十三話 話し合いは三組の教室で

しおりを挟む
「神代には言ったから」

 少し食べて亮夜から出た言葉はこの一言だった。

「そうか、ありがとう」

「礼(れい)はいい。これは俺らの問題だ。俺らには知る必要がある」

「そうだな」

 夢の世界ヴォロは分からないことだらけだ。分からないなら知らなければならないし、理解しなければならない。

 なぜなら、知ることによってこれからの対応を考えることができるからだ。

 例えば山登り。知識があるとないとでは遭難した時の生存率が変わるように、夢の世界ヴォロを知ることによって、生きるか死ぬかの生存率を高める必要がある。

 そう考えながら、食べていると亮夜が「何考えてんだ?」と聞いてきた。

「今夜の夢はどうなるだろうなってな」

「そんなの今夜見ないとわからねぇよ。怖いのはわかるけどよ」

「そうだな」

 会話はそこで一旦終わり、全て食べ終わると、亮夜が「ふぅ、腹一杯。よし、行くか」と言った。

 教室に戻るのか。

「そうだな、行こうか」

 そう言い、立ち上がり、向かったのは屋上だった。

「なんで屋上なんだ?」

「えっ? 次の授業サボるためじゃねぇか」

 そう言い、屋上で寝転がる亮夜。

「俺は教室に戻る」

「真面目だねぇ。高校は義務教育じゃないんだぜー」

「サボる方が今は珍しいんだよ。じゃ、放課後5時に三組に」

「おう、よろしくー。すげー、雲が川みたいに流れてらぁ」

 俺は教室に戻ることにした。教室に戻り。スマホで天気を確認する。今日は曇りだが、午後は次第に晴れるようだな。亮夜には言わなくていいか。そう思いながら次の授業の準備をする。

 放課後、授業は終わり、生徒たちは帰っていく。部活に行く生徒とかいるんだろうな。俺は三組に行かなければならないんだが。

 時間だ。教材をまとめ、席を立つ。教室を出て、廊下を渡り、二年三組の教室で立ち止まる。

 ここに二人がいるのか。教室の扉を開ける。

 扉を開けるとそこには、窓際の席で脚を組み亮夜を見つめる神代と少し離れた席で椅子の背もたれに手をかけ、彼女を見つめる亮夜がいた。

 訂正、見つめるというより睨み合うという言葉が適切だな。

「おう、来たか大神」

「何、男二人で私を襲う気なの?」

 亮夜は鼻で笑い「ふざけろ、こっちは夢の世界ヴォロのこと知りたいって、午前中に言っただろ?」と顔(がん)を飛ばしながら言う。

「中途半端な人に睨まれても怖くないのね」

「あ゛ぁ!」

「待て、水島。落ち着け」

 咄嗟に立ち上がる彼を止める。

「神代さん。俺たちは話がしたいんだ。喧嘩をしたいわけじゃない」

「話し合いね。わかった。じゃーおしまい。話すことはない。さようなら」

 彼女は鞄を持ち、立ち上がり、教室の扉に向かう。

「お゛い、逃げようとすんなよ!」

「水島は落ち着け! 俺たちはブギーマンに言われたんだ。このままだと、この世界が危ないって」

 それを言うと、扉の取っ手に手を伸ばしたところで止まる。

「あいつ、それ以外になんか言ってた?」

「ヒントは君にあるって」

 彼女は「あの道化師は」と呟く。

夢の世界ヴォロで私を探しなさい。この世界では絶対話さない」

 そう言い、神代は教室を出るのであった。

「大神、なんで神代を逃したんだ? ここで聞けば終わってたじゃねぇか」

「でも言ってくれなかったと思う」

「なんでそう思う」

「前もそうだったから……」

「なんだよそれ……まぁいい。今日はお開きだ。今晩、また夢の世界ヴォロ で会おう。で、彼女を探そう」

「なんかすまん」

「謝んな、終わったことだ。それじゃ、俺はもう帰る。また今晩会おうぜ」

「あぁ、お疲れさん」

「お疲れさん」

 亮夜は教室を出る。俺は教室で独り、窓から誰もいない中庭を見る。

 そうだ、今日は母さんにメール送らなければ。そう思い俺も教室を出るのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

処理中です...