手と紙と毒

あかいかかぽ

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『クジュキリー女王陛下、お元気ですか。
 くだけた表現ですみません。よく考えたら私は今は一介の農業従事者。元より貴族などではありません。教養があるように気取ってみてもしかたないですもの。
 閣下はあいかわらず、よく出没します。月の半分は私の屋敷に来ています。いえ、正確には屋敷に泊まり込んでいます。勝手に書斎を作って籠っています。
 大好物だった落花生ですが、ある日突然、アレルギーを発症しました。ご典医に二度と食べてはならないと言われてしまったそうです。
 だから二度と訪れることもないだろうと思っておりましたのに。王宮でのお仕事が暇になったみたいですわ。
「止まっていた時を動かすためだ」とかなんとかよくわからないことをおっしゃって。
 小屋に残したままだった膨大な研究資料をまとめて成果にするのだとか。農業大辞典を編纂したいのだそうです。
 もともとこの屋敷は閣下のものでしたし、恩情で私に下賜されたものですから、お好きになさればいいと思います。取り上げられても文句はありません。
 でも出ていけとはおっしゃらないんですよ。なにがしたいのかしら。
 陽だまりの午後、太陽の方を向いて、一緒にお茶を飲みたがるのですが、かといって話すことなどとくにないんですよ。天気のこととか、メーたちのひ孫のこととか。
 ところで、ソヴァ王配が孫の馬役をされて、腰を痛めたとのこと。ご一家の仲睦ましさは本物ですね。想像すると笑みが浮かびます、いつまでも健やかで。
 こちらは夫婦になりそこねました。今はなんなのでしょう。戦友かしら。
 来月、農政使節団の一員として伺わせていただきます。団長は誰か、書かなくてもおわかりですよね。ソーキより』
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