手と紙と毒

あかいかかぽ

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『ウドゥン陛下、ご推察どおりでございます。
 海軍士官である父が、クジュキリー様とフォー様の脱出の手引きをいたしました。信頼していた国王と王妃が相次いで食あたりで亡くなられたら不安にもなるというもの。人質同然の扱いに懸念を覚えた彼女は子とともに故郷に帰ることを望まれたのです。けしてかどわかされたわけではございません。
 その証拠に、クジュキリー様は我々の連絡を取り持ってくださっています。陛下からの返信はしっかりと手元に届きましたわ。
 とはいえ、赦免状を海軍に持たせるなどと、相変わらず意地のわるいことを。
 ついうっかりと返り討ちにしてしまいましたので、赦免状は海の藻屑となってしまいました。でももうけっこうですわ。貴国の土を踏む機会は永遠になさそうですもの。元囚人たちも、水兵たちも今や私の部下になっておりますし。
 最近気づいたばかりなのですけど、私は順応力が高いようなのです。仕事を覚えるのも早いですし、他人の良いところを吸収するのも得意です。操船技術を陛下にお見せしたいところですが、いえ、やめておきましょう。
 今陛下の目の前に立ったとしても、陛下は私を認識できないと思います。ソヴァ殿下もきょとんとしておいででした。おまえは誰だ?と目が訴えておりました。海の風と太陽のおかげで、肌は真っ黒です。帆を張ったり、舵を取ったりして鍛えられた筋肉は、畑仕事の礎があったればこそ、と思うと、陛下との出会いは運命だったのかもしれません。
 ソヴァ様はクジュキリー様とフォー様と一緒に穏やかにお過ごしです。被害妄想に苛まれることはもうないでしょう。罪と罰は釣り合っていなければなりません。
 父は隣国で海軍本部大佐として迎えられました。海賊改め海軍中佐キャプテン代理ソーキより』
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