手と紙と毒

あかいかかぽ

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『ソヴァ皇太子殿下、お久しぶりです。
 ご報告が遅くなってしまい、申し訳ありません。忘れていたわけではありませんの。
 子ヤギの様子が気になって毎日外出していたものですから。
 前回の手紙には書き忘れましたが母ヤギもすこぶる元気です。
 母ヤギはメーと呼ばれているので、ウドゥンがラー・メーと名付けました。ラーって古代エジプトの神様なんですって。ウドゥンは私の知らないことをよく知っています。
 昨日は子馬が生まれました。母馬は真っ白なのに、子馬は焦げ茶でした。まつげがばさばさしていて、とても可愛い子馬です。私が乗馬できると知ったウドゥンが、子馬をくださるとおっしゃいました。ウドゥンが調教してくれるそうです。
 とても楽しみです。ひとりで自由に出かけられるようになりますからね。
 さっそくター・メーと名付けました。ラーがお兄さん、ターが弟です。ヤギと馬が兄弟でなどおかしい、とか言わないでくださいね。このふたりが、じゃなくて二匹が仲良く遊んでいるところは見ていて飽きないんです。気がついたら半日くらい経ってるんです。不思議な感じです。
 殿下からご依頼のあったウドゥンの暮らしぶりですが、とくに変わりはありません。
 怪しい人物と会っていないか、というご質問ですが、怪しい人物とはどういった人物なのか、よくわかりません。もう少し具体的に怪しさを教えてください。ウドゥンの周囲にいるのは使用人以外は農夫や平民ばかりですもの。ソーキより』
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