〈完〉クリスマスイブに街で女装した弟と出会ってしまったお兄ちゃんの話

アウレオールス

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気づかなかったぞ弟よ

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「ふぅ、スッキリした」

背中を洗う事を頭の片隅のどこかで期待していたが、弟は普通に身体を洗った。

「……それにしても細いな、筋トレとかはしないのか?」

何気なく弟の後ろ姿をみて思った事をつぶやくように喋る。

「………別に女装するからよくね?」

弟の声色から、これは地雷を踏んだな、というのがわかった。

「い、いや、可愛い服が似合うし、俺はいいと思うぞ?」

「ふぅん」

気まずい、どうにも弟が脱いでから調子が狂ったままだ。

「ま、最近は女装してる時間のが多いくらいだし、こっちのが都合がいいんだ」

「え゛っ」

初耳だ、しかしよく考えると確かに弟は、見た感じ女装にかなり慣れている、化粧も上手だ。
一体いつからしているんだろうか。

「あはは、兄貴は今日気づいたみたいだけど、実はかなり前からしてるんだよね」

「おま…いつから…」

「さぁいつからでしょう、一朝一夕であの感じ無理だよ、流石に」

「そ、そうだよな…」

「あーあ、やっぱり全然オレの事見てないじゃん、だから周りには不仲って言われるんだよ」

「め、面目ない」

今思うと俺は家族を全然大切にしてなかったかもしれない、そう思うと申し訳なさと不甲斐なさが押し寄せてきた。

「ぷっ、すごい落ち込んでやんの」

気がつくと弟が一緒の湯船に入っている

すぐ近くに水が滴る髪と、無邪気な笑顔
今度は申し訳ないという気持ちとはまた違った、おかしな感情が胸を締め付けてきた。

「ん?兄貴?大丈夫か?言いすぎたかも」

弟の笑顔が少し不安な顔に変わると、何か少し考え、いきなり立ち上がる。

「そうだ、先に上がってるからもうちょい湯船に浸かっててね」

「え?いや、のぼせるのぼせる」

「用意があるからさぁ、ね?」

「用意って…なんのだ?」

「それはお楽しみぃ」

また何かを企んでいるあの顔になると、さっさと出ていってしまった。

俺はのぼせないように、足だけ浸かる事にした。
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