〈完〉クリスマスイブに街で女装した弟と出会ってしまったお兄ちゃんの話

アウレオールス

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余裕そうだな弟よ

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「いえーい、結構広いね!」

何やら大量に買い込んだ袋を雑に俺に預けると、弟はやたら華々しいベッドに飛び込んでいった。

「おいおい、せめてコートくらい脱げ」

「脱がしてーーー」

結局俺は弟の謎すぎる提案を断れずに、よくもわからないまま流されてホテルに入ってしまった。
若干ぎこちなくなっている自分とは裏腹にいつもと変わらない調子の弟を見て俺は胸が少しざわついた。

「なんかお前、少し慣れてないか?」

「ん?何に?ホテルに?」

「…………」

俺の怪訝な顔を察した弟は、ニヤニヤしながら上着をハンガーに掛けている俺に近づいてくる。

「あは、実は…経験豊富……だったりして」

不意に腰に手を回して身体を寄せてくる。
背中に感じる体温と、予想外な弟の行動に、少し鼓動が速くなった。

「お前、本当にそういう…」

「なんてね、オレも初めてだよ、普通に調べれば大体どんなのかぐらいわかるじゃん」

手をひらひらさせて無邪気そうに笑う
本当なのか嘘なのか、気が気じゃなかったが、
これ以上からかわれるのも癪だったので適当にテレビを点けてベッドに越しかけた。

「お、何かえっちぃの観るの?」

弟がもぞもぞとベッドの上を這ってくる

「観るわけねーだろバカ」

そのまま後ろに倒れ弟を枕にする

「ぐえ…重い!!」

細身の身体の少し硬い感触と女の子みたいなふわっといい香りがしてそのギャップに頭が少し困惑した。

「んなことよりさー、色々買ったんだしパーティーしようよパーティー」

背中から不貞腐れてる声が聞こえてくる

「何もラブホでやることないだろ…」

「甘いね兄貴、今日なんかどうせカラオケとかそういうところは全部混み混みなわけ」

「家でやればよくないか?ラブホだってギリギリだったろ」

「だって一度入ってみたかったし…」

少し声のトーンが落ちた、まさか恥ずかしがってるのかと顔を見ようと起き上がると

「…むしろ兄貴は一生入れなかったかもしれないんだから、感謝しろよな」

全然そんな事はなかった。

「よーし、これとこれと」

そして弟は飛び起きると嬉しそうにガサゴソと袋を開け、次々と机に食べ物を並べていく。

「なんかこうするとラブホ感どんどん薄れてくな」

「何?ラブホ感あった方がいいの?」

「いや、そういうわけじゃないけど」

「ほら、座って座って」

ポンポンとソファを叩く
キャバクラっぽいな、と考えながら弟の横に座る

「はい、コップ」

「ん」

「コーラでいい?」

「なんでもいいよ」

「………なんかさ、キャバクラっぽいね」

「ふっ」

同じような事を考えている事に思わず笑ってしまい、弟はきょとんとした顔でこっちを見てくる。

「いや笑いすぎ」

「ごめんごめん、乾杯」

「かんぱ~い」

嬉しそうにチキンを頬張る弟を見て、案外こういうのも悪くないな、と思ってしまった。
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