【R18】ネコミミ獣人に転生したら既にテイム済みだったのですが。

15話 酔

とても心地の良い肌触りがする。
とてもすべすべだ。

「ん……んん！？」

しかしこれは一体どういう状況なのだろうか、昨日の事を急いで思い返す。
勢い余って色んな事をしてしまった気がする。
俺は恥ずかしさのあまり枕に突っ伏してしばらく放心してしまった。

「ん……セータ、おはよう」
「……おはよ」

ハロが起きたみたいだが、俺はまだ顔を上げられずにいた。
恥ずかしくて仕方がない。

「どうしたの？」
「ちょっと待って……」

俺が落ち着くのを黙って待ってくれている。
思い返しても、流石に一線は超えてないはずだ、大丈夫。

「落ち着いたかい？」
「あ、うん……」
「それで、朝から枕とキスをしてどうしたんだい？」
「……ハロ、なんで俺とハロは服を着てないんだろうか」
「え？昨日の事を覚えてないの？」
「何があったの！？」
「……お互いあんなに乱れてたから激しすぎて気絶しちゃったのかもね」
「え……」

俺は咄嗟に全身を確認する、なんともないしかなり綺麗だ。
しかしそれはハロが神秘魔法で浄化したのかもしれない。
俺はまさか異世界に来て童貞よりも先に処女を失ったのか？

「ぷっ、あはは、そんなに焦らなくてもセータはベッドに入ったらすぐ寝ちゃったよ」
「ハロ！！！！」

どうやら冗談だったらしい。
ハロなりのジョークだろうが、心臓に悪いので本当に止めて欲しい。

「ごめんごめん」

そう言ってハロは俺を抱き寄せてきた。この温もりは嫌いではない。
前世の世界では誰かにこうしてハグされる事も無かったので人肌に飢えているのだろうか。

「最近、セータはどんどん強くなっているけど、セータは何を目標に頑張っているんだい？」

抱きしめられたまま不意に核心めいた事を尋ねられる。
確かに俺はなんでこんなに強さを求めているんだろう。

「もう、みんなの足を引っ張って悲しい思いはしたくないしさせたくないから……かなぁ」
「へぇ、それはつまり僕のため？」
「ち、違うよ！いずれは独り立ちする時にも強さは必要だろ？」
「そっかそっか」

ハロは笑っているがどこか寂しそうだ。
でも実際、いつまでもこうして彼に養われているわけにはいかないのだ。
いつかは彼の庇護下から離れなければならない時が来るだろう。
その時のために今から鍛えておくんだ。

「逆に、ハロは目標とか夢はないの？」
「僕？んー……」

 ハロは顎に手を当て考えているようだが、特にこれといったものは無いらしい。
まぁエルフだから長寿だし、そういう意味じゃ気長に生きればいいだけなのかもしれないが。

「僕はセータをもう一度テイムできればそれでいいかな♪」
「まだ諦めてなかったの！？」
「うん、最近その首輪も馴染んできてるしね」
「う……」

ハロは俺の首輪を撫でている、本当に俺をテイムする気なんだろうか。
彼は俺が嫌がる事は決してしない、むしろその逆だ。
だから彼のペットになるのも悪くはないのだが……。

「とにかく！今日はハロの依頼を手伝うよ」
「おや、ありがとう、それじゃ支度しようか」

最近では、普通にハロに連れられて、強そうなモンスターも一緒に倒せるようになってきた。
当然ルインやヴォルガという強力な仲間がいるおかげなのもあるが、俺も強くなっているはずだ。

「あー……くっ……はぁ……はぁ……はぁ……」
「大丈夫かい？」
「なんとか……はぁ……はぁ……はぁ……」
「無理はしないようにね」
「うん……わかってる」

俺は息を整えながら答える。

「ヴォルガもあんまり深追いしないようにね」
「問題ねぇよ、こいつの毒ぐらいなら死なねえだろ」

俺の後ろではヴォルガが爪を振り回している。
俺達の目の前にいるのはキングスコーピオンだ。
こいつは見た目通り外殻が硬く、しかも毒を持っている厄介な相手である。
しかし今の俺は以前より遥かに強くなったはずだ。
毒針を避け、同じ場所を何度も攻撃する。

「オイ！エルフ！1匹そっち行ったぞ！」
「おっと、捌けるかな？」
「俺に任せて！」

俺は足に力を込めて目の前のキングスコーピオンを蹴り飛ばし、ハロに向かっていくもう1匹ごと吹き飛ばす

「ヒュー」
「ありがとうセータ！」

ヒビが入った外殻にハロは弓を連射し、スコーピオンの動きが完全に停止した。

「ふう、終わったね」
「こっちも終わりだ……ったく、何が3匹だよ、倍じゃねぇか倍」
「あはは、その分報酬も上がるからいいじゃないか」
「そんなに稼いでどうすんだ？」
「困ってる人を助けるのが第一さ、それにお金はいくらあってもいいからね」
「そういうのはいいからよぉ」
「じゃ、近くの街でちょっと良いものを買おうか」
「ソレだよソレ！！」

ヴォルガは尻尾を振っている、なんだかなんだハロは彼の扱い方も上手だなと感心する。
そのまま俺達は近くの街で買い物をして帰路についた。

「それじゃ、ありがとうねヴォルガ、報酬は予想の額に色を付けて前払いしとくよ」
「おう、悪いな」

ヴォルガは上機嫌で帰っていった。彼はなんだかなんだこの生活に順応しているようだ。
どこでどう暮らしているのか少し気になるが。
呼べばすぐ来てくれるので多分この森のどこかに棲家があるのだろう。

「よし、僕たちも少し贅沢しようか」

少し遅めの食事なので量は控えめだが、机の上には良い匂いの香草肉やパン、新鮮な野菜が並んでいる。
そしてこっちの世界では初めてのお酒もある。

「セータ、そういえばお酒は大丈夫なのかな？」
「む、子供扱いしないでよ、全然ヘーキさ」

流石に前世ではそんなにお酒は弱い方では無かったので、多分大丈夫だろう。

「それじゃカンパーイ！」
「かんぱい？獣人族の儀式かい？」
「いいからいいから！」

俺はグラスをハロとくっつけ、おそらく葡萄酒であろうお酒を流し込む。
久しぶりのお酒だ、とても美味しい。

「セータ、本当に大丈夫？」
「ほぇ？なんれ？」
「いや、もう顔赤いしなんなら呂律回ってないけど……」
「らいじょうぶ！それよりもっと飲もー飲もー！」

俺は更に継ぎ足し、一気に飲み干す。
不思議な味だが、アルコールというのは異世界でもさほど変わらないようだ。

「え、ちょ、セータ！？」
「あー……うにゃぁ……」
「セータ！？しっかりしてセータ！？」
「んぅ……はろぉ……にゃんにゃーん」
「えぇ？」
「はりゅ～、いいこいいこしへ……」
「えっと……よしよし？」

身体がポカポカする、なんだか知らないけどハロに頭を撫でてもらっているようだ。もっと撫でてもらおう。

「ふわぁ～♪」
「あらら、セータ、起きて、ベッドに行くよ」
「うにゃ？はろ？なんでぇ？」
「まったく、こんな所で寝たら風邪引いちゃうよ」
「いやにゃーーん！もっと撫でろーー！」
「ちょ、こらこら」

俺はハロを抱きしめた、いつもの優しい匂い、とても落ち着く。
でもハロは困惑しているようだ。

「はじゅかしぃの？」
「恥ずかしくはないんだけど……セータ、語尾が変だし、ちょっと面白いかな」
「じゃあいいかにゃ？」
「わかったわかった、好きなだけおいで」
「えへぇ」
「面白いけど、流石に可哀想だし回復魔法で代謝してあげよう」

ハロがお腹をさすってる。

「はろぉ……えっちぃ……」
「やれやれ、それは否定しないけど、そろそろアルコールは抜けるよ？」
「う……おしっこしゅる」
「はいはい、こっちね」

気がつくと俺はハロに支えられてトイレにいた、一体何が……。
少し頭がズキズキする。

「ハロ……俺、なんかすごい恥ずかしい事した気がする」
「多分気にしない方がセータのためだよ」
「うぅ……」

俺はズボンを上げ、食卓に戻る。
全然手がつけられていない料理と減ったお酒を見て察する。多分この身体、お酒にめっぽう弱い。

「それじゃ、今度こそちゃんと食べようね」
「あい……」

俺はまだ少しふわふわした気分で美味しい料理を食べるのであった。