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17話 綺麗な故郷

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───数週間後後、俺はハロと共に街を歩いていた。

「ハロ、昨日の報酬受け取ったよ!」
「…………」
「ハロ!」
「え?あぁ、ありがとうセータ」
「ハロ、今日はどこに行くの?」
「んー、今日はね……あ、そうだ!ちょっと寄りたいところがあったのを思い出したよ!」
「ハロ、最近忙しすぎるんじゃないか?ちゃんと休んでる?」
「え?うん、僕は毎日元気だよ?」
「そう……」

まあ本人が良いと言うならいいのだろう。
しかし最近はずっとこの調子だ。
上の空だったり、あきらかに元気が無かったり。何かを隠しているような気がする。
そんな事を考えながら歩いているとハロが突然立ち止まる。

「着いたよ、ここだ」
「ここは……武器屋?」

中に入ると鉄の匂いが鼻をつく。
壁一面に剣や槍、弓などが飾られている。
俺が最初に装備を買ってもらったお店とは異なった、とても専門的なお店のようだ。
そして奥には珍しい魔法の道具なども置かれている。

「こんにちは、店長さんいますか?」
「おう、ハロか!久々じゃねぇか!またうちの商品を買ってくれるのか!?いい弓を揃えてるぜ!」
「いえ、今日は違うんです、少しお願いがありまして」
「なんだ?言ってみな!」
「実はですね……」

ハロが事情を説明すると、店主は驚いたように声を上げる。

「おいおい、そりゃ本当か?そいつは確かに珍しいな……わかった、こっちで調べてみるぜ」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」

そう言うと2人は店の奥へと消えていった。
俺は店の外で待つ事にする。

「……なんかあったの?」
「ああ、ちょっと頼まれ事をされたんだよ」
「ふぅん」
「……セータは僕が急にいなくなったら寂しい?」
「え?いや別に」
「……即答されると傷つくんだけどなぁ」
「だってどうせすぐ戻ってくるでしょ?」
「…………」
「ハロ?」
「……なんでもないよ、さ、帰ろうか」
「ああ」

それから数日は何事も無かった。
いや、正確に言えば、ハロが出かける頻度は増えた。
何をしているかはけっして教えてくれないが、ハロがいない時は大抵あの武器屋の主人の所なようだ。
2人が一体何を話し合っているのかはわからない。
でもハロはいつも笑顔だった。
そして、その日は唐突にやってきた。

「セータ、準備はいい?」
「うん?別にいいけど」
「じゃあ行こうか」
「行くってどこに?」
「僕の故郷だよ」
「ハロの?」
「うん、ついてくれば分かるよ」
「……分かった」
「それじゃあ、いこうか」

俺達はファイに乗り、森を大きく迂回して移動する。
依頼等では滅多に来ない場所だ。
何故ならこの辺りはモンスターが一切出ないからだ。
ファイを森の入り口に待機させ、ハロは僅かに道のようになっているそれを進んでいく。
そこには森の中には似つかわしくない、ステンドグラスでできたようなオブジェクトが置いてあった。
その違和感に多少身構える。

「ハロ……これは?」
「警戒しなくても大丈夫だよ、これはクロスゲートっていう大掛かりな移動用の魔法道具さ」
「移動用……瞬間移動ができるやつ!?」
「はは、そうだね、とても高価な物だから滅多にお目にはかかれないけど」
「なんでこんなところに……」
「セータ、手を」
「ん?」

ハロがそのオブジェクトに触れて魔法を唱えると立ちくらみのような閃光が目の前を包む。
そして一瞬で景色が変わる。
そこは、とても美しい場所だった。
周りには見た事のない植物や果物が実っており、少し遠くに見える村の中にはお洒落な家がいくつも見える。
陽気な音楽が流れてきそうだ。

「ここは?」
「僕の故郷の村さ」
「ハロの?」
「素敵な場所だろう?」
「うん、恐ろしい程綺麗な場所だね」
「気に入ってくれたかな?」
「もちろん」
「良かった」
「ハロの家族や友達に会いにいくの?」
「……そうだね」

ハロは笑ってはいるが、明らかにテンションは低い。
故郷だというのに何故なのだろうか。
その疑問は村の中に入ると徐々に晴れていく。
昼であるというのにあまりに人の気配がない。
しかし生活感はある、だから村の皆がサプライズで隠れんぼをしているかのような、そんな雰囲気だ。
開演前のエルフの村のテーマパークという表現もできてしまう具合だ。

「ハロ……何があったの?」
「ここはもうエルフは住んでないんだ」
「え?」
「それも30年前くらいからね」
「えぇ!?!?」

ハロが言っていることが理解できない。
いや、理解はできるのだが、目の前で見えている景色と30年という歳月は見合わない。
もしかしてハロがずっとここを維持してきたのか?
いや、流石にそれは無理だろう。魔法か何かによるものなのだろうか。

「ここはね、数十年間ずっと、あまりに浄化されすぎた場所だったんだ」
「……浄化?どういう事?」
「少し長い話になるけどね」

ハロは初めて彼の過去を語ってくれた。
それはそれは悲しい、1人のエルフの少年の話を。
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