英雄記伝

ばにらしぇいく

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第一章

始まりの死

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俺は、今どうなっているんだろう、痛い。
刃物が腹部に刺さっているのがわかる。
どんどん意識が薄れていく中、無精髭を生やし、黒いコートに身を包んだ男の笑顔が目に映った。

「大変この子捨て子よ!ピーター!」
「すぐ家に戻ろう!衰弱しきっている!」

男と女の声が聞こえる。俺、助かったのか?でもなんだ、体が自由に動かせない。
意識が、、そして俺は意識を失った。

「あう、あ、」
俺はどうしたんだろうか、意識を失ってしまった所までは覚えている。運ばれたならなぜ病院に居ないんだ?ここはどこだろうか、民家のようだが?そうだ、アイツはどうなった、捕まえられたのか?
俺の体も自由に動かせない。

「ねぇ!ピーター!この子起きたわ!」
「おぉ!よかった、外傷は特に問題はなさそうだし、熱もないな、よかった」

そう言って赤髪の女と黒髪の男が話している。この人たちは誰なんだろう。外国人?日本語ではないので何を言ってるのかが分からない。年齢は2人とも見るからに20代前半と見える。言葉が通じるかはわからないが、とりあえずここがどこなのか聞かなくてはいけないな。

「あうあうあー?」
え?どういうことだ?言葉が喋れない。
それより俺の声じゃない。赤ん坊の声だ。
自分の手を目の前に出してみる。あれ?これが俺の手?
「あー?」

俺はどうやらピーターという男と、メルという女の2人に弱っていたところを拾われていたようだ。しかしなぜ赤ん坊になっているのか?恐らく転生をしたのであろう。
あの時警察官だった俺は調査で犯人に刺されて死んだのだ。しかし、ただ生まれ変わっただけなら理解しきれるのだが、どうやら異世界転生をしてしまったようなのだ。
メルとピーターはどちらも冒険者のようで、最近結婚した新婚らしい。そんな2人に拾われた俺の名前はシノと名付けられた。ミドルネームはピーターの方のナロウになり、戸籍上では、ピーターが俺の父親になるらしい。
「あ~、シノは可愛いなぁ~」
「ちょっとピーター顔近づかせすぎ!シノが嫌がるでしょ!?」
正直俺はなんとも思っていないがここは笑顔でかわいく喜んでやろう。
「うあーう!」
「ほら!シノ喜んでるぞ!」
「シノ嫌だったら嫌って言っていいのよ??」
「ちょっとさっきから俺の事いじりすぎじゃないか?」
「あらー、そんなことないわよ?」
2人とも仲がいいんだろうか?悪いんだろうか?よくわからない。



「ふっ!はぁっ!」
ピーターは剣士らしい。こんな大きい刃物日本で振ってたら即逮捕だ。
そんな俺ももう6歳だ言語も理解出来るようになり話せるようになった。
「お父さん!遊んでくる!」
「おう、気をつけて行ってこい」
「はーい!」
メルは旅に出たので今はピーターと2人暮らしだ。ピーターは本当に真面目な剣士としてこの村で有名で、俺もそんなピーターを認めている。
「うわぁぁぁ、ま、魔物っっ」
誰だ?魔物に襲われているのだろうか?
声のする方に俺は足を運んだ。
そして、そこには、狼のような魔物が居た。初めて魔物を見た。怖い。
「ぼ、ぼうず逃げろ!殺されるぞ!」
襲われているおっさんに言われるが、俺は少しの正義感とピーターの事を思い出しその場から逃げ出さなかった。
「俺が倒します!おじさんは逃げて!」
「ボウズ!何を言ってんだ逃げろ!」
俺は近くにあった先端の鋭利な木の棒を手に取り、勉強していた魔法を詠唱した。
「水の神よ、我に水の力を」
水の魔力が左手に集まる。
「ウォーター!」
水が魔物にかかる。
「グルァァァ」
魔物が怒っているのがわかる。
しかしまだ水をかけただけだ。
「ささやかな風を我が手のひらに、ブリーズ!」
風が水のかかった魔物にかかり、寒がっている隙に、すかさず木の枝を投げる。
「今念力をこの我に、サイキネス!!」
投げた枝がこちらに戻ろうとしたところで
間にいた魔物のケツに刺さる。
「キャイン!!」
恐怖を感じた魔物は逃げ出した。
どうやら勝ったようだ。怖かった。
幼少期に魔法をピーターから教わっていなかったら死んでいただろう。しかし俺は簡単な初級の魔法しか使えない。よく魔物相手に勝てたものだ。
「ボウズおまえ、、」
おっさんがこっちを見て驚いている。
なんだろう?なにがそんな衝撃なのだろうか?あぁ、つかれたな、、
そう思った瞬間俺は意識を失った。
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