21 / 27
後日談
えみりちゃんといぬ(そのはち)
しおりを挟む明後日から、旅行に行こう。
突然の旅行、そして明後日からという行定に、咲里は正直面食らっていた。
だが、せっかくの提案を無下に断ることはできず、そもそも旅行を提案してくれたこと自体は心底嬉しかった。くろが何を考えて急に旅行を提案してきたのかは定かではなく、あくまで推測にはなってしまうが、おそらくくろなりに咲里を気遣ってくれたのだろう。
くろが文明の利器を活用して予約した温泉宿は、咲里の家から電車で二時間ほどの場所にあるらしい。なんでも一年中美味しいカニが食べられることが売りなのだそうだ。
それほど遠く離れた場所に出かけるわけではなく、小旅行といった体ではあるが、初めてのくろとの旅行に、咲里は正直かなり舞い上がっていた。
旅行の準備をしている間、期待の狭間に微かな不安が過ぎったが、その度咲里は薄ら暗い感情に無視を決め込んでいた。
何も恐れることなんてない。大丈夫だから、今は目の前の旅行のことだけを考えていればいい。
かくして、小さな黒いスーツケースに二人分の荷物を詰め込み、二人は二泊三日の温泉旅行に出かけることとなったのだが。
見慣れた黒いカーディガンを纏い、スーツケースを引きながら先導するくろの後ろで、咲里は落ち着きなく交互にくろの顔と周囲の景色を見回し、かたまった。
ここに来る道中、観光地らしく木々に囲まれ綺麗に舗装された道は、夏休み前ということもあって程よい静寂に支配されていた。歴史を感じさせる木造りの暖かな建造物の数々も、十二分に咲里の心を躍らせた。
それは、大いに結構なのだが。
「どうかしたのか」
(どうかしたのか、っていうか)
旅館のエントランスの中、足を止め体ごとゆっくりと振り返ったくろは、動揺する咲里を尻目に落ち着き払っている。
外から見ると一見なんの変哲もない簡素な白いビルなのだが、一歩足を踏み入れた瞬間たちまち世界が一変した。清掃の行き届いたふかふかの真っ赤な大きな絨毯、隅に設けられた談話スペースに置かれたソファーは素人目に見ても高そうで、気のせいでなければ視界の隅に人工の滝のようなものまで見えている気がする。
(せ、世界がキラキラしてる)
比喩ではなく、実際に照明が眩しい。
普段と変わらない半袖のブラウスにカーディガン、白いフレアスカートという至って質素な格好で来てしまったことに多大な罪悪感を抱くのだが、周囲を見渡せば、フロントにいる客は皆咲里やくろと大差ない普段着だ。
あわあわと視線を動かし、気後れしてしまう咲里を尻目に、くろは涼しい顔でフロントへ向かって歩いていく。
着物姿の女性従業員と話すくろを、咲里は少し離れた場所から怯え混じりに伺っていた。
「ようこそお越しくださいました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「黒井で予約を――」
(黒井)
初めて耳にする苗字を、頭の中で数度反芻する。
その間にくろは、受付でスーツケースを預け、身軽な格好で咲里の元へと戻って来た。
「チェックインまで、まだ時間がある。それまで少し、歩くか」
「うん。……あ、あの、黒井って」
頷きを返したのち、くろと並び立ち歩きながら、そんなことを尋ねる。
咲里の疑問に、くろは「ああ」となんとはなしに、気の抜けた声を返した。
「宿を取るための、……偽名だ。黒色の「黒」に、井戸の「井」、健康の「健」で、「黒井健」。「くろ」のままだと、怪しまれると思った。……余計だったか」
「ううん。ただ、ちょっと気になっただけだから」
言われてみれば、それもそうだと納得する。
「……黒井、健」
口をもごもごと動かし小さく名前を繰り返した後で、はたと一つの考えに至る。
(もしかして、「黒い犬」だから「黒井健」?)
なんと安直なのだろうと思いはすれど、咲里も人のことをとやかく言えるような立場ではない。
(……黒色だから「くろ」って名付けたのは、私だし)
我ながら、ネーミングセンスが壊滅的だ。単純にもほどがある。
犬と飼い主は似る、という言葉を以前どこかで聞いたことがあるが、こんなところで似なくてもよかったのに。
今にして思えば、もう少し熟考して名前を付ければよかった。
(最初は、怪我が治るまでの付き合いだと、思ってたし。とりあえず、名前がないと不便だなと思って、くろって呼んでたけど)
相変わらずの無表情のままエントランスをくぐり、どこからともなく日傘を取り出してみせるくろの横顔を呆然と眺めながら、そんなことを考える。
今まで、咲里に対してこれといって不満を口にしたことのない男ではあるが――
(不服、だったりしないのかな)
「あの、くろじゃなくて、これからは、……黒井さんって、呼んだほうがいい?」
日傘を差そうとしていた男の腕が、ぴたりと止まる。
大きく目を見開いた後、それこそ怒っているかのようにきつく寄せられた眉根に、咲里の方がたじろいでしまう。あんたは何を言っているんだと、言外にそんなことを言われているような気がした。
「だ、だって、あの、私、ネーミングセンス、ないし、くろがそっちの方がいいっていうなら、今からでも遅くはないっていうか――」
「黒井は、あくまで手続き上必要だったから考えただけだ。……前にも言った。あんたから貰えるものは、なんだって嬉しい。あんたが呼び方を変える必要はない」
「……でも」
「「くろ」でいい」
断固として変える気はないと、強い口調で言い切られてしまえば返す言葉はないわけで。不機嫌さを隠しもしない声音に、咲里は押し黙ることしかできなかった。
「わ、分かった」
渋々頷けば、くろは満足そうに微かに口角を吊り上げる。
話はこれで終わりだとばかりに、開きかけていた日傘を広げ、くろは傘を差すのとは反対の腕で咲里に対して三つ折りにされた観光案内を差し出してきた。
「あんたはどこに行きたい」
恐る恐る、くろの手からマップを受け取る。
マップをパタパタと開いていけば、パステル調の優しいイラストと共に、軽快なスポット紹介文が咲里の目に飛び込んできた。
事前にくろから少しだけ話を聞いていたが、ここから少し離れた場所にある、見渡す限り一面に広がる向日葵畑が一番の目玉らしい。
だが、今から向かうには些か遠い。
(チェックインの時間、確か五時って言ってたっけ)
ちらりと傘の隙間から近くにあった時計塔に視線をやれば、時刻は四時少し前となんとも微妙な時間を指していた。
(二泊三日なんだし、今日はそこまで遠くに行かなくても、いい……よね)
地図を見れば、温泉街を取り囲むようにして様々な商店が立ち並んでいるのが読み取れる。実際に咲里も道中、飲食店や土産物屋等様々な商店を目にしてきた。
「たくさん近くにお店があるみたいだから、見て回ってもいい?」
伺うように視線を動かせば、想定外に近付けられた黒い瞳と視線がかち合う。
少し顔を動かしただけで、頬と頬が触れ合ってしまいそうだった。
「ああ」
浮かべられた微笑みは、相も変わらず溶けそうなほどに甘い。
何度見ても慣れないなぁ、だなんてことを赤くなった頬で考えながら、咲里はごくりと息を呑む。動揺する咲里を尻目に、くろはゆっくりと屈めた背を伸ばしていった。
そのまま流れるような動作で自然に繋がれた腕に、以前一緒にショッピングモールに出掛けた日のことを、嫌が応にも思い出してしまう。あの頃は、自分の中に芽生えた感情の変化を理解出来なかったが。
「……咲里?」
「……なんでもない」
全身が熱を帯びているのは夏の暑さのせいだけではないのだと、今ならはっきりと認識できる。
絡められた指に力を込め握り返し、咲里は日傘を差す男に微笑みを返す。
好きなのだ、くろのことが。一人の、男として。
繋いだてのひらから伝わる熱はどこまで心地よく、咲里に現実を忘れさせる。
歩幅を合わせのんびりと歩いてくれるくろに、なんとも言えない気恥ずかしさを覚えながら、二人はゆっくりと蝉の声を聞きながら石造りの坂道を下っていく。
しばらくすると、旅館へ向かう道中目にしたレトロな風情の商店街が視界に飛び込んでくる。
人ごみに混じり、ウィンドウの中を彩る様々な商品を眺め歩いているだけで、咲里の心は浮き足立っていく。
しばし商店街を見て回ったのち、咲里は一軒の店の前でゆっくりと足を止めた。ショーウィンドウに飾られた商品が、太陽の光を反射し上品な輝きを放っている。
どうやら、ガラス製の簪や、かわいらしくデフォルメされた動物の置物などを販売しているのを見て察するに、硝子細工の店らしい。店はそれなりに流行っているようで、窓ガラス越しに若い女性を中心に賑わっているのが見て取れた。
多少男性が混じっているのは、おそらく彼女の付き添いだろう。
「気になるのか」
「うん。……見ていってもいい?」
くろが無言で頷きを返すのを確認し、咲里はゆっくりと繋がれていた腕を離した。
背後でくろが日傘を畳むのを認識しながら、恐る恐る木製の店の扉を開けていく。
和風な佇まいながらも白を基調とした独特な雰囲気を醸し出す店内を、小綺麗な棚に並べられた商品を割ってしまわないように慎重に歩いていく。店内の照明を反射し、キラキラと輝く硝子細工の数々は、宝石と言われても信じてしまいそうなまばゆさでもって、咲里の視界を侵食していく。
熊や猫、蛙などの手のひらサイズの愛らしい硝子細工が並ぶ中、咲里は不意に犬の姿を見つけた。
(犬……)
ぴたりと咲里を守るようにして背後に佇んでいるくろに視線をやれば、周囲の女性客の視線を気にも留めず、咲里と商品を交互に瞳に映しては、どこかご満悦な様子で口角を吊り上げている。
くろが興味を抱いてくれているのは、自分だけ。そんな事実を再認識して、咲里はほんの少しだけ薄ら暗い優越感を覚えた。
「……あ」
そんな風にして、しばらくふらふらと店内を眺めていたところで、咲里は不意に声を上げた。
(これ、耳が折れてる)
両耳がきっちりと揃った立ち耳の犬の置物の中、咲里が見つけた一つだけ、左耳がぽきりと綺麗に取れてしまっていた。
おそらく、誰かがうっかり商品を落として折ってしまったのだろう。
贔屓目かもしれないが、耳が折れている点も含めて、行儀よくお座りをしたその透明な犬の硝子細工が、咲里にはどことなくくろと似ているように思えた。
指を切ってしまわないよう慎重に持ち上げ、手のひらの上に置いた後、まじまじと眺めてみる。
左耳がなく、人に接されるのを拒むかのような極悪な目つき。作る時に失敗したのだろうか、よくよく見れば他の置物に比べて口角の上がり方がどうにも不自然な気がする。
(やっぱり、……似てる)
背後に密着しているくろと置物を交互に眺めては、何度も小さく頷く。
「それ。……気に入ったのか?」
「うん」
「だが、耳が――、………………あ」
途中まで口にして気が付いたのだろう。
間抜けな声を漏らし、くろの動きが止まった。
プルプルと小刻みに震えたかと思えば、不自然に空中で腕を彷徨わせ、咲里の方に伸ばしたかと思えば、またしても下げるという動作を何度も繰り返しては、きつく歯を食いしばっている。よく見れば、どことなく耳が赤いような気もする。
(こ、これは、照れてる……、のかな)
珍しく激しく動揺しているくろを見ていると、自然と口元に笑みが浮かんだ。
先日出掛けた時に咲里が照れているのを見ていたくろも、こんな心境だったのだろうか。
「私は、これでいいの」
「……咲里」
恨めしげな声を上げられたところで、ちっとも怖くはなかった。
「……アイスの時の、お返し」
追い打ちをかけるようにしてそう言えば、くろはグッと言葉に詰まる。
あからさまに悔しそうな顔をするくろに、咲里はたまらず吹き出していた。
こんなやりとり、以前の咲里では考えられなかったように思う。
いつも誰かの機嫌を伺っていて、ろくに自分の意見を口にできなかった臆病者。
そんな自分が、誰かと和やかに冗談を交わせるようになるだなんて思いもしなかった。
しかもそれが、人外の魔と成り果てたかつての愛犬だなんて。
人生、最期まで何が起こるかわからない。
そんなことを考えながら、咲里は店の奥にあるレジへと足を進めた。
くろに財布を取り出されてしまう前に、今度こそは自分で払おうと鞄の中をあさるのだが、またしてもくろの方が早かった。
(結局、私の財布の中身も今となってはくろのお金だし……。あんまり、大差はないのかもしれないけど)
なんとなく、「買ってもらう」という行為に、未だ咲里は抵抗感を抱いている。
抵抗というよりは、一瞬の罪悪感といったほうが近いのかもしれない。
――それこそ、こんな自分が幸せになってもいいのだろうかという、一種の呪いのような。
「申し訳ございません!」
ふと、店員の謝罪の言葉に考えを中断させられる。
「すぐに、他のものとお取り替えいたします!」
どうも、不良品であることを詫びられているらしい。
「あ、いえ! 大丈夫です! わ、私は、これがよくて。それに、その。……味があって、いいと思うんです!」
店員はしばし困惑している様子だったが、咲里の説得に折れてくれたのか。
渋々、耳の折れた犬の硝子細工を包んでくれた。
「あの、お代は」
咲里に小さな紙袋を渡し、そのまま代金を受け取ろうとしない店員に、咲里はぼそりと疑問の言葉を零す。
「不良品に代金をいただくわけには参りません。それに、――いいものを見せてもらいましたし」
どこか含みのある女性店員の微笑みに、咲里はびくりとする。
突発的に脳裏を過ぎったのは、九条正孝の姿だった。
(ま、まさかこの人も霊感が)
くろの正体がバレたのかと怯える咲里を尻目に、店員は朗らかな笑顔を浮かべたまま再び口を開く。
「素敵な彼氏さんですね」
「えっ」
ボッと、頭から湯気が出るかと思った。
(か、か、か、彼氏)
何度も頭の中でその言葉を反芻しては、紙袋を抱く腕に力をこめる。
自分の中ではそんな風な認識ではあったが、こうして他人にくろとの関係を評されるのは、どこか気恥ずかしくて、同時にとてつもなく嬉しかった。
ちゃんと、他人の目から見ても、自分たちはそういう関係に見えているのだと、認めてもらえたような気がして。胸の奥が、じんわりと温まっていく。
ありがとうございます。
そんな風に言おうとした咲里の言葉を遮ったのは他でもない、横に立つもう一人の当事者だった。
「……彼氏じゃない」
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
ルール
新菜いに/丹㑚仁戻
ホラー
放課後の恒例となった、友達同士でする怪談話。
その日聞いた怪談は、実は高校の近所が舞台となっていた。
主人公の亜美は怖がりだったが、周りの好奇心に押されその場所へと向かうことに。
その怪談は何を伝えようとしていたのか――その意味を知ったときには、もう遅い。
□第6回ホラー・ミステリー小説大賞にて奨励賞をいただきました□
※章ごとに登場人物や時代が変わる連作短編のような構成です(第一章と最後の二章は同じ登場人物)。
※結構グロいです。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
©2022 新菜いに
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
禁踏区
nami
ホラー
月隠村を取り囲む山には絶対に足を踏み入れてはいけない場所があるらしい。
そこには巨大な屋敷があり、そこに入ると決して生きて帰ることはできないという……
隠された道の先に聳える巨大な廃屋。
そこで様々な怪異に遭遇する凛達。
しかし、本当の恐怖は廃屋から脱出した後に待ち受けていた──
都市伝説と呪いの田舎ホラー
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
俺嫌な奴になります。
コトナガレ ガク
ホラー
俺は人間が嫌いだ
そんな青年がいた
人の認識で成り立つこの世界
人の認識の歪みにより生まれる怪異
そんな青年はある日その歪みに呑まれ
取り殺されそうになる。
だが怪異に対抗する少女に救われる。
彼女は旋律士 時雨
彼女は美しく、青年は心が一瞬で奪われてしまった。
人嫌いの青年が築き上げていた心の防壁など一瞬で崩れ去った。
でも青年はイケメンでも才能溢れる天才でも無い。
青年など彼女にとってモブに過ぎない。
だから青年は決意した。
いい人を演じるのを辞めて
彼女と一緒にいる為に『嫌な奴』になると。
バベルの塔の上で
三石成
ホラー
一条大和は、『あらゆる言語が母国語である日本語として聞こえ、あらゆる言語を日本語として話せる』という特殊能力を持っていた。その能力を活かし、オーストラリアで通訳として働いていた大和の元に、旧い友人から助けを求めるメールが届く。
友人の名は真澄。幼少期に大和と真澄が暮らした村はダムの底に沈んでしまったが、いまだにその近くの集落に住む彼の元に、何語かもわからない言語を話す、長い白髪を持つ謎の男が現れたのだという。
その謎の男とも、自分ならば話せるだろうという確信を持った大和は、真澄の求めに応じて、日本へと帰国する——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる