えみりちゃんのいぬ

ぬえもと

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じゅうに

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 咲里の体を抱きかかえたまま、ゆっくりとくろが身を起こす。
 再び床の上に向かい合って座り込んだかと思えば、次の瞬間には咲里の体は空中に浮かび上がっていた。
 突然体を襲った浮遊感に、咲里は咄嗟に男の首に腕を回す。
 咲里を胸の中に抱きかかえた黒衣の男は、それが心底喜ばしいとばかりに咲里を抱く力を強めていた。
 階段を登り、片手で咲里を抱きかかえたまま寝室の扉を開けると、男はなだれ込むようにしてベッドの上に咲里を下ろし、その上に覆い被さった。
 咲里の背中とくろの胸が、ぴたりとくっつけられる。首筋に口付けを落とし、ぶちぶちと乱暴にブラウスのボタンを外されてしまえば、開け放たれた胸元からホックを外されたブラジャーが垂れ下がる。
 男の侵入を遮るものは何もない。もがけばもがくほど、くろは咲里を絡め取っていく。

「ひ、っ……ぁ」

 もはやその機能を放棄したブラジャーの隙間から、容易に男の腕が入り込んでくる。
 ぐりぐりと執拗に下肢を咲里の足に擦りつけては、心臓の鼓動を確かめるようにして、くろはゆっくりと微かなふくらみを揉みあげていった。両手で胸をまさぐり、先端をつまみあげてはいたずらにこねくり回す。

「えみ、り」

 耳元で吐き出される息は、火傷しそうなほどに熱い。
 視界の隅では男の手の中で形を変えていく胸の膨らみが映り込み、視覚でも聴覚でも咲里を追い詰めていく。

「かわいい、咲里。……俺の、ぁ、咲里……っ」

 片方の腕が胸から離され、咲里の腰を這う。
 そのままプリーツスカートをたくし上げ、秘所へと伸ばされた腕に既に蜜が滲み出しているのを悟られるのが嫌で必死に体をばたつかせるが、背後の男に体重を少しかけられれば軽々と押さえつけられてしまう。
 性急な手つきでショーツ越しに割れ目をなぞられれば、それだけで体にぶるりと震えが走った。

「もう濡れてる。咲里、嬉しい。……あんたも、俺を欲しがってる」

 男の指摘に、かぁと頰が熱を帯びる。
 くろがてのひら全体を使って秘所をこすりあげるたび、にちゅ、じゅぶ、という湿った音とともにゆるやかな刺激が咲里を襲う。男の手つきは酷く性急だった。咲里が十分感じ入っているのを認識すると、ショーツの隙間から指を滑り込ませ、つぷりと人差し指を未熟な蜜口へと挿し込んでいく。ゆっくりと、腕の中に納まっている少女の存在を確かめるようにして、くろは抜き差しを繰り返す。
 ぬぷ、にちゅっ、と恥ずかしい音を立て奥へ奥へと誘おうとする己の浅ましさに、咲里は枕に顔を埋め、もたらされる快楽の奔流にただ堪えていた。

「あ、ぅ……っ、ん!」

 男の指がある一点をかすめた時、男の指を食いちぎらんばかりに膣が締め付けを強めた。びくりと体を大きく震わせ、咲里の口の端からは飲み込みきれなかった唾液が漏れ出、喉を伝い降りていく。
 それをくろが見逃すはずもなく、差し込む指を二本に増やし、明確に咲里が快楽を覚えた一点を集中的に刺激していく。自身の快楽を放棄し、ただ咲里を高めていくだけの行為に身も心も蝕まれていく。

「だめ……! そっ、こ、はぁ、ほ、っぁ、とに……っ!!」

「どうして。……あんたのここは、こんなに悦んでるのに」

 言いながら、くろは秘所を責める手つきを一層執拗なものにしていく。
 バラバラに指を動かされ、わざとらしく咲里の感じる場所を責められれば、あとはただ高みに向かって登りつめていくだけだった。

「ひゃぁああああぁあああっ!?」

 ぷしゅっと、陰部から勢い良く何かが飛び出す感覚がした。体がぴんと一際強く張り詰めた後、どろどろと秘所は蜜をこぼし続け、急激な脱力感が咲里を襲う。
 そのままだらんと力なく体を弛緩させた咲里の髪を掻き分け、うなじに口付けを落とし、くろは満足そうに笑っていた。息を荒げ、力なく虚空を見つめる咲里の喉元を舌でなぞり、こぼれ落ちた唾液をたどるようにしてそのまま咲里の口に舌を差し込んでいく。
 その間にも、蜜口への責めが緩むことはない。差し込む指を三本に増やされても、一度絶頂を迎え弛緩した隘路は昨晩まで処女だったのが嘘のように易々と男の指を咥え、飲み込んでいく。上も下も弄ばれ、咲里はもはや何も考えられなくなっていた。
 ただ背後の雄にもたらされる指戯に、舌戯に、溺れ堕ちるだけの雌犬。それが、今の篠塚咲里だった。

「んっ」

 ぐぽっと、男の指が一気に秘所から引き抜かれる。
 互いに中途半端に服をまとったまま、一刻も待てないとばかりに咲里のショーツを脱がせ、ズボンをくつろげると、くろは躊躇いなく張り詰めた男の欲望を咲里の秘所に挿入した。

「ひうっ、んぁああっ!?」

 一思いに奥まで貫かれれば、それだけで体はわななきを覚える。痛みはない。ただ過ぎた快楽に背をのけぞらせ、甘やかな息を吐くだけだ。
 咲里の腰を掴み、はだけたシャツ間からのぞく肩に口付けの雨を降らせ、男はしばし咲里の中を味わうように静止していた。だがそれも一瞬のことで、くろはすぐにゆるゆると律動を始める。
 狭い肉壁を割り開き、ぎちぎちに咲里の中を満たしていく充足感。けれど、ゆっくりと確かめるようにして抜き差しを繰り返されるたび、体はくすぶった熱をいたずらに蓄積させていった。一度絶頂を知った体は咲里の意思に反し、もっともっとと先を求めて高ぶっていく。
 そんな咲里の望みに応えるようにして、次第にくろの動きは激しさを増していった。後背位のまま咲里の体を抱き、首筋に噛みつき、乱暴に腰を振る。
 揺さぶられてるたびに、半端に支えを失ったブラが胸の先端をかすめ、それがより一層快楽を生み出していった。
 
「え、みり……っ」

「んぅううっ、あ、あっ、ひぅっ、あっ」

「咲里、えみ、り。俺のだ。あんたは、俺の……っ」

「あぅっ、ひっ、あっ、いぅ、あっ、んっ、んぐっ、ぁっ」

 ずぼっじゅぼっ、ぬぷっ。粘着質な音を立て、何度も挿入を繰り返されていく。雁首で肉壁を引っ掻かれる感触に、ぞわぞわと全身を甘やかな刺激が駆け抜けていった。ずんずんと奥を突かれるたび、腹の奥底から愛液が漏れ出していく。
 限界まで引き抜かれた喪失感の後に、子宮口を襲う衝撃。打ち付けられる腰の力強さに、気を抜けば失神してしまいそうだった。けれど、咲里を抱く男はそれを許してはくれない。気絶しそうになれば強く首筋を噛まれ、円を描くようにして中を掻き回される。

 まるで、獣の交尾のようだ。本能のままに行われる、犬の交合。
 好き勝手に揺さぶられ何度も軽い絶頂を繰り返し、薄れゆく意識の中で、咲里はそんなことを思った。
 前回の交わりは、きっと男にとってはただの「マーキング」に過ぎなかった。本気では、なかった。けれど、今は違う。これは咲里の体を自分の女に堕とすだけの、単純明快な侵略行為だ。
 だが、くろを受け入れると決めたのは他でもない咲里自身だ。
 怨霊でもいい。人殺しだっていい。気が狂っていると言われようが構わない。
 数多の屍の上に築いた果てのない幸福な闇の中で、咲里はただきつく目を閉じた。

「好き、だ。……あぁ、えみ、り。えみり、えみり」

 がつがつと強く腰を打ち付けられるたびに、ぎぅと膣が締め付けを強めていく。

「ぁ……っ、わ、たし、ぁっ、……もっ、んっ」

 きつく枕に爪を立て、絞り出すようにして想いを吐き出していく。
 背後を顧み、熱に浮かされた黒い目をまっすぐに見据え、その想いに応えるようにして、咲里はぎこちなく口角を吊り上げた。
 
「好、き……っ、私も、あ、なたが、くろが、す――!? んぅあっ!?」

 最後まで言い切るのを待たず、くろの律動が早められていく。
 咲里の背に自身の腹をぴたりとくっつけ、両手できつく左右の胸をもみしだき、はぁはぁと荒い息を吐きながら、くろは絶頂へ向けてただがむしゃらに少女の体を貪っていた。普段の無表情が嘘のように頬を紅潮させ、興奮をあらわに執拗に攻め立てる男を見ていると、空っぽの心があたたかなもので埋め尽くされていくような気がした。

「……っ、かわいい、咲里、かわいい。嬉しい、あんたが、俺を……っ、咲里、えみ、り、……もっと、聞きたい」

「ふ、ぅ……んっ、く、ろ、……好き。私の、ぁっ、わ、たし、の……っ、くろ……っ」

「あぁ……。えみ、り……っ」
 
 とけあい、からめあい、おちていく。

「う、っ……」

 低い唸り声を上げるとともに、屹立が最奥へと押し込まれる。
 鈴口を子宮口に押し当て、咲里の首筋を噛み、一際強く咲里の体を抱きしめたまま、くろは吐精した。昨晩は腹の上にぶちまけられたそれを、直接中に出されているのだと気が付いた瞬間、咲里はくろを咄嗟に振り払おうとした。
 だが、男の腕はそれを許さない。ぎうと咲里を抱きしめ、肉棒を奥深くに差し込んだまま、それこそ孕むのを心待ちにしているかのように、亡霊はうっそりと笑う。
 
「――これで」

 一向に抜かれることのない男根に、咲里は小さく震え上がる。
 ぺろりと、男の舌が咲里の耳を舐め上げた。

「あんたは、俺のものだ」

 言うと同時に、肉棒を埋め込んだまま、くろはぐるんと咲里の体をベッドの上で回転させた。あらぬ場所を貫かれた衝撃に、喉元から嬌声が漏れ出てしまう。
 白濁を吐き出してなお硬度を保つ男の欲望に、シーツに背を預け、ぎらぎらと欲にまみれた顔をして覆い被さってくるくろを見上げたまま、咲里はごくりと息を呑んだ。

「昨日は、あまり抱いてやれなかった」 

 呆気にとられている咲里を尻目に、くろはスーツのジャケットを乱雑に床に投げ捨て、ネクタイを緩めながら舌なめずりをしてみせる。

「――あんたも、物足りないだろう?」

 その奥にあるものを求めるようにして男根の埋め込まれた少女の腹をなぞり、獰猛な雄の顔をして微笑む男に、かつての従順な飼い犬のおもかげは残されていなかった。


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