えみりちゃんのいぬ

ぬえもと

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そのはち

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 耳の裏を伝い、男はそのまま咲里の首筋を舐め上げた。
 肌の上を這うあたたかな吐息と、男の頭が動くたびに髪が擦れる感触。肩を降り、そのまま胸の先端を甘噛みされれば、軽く腰が跳ね上がった。

「や、めっ……!! う、……ぁ、はぁ……っ」

 咲里の反応を上目遣いに伺いながら、何度も甘噛みを繰り返し、舌先で胸の先を弄びながら、男は低い笑みを零す。不意打ちに、反対の胸の先をつんと指先ではじかれれば、これ以上ないと思っていた高みの先への押し上げられていった。びくんびくんと何度も軽い痙攣を繰り返し、咲里はただがむしゃらに拒絶の言葉を吐き出し続けることしかできない。
 
「ひゃぁあああ!? ぁっ、つい、も、……んぅ、やめ……っ! んあぁあああ!?」

「咲里、かわいい」

「そ、ぁ、なわけ、な……んぅっ、ぁぅ、ぁ」

「……あんたは、かわいいよ」

「か、いくな……っ、ぁ、うっ……ぁ」

「かわいい。……咲里、かわいい」

 頬を紅潮させ、男は洗脳のように同じ言葉を繰り返す。
 信じられないともがく咲里の腰を掴み、男は咲里の蜜口に自身の下腹部を押し付けた。
 瞬間じっとりと濡れたズボン越しに感じる熱を帯びた固いものに、咲里はますます体を硬くする。頬を赤らめたまま絶句する主人に、犬は心底嬉しそうに目を細めていた。
 
「分かるか。……あんたが、俺をこうしたんだ」

 言葉と態度で明確に興奮を現しながら、男はわざとらしくぐりぐりと濡れそぼった女の入り口を刺激する。咲里の中へと押し入ろうとするそれは、布越しにでも男が興奮していることをまざまざと実感させられ、咲里はますます混乱する。

「あんたが好きだ」

 媚肉の割れ目をなぞるようにしてこすり上げられれば、素直になれない心とは反対に、体は素直に蜜をもらす。
 咲里の愛液で、男の下穿きはぐっしょりとぬめりを帯び始めていた。
 それでも信じられないときつく目を閉じ、ふるふると激しく首を横に振る咲里に、男は宥めるようにして閉じられた少女の瞼に口付けを落とす。
 身を乗り出されるとともにますます押し付けられた漲りに、咲里はただ震えることしか出来なかった。

「……俺は、あんたに、欲情してる」

 何度も何度も口付けの雨を降らせながら、男は諭すようにして咲里の肌に触れる。
 だらんと地面に投げ出された咲里の片手を手に取り、男は忠誠を誓うようにして少女の手の甲に口付けを落とした。
 その言葉に偽りはないとばかりに、そのまま少女の細い指先を舌でなぞり、男は一本一本丁寧に指を口に含み舐めしゃぶっていく。
 あまりの暴挙に、体が石になってしまったかのように動かなくなった。
 指を這う舌先の感触に、ぞわりと言い知れぬ興奮に全身の血が煮えたぎる。男に舐め含められた指先が酷く熱い。

「は、ぁ……、あんたの……、味だ」

 うっとりと口角を吊り上げ、男は気でも狂ったかのように執拗に咲里の体を嬲る。
 持ち上げた手首の血管の筋を舌でなぞり、腋を舐め、その匂いに酔いしれながら、次第に下がっていく男の顔は咲里の腰を食む。
 名前を呼び、臍に舌を入れ、骨盤を舌で舐めていきながら、男の舌は咲里の腿の内側へと到達する。軽く甘噛みをされれば、それだけでゾクゾクと体が疼いた。蜜口は勝手にひくつき、男を誘うようにしてとろとろと愛液を垂らし続ける。
 不意に、それまで脚を這っていた男の舌が、雌の匂いに誘われるようにして蜜口を舌でなぞった。

「まって、うっ、そこ、ぁ、は――――っ!!」

 絶句、だった。
 熱に浮かされた美丈夫が咲里の制止の声を聞くはずもなく、秘所からはじゅるじゅると男が蜜を啜るいやらしい水音が響き渡り、咲里の羞恥を煽っていく。

「きた、な……っ!やめ……んうぁ!?」

「あぁ……っ、えみ、り、……っ、美味しい、咲里、えみり、えみ、り、好きだ、ご主、じん、ぁ、咲里、あぁ、えみり、俺の、俺の、ぁ、えみり」

 舌を差し込み、指先でも蜜を掻き出しながら、ずるずると男は無心で咲里の快楽の証を飲み干していた。
 時折わざとらしく蕾を指先で刺激されれば、とろとろと体は素直に男の望むものを吐き出していく。
 咲里の言葉など全く聞き入れておらず、男はこれまでの無表情が嘘のように心底興奮しきり、頬を赤らめながら咲里の全てを食い尽くそうとする。
 それを見て、咲里は本当に犬のようだという感想を抱いた。いままでしっかり我慢してご主人様の言うことを聞いたから、そのご褒美をもらってはしゃぎ、飛び回っている大きな黒い犬。
 大の男が夢中になってやせ細った少女の体を貪っていく様は酷く滑稽で、咲里にそんな倒錯的感情を抱かせていく。

「ぁっ……んぅ! はぁ……っ、あっ、あぁっ、んぁっ!? ぁっ、ぃあっ、あぁあぁあああっ!?」

 腹の奥が、酷く疼いた。過ぎた刺激に咲里の思考は鈍っていき、絶えず腰が跳ね回る。
 足先と背を仰け反らせ、断続的な喘ぎ声を上げ、咲里はただ歯を食いしばり過ぎた快楽を耐えることしか出来ない。
 このままでは、おかしくなる。

「ひっ、ぁ、た……、ぅけて、ぁ、っ、ひぁっ、く、ろ……っ」

 無意識に、咲里は死んだ愛犬に助けを求めていた。この世にくろはいない。そんなことは分かりきっていたが、くろならば、咲里をこの快楽の地獄から救い出してくれる気がした。
 けれど現実は非情なもので、男はますます興奮した様子で咲里の体を弄っていく。
 何度も激しく舌を抜き差しし、骨張った指で咲里の隘路を広げながら、男は感極まった息を吐く。

「……狭いな」

 確かめるようにしてぬちぬちと指で割れ目を弄びながら、男は静かな声を零した。深く埋め込んでは中を掻き回し、ゆっくりと引き抜いていく。
 何度も抜き差しを繰り返す行為に、この先何をしようとしているのか嫌でも痛感させられ、咲里は快楽の狭間でごくりと息を呑む。

 ぎらぎらと欲を孕んだ目で咲里を見下ろしながら、男はついに自身の下穿きに手を掛けた。
 かちゃかちゃというベルトの外される音に、必死に腕で瞳を覆い隠し、咲里は現実から目を逸らそうとする。

「咲里」

 不意に、瞳を抑えているのとは反対の腕が、男の手に掴まれた。
 何事かと咄嗟に瞳を覆い隠していた腕を退けるのと、男が咲里の手を自身の下腹部に導くのとはほぼ同時だった。

「……あんたにも、触って欲しい」

 剥き出しにされた男の劣情に、直接指先が触れる。咄嗟に逃げようと腕を引こうとするが、男はきつく咲里の腕を上から握りしめた。
 限界まで張り詰め先走りを零し、びくびくと激しく脈を打つそこは、火傷しそうなほどに熱い。
 直接手のひらに触れ、視界に飛び込んでくるそそり立つ男の欲望に、咲里は自身の頭が熱に犯され、理性を失っていくのを実感した。
 悲鳴を上げることすらできず、ただされるがままに指先に直接男の欲棒が触れている。
 男の腕が上下するとともに、包まれている咲里の腕も男の肉棒を上下する。扱けば扱くほど、熱い吐息を吐き出し、うるんだ目で咲里を見つめる男の視線に、次第に咲里は魅入られていった。
 ぬちぬちと淫猥な音が響き渡り、咲里の耳を犯す。

「咲里、えみり、咲里、ぁ、えみ、り」

 しつこく名を呼び、息を荒げていく男の様子は間違いなく自分に感じているのだと咲里に実感させ、咲里の地よりも低い自尊心を肯定させていく。
 この人は、本当に私のことが好きなのかと、そうまざまざと痛感させられるほどには、男は無防備な顔を咲里にさらけ出していた。
 どうしてなんて疑問は、男の劣情を前にして頭の片隅へと追いやられてしまう。

「ぁ……咲里、えみ、り……っ」

 男の手の動きが早められる。
 手のひらの中でびくびくと一層激しく痙攣する屹立に、咲里も知らず知らずのうちに息を荒げ始めていた。

「えみ……り、……ぅ、っ」

 男が低い呻き声を上げるとともに、手のひらの中に収められている肉棒が一際強く跳ね、咲里の手のひらの中に白濁を吐き出していく。
 瞬間、濃厚な雄の匂いが咲里の頭を犯した。

 咲里の小さな手の中に収まり切らなかったそれは、咲里の手首を伝い落ちていく。
 その様を上気した目で見つめながら、男はゆっくりと咲里を拘束していた指を離していった。
 男の拘束が外されても、咲里はしばし手を動かすことが出来なかった。
 欲望を一度吐き出したにも関わらず、握っている男の怒張は咲里の手の中に収まらず、未だ衰える兆しはない。
 伺うようにして男の顔を見上げれば、咲里の手のひらからこぼれ落ちた白濁を手に取り、咲里の腹へと染み込ませるようにして塗りたくりながら、うっとりと妖艶に笑む男の黒い目と視線がかち合った。
 その腹の奥底にあるものを求めるようにして、男の手が軽く咲里の腹を押す。
 慰めるようにして口付けを落とされると同時に、秘所に男の屹立が押し当てられる感触がした。
 反射的にびくりと体を震わせた咲里を抱きしめる腕を強めながら、男はねっとりと咲里の割れ目を鈴口で刺激する。どちらのものとも知れぬ粘液が混ざり合う淫猥な音が浴室に反響し、ますます咲里の羞恥を駆り立てていった。

「……俺は、あんたが好きだ。咲里がほしい。……ずっと、あんたのそばにいたい」

 体をわずかに起こし、男は驚きに見開かれた咲里の瞳をまっすぐに射抜く。
 この状況でなんてことを言うんだと、咲里はきつく歯を食いしばった。
 自分に大切な人なんて出来ないし、自分を特別だと思ってくれる人なんていないと、そんなことをずっと思っていた。
 けれど、今咲里を組み敷いている男は、咲里を好きだと言う。

「……あんたは?」

 もう一度同じ問いを繰り返し、男は懇願する。
 咲里にも求められたいと、年端もいかない少女に対し哀願の目を向ける男の目は、滑稽なほど熱に侵されている。
 きつく、咲里はてのひらを握りしめた。
 一緒にいて心地よかった。楽しかった。何より、安堵した。
 嫌いなわけがない。嫌いになんて、なれるわけがなかった。
 恋愛なんて、自分には一生無縁なものだと思っていた。媚肉を微かに割り開かれ、男の欲望を直接目にしてなお、実感がない。

「……ほん、とう、に。……ずっと、わたしの、そばに、いてくれるんですか」

 限界まで張り詰めた意識が吐き出したのは、確認だった。
 涙ぐんだ瞳で男を見上げながら、それでも咲里は男から目を逸らさなかった。
 初めて出来た大切な存在――くろは、咲里の前からいなくなってしまった。咲里なんかを守るために、死んでしまった。咲里は二度と、大切な存在を失いたくなかった。

「わたしのまえから、ぜったいに、いなくならないって、誓え、ますか」

 本当に、卑怯だ。
 男の首に腕を回し、きつく抱きつきながら、咲里は震えながら言葉を吐き出していく。
 男が咲里にどんな回答を望んでいるのか。それを分かっていてなお、咲里は「好き」という言葉を口にするのが恐ろしかった。発したが最後、この男を失いそうな気がしていた。分かっている。この男が咲里よりも歳上である以上、先にいなくなる可能性が高いのは男の方だ。分かっていてなお、咲里は同意の言葉が欲しかった。
 どこまでもずるくて、臆病だ。けれど、背を撫でる男は機嫌を損ねたそぶりを微塵も見せない。

「……ああ」

 感嘆に満ちた肯定を吐き出し、男はぐっと咲里の隘路を割り開いていく。
 瞬間襲った身を内側から切り裂かれるにぶい痛みに、咲里はますます男の首に回した腕に力を込める。
 痛みに背をのけぞらせ、何度も口を動かし声にならない悲鳴を吐き出しながら、咲里はきつく目を閉ざした。じんじんと、蜜口が酷く痛んだ。ゆっくりと狭い膣路を満たしていく屹立の感触が、妙に生々しい。腹の中に自分ではない何かが埋め込まれていく感触には酷く違和感があるはずなのに、痛みを上回る充足感が咲里の中を満たしていった。

「……ずっと、あんたの傍に」

 言うと同時に、それまでゆるやかに中を犯していた男の怒張が、最奧へと一気に押し込まれた。痛みが頂点に達すると同時に、ぶちっと何かが切れるかのような感触が咲里の身を襲う。みちみちと限界まで押し広げられた隘路が、じんじんとした鈍い痛みと熱でもって咲里を支配していく。
 膝の上に咲里を抱きかかえ、首筋に甘噛みを施し、男は慣らすようにして軽く咲里の腰を揺すった。瞬間、痛みとともに背を駆け抜けていった言い知れぬ甘やかな刺激に、咲里は堪えるようにしてぐりぐりと男の首筋に額を埋めた。

「……締まる、な」

 独り言とともに、機嫌良さそうに喉を鳴らしながら、男は咲里の腰を掴み前後に揺らし続ける。求められているのだと実感させるそれに、咲里は自身の膣が無意識に男の性を求めて蠢き、締め付けを増しているのを実感した。
 ぬちぬちと、結合部からは粘着質な音が絶えず響き続けている。どこまでもゆるやかな動きで咲里の反応を伺いながら、男は円を描くようにして咲里の中をゆっくりと慣らしていく。
 やがて、咲里の中を満たす痛みがゆるやかな快楽に上書きされ始めた頃合いを見計らって、男は下から強く咲里を突き上げた。

「ひぁっ!?」

 ぞわぞわと、背を一際強い刺激が駆け抜けていった。
 きつく締め上げれば締め上げるほど、男は求められて嬉しいとばかりに咲里を抱く腕を強めていく。
 がくがくと上下に揺さぶられながら、咲里は呆然と熱に浮かされた目で自身を見つめる黒い目を見上げた。目が合うと同時に、男は咲里の長い黒髪に指を通し、甘えるように口付けを乞う。舌先で咲里の唇を舐め上げるそれに、咲里は応えるようにして口を開けた。
 舌を絡めあい、口付けを深めながら、男は無遠慮に咲里の中を突き犯していく。
 引き抜かれると同時に求め乞うように蠢きを増す隘路に、男は一層機嫌をよくしたようだった。

「咲里、……えみ、り」

「ぅっ、ぁっ、ひっ、ぁっ、あっ、あっ」

「かわいい。咲里。……好きだ、好き、なんだ」

 凍えきった心を溶かしていくような抱擁は、熱砂のようにじりじりと咲里を溶かし、翻弄していく。じゅぶじゅぶ、ずぶずぶと、執拗に咲里を貪る男の攻め手が緩まるそぶりはない。
 再び風呂場のタイルの上に押し倒されれば、男の額から伝い落ちた汗が咲里の肌を濡らした。深く差し込んでは引き抜き、さらにその奥にあるものを求めるようにして。
 されるがままに揺さぶられながら、夢中になって抽送を繰り返す男を、不意に、愛おしいと思った。どうしてだなんて疑問は鳴りを潜め、暴力的なまでに叩きつけられる愛情に、咲里はただ溺れていた。
 咲里の中にくすぶっている微かな罪悪感すらも塗りつぶし、溢れんばかりの愛情をもってして男は上書きしていく。
 手を伸ばし、男の短い黒髪に指を通し、「名前」を呼ぼうとして。

「っ――、ぁ」

 屹立が一際奥を突くと同時に、頭の中が真っ白になった。
 痙攣を繰り返す咲里の中から勢い良く引き抜かれた怒張が、咲里を白濁に染め上げていく。

(……名前、知らないんだった)

 そんな事実に、どうしようもないやるせなさを覚えながら。
 満足そうに鼻を鳴らし、咲里の顔に口付けを落とす男を呆然と視界の隅に収め、咲里は力なく瞼を閉じていった。


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