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good luck boyと不幸な男

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「だから…一度会ってか」

  ブチッ……

あ、切られた

俺は人生で最も不幸な一日を終えようとしている

朝からいつも乗っている電車は遅れ

大切なプレゼンには出れず、大目玉

昼には気分を盛り上げるためにコンビニでいつもよりリッチに弁当を買えば箸が付いておらず

残りのお昼休みを公園で黄昏ていると、風船をひっかけてしまった少女を助ければ、親からの怪しい目と共に早足で避けられ

出張で落とした請求書は不備から、自腹になり

昨日まで残業に残業を重ねて作った書類はデータ消失…からの残業

そして今、結婚を考えていた学生時代からの彼女に振られた

ぐ~~~

「こんな時でも腹減るんだな…」

今日一日何も口に入れていないことを思い出した

しかし、もういい時間だ

空いているのは居酒屋くらいしかない

明日も朝からしなければいけないことがあるため居酒屋は厳しい

他に何かないか周りを見渡すと

どんよりとした、まさに今の俺のような

暗い影が漂う一軒の定食屋を見つけた

「こんばんわ…いいですか?…」

すると

奥から

『いらっしゃい!!ほらここ空いてるから』

店とは180度違う、とても明るい店主が席を指差す

空いてるも何も誰もお客さんはいなかったが…

いくつか注文して、お酒を飲んでいると

店主が

『なんだか、暗い顔してるね?とりあえずおっちゃんに話してみ!』

その陽気な雰囲気に誘われて俺は今日一日の不幸の連続を話した

すると

『それは大変だったな~、よしわかった!俺に任せろ』

『必ず、俺がお兄さんを幸運だと思えるようにしてやる!』

と、どこからそんな自信が湧くのかわからない

根拠のない言葉だったが、どこか救われてた自分がいた

そして、店主と話しながら俺は酒を飲んでいるといつのまにか寝てしまっていた

『お兄さん…お兄さん…起きて!』

店主の声で目を覚ますとスマホを覗く

画面に映った時刻はもうすぐ終電を迎えそうだった

「まずい、終電が…」

俺はポケットにあった財布を取り出そうとするとすると

『お兄さん今日はお代いらないよーすぐに帰りな」

俺はお礼を言って駅に向かおうと既に店内側に片づけられた暖簾をくぐり外に出ようとすると

ドタドタドタ!!!

突然多くの警察官が入ってくる

(すみません、先程そこで人が刺される事件がありまして、たった今ここに不審なものを持った男がいると通報を受けたのですが)

警察が言うと

店主がすぐにここには私と、そのお客さんしかいない

不審な男はいないよと伝えた

俺は、携帯をチラチラ見ながら終電が気になっていると

1人の警察官が俺に近寄り

(すみません、カバンの中少し見させていただけますか?)

「え…ちょっと今忙いでいて…」

『お客さんさん堂々と見せてやりな!この警察官たちに!』

勝手にアツくなっている店主が怒鳴る

すると、警察官が僕のカバンを漁り始める

そして、

(ありました!血が付いた包丁です!)

え…何故に?

俺はハテナが頭にいっぱいにあるが

警察官の行動は早かった

(すみません、少し署の方まで)

「ちょ、ちょっとそんはずは」

先ほどまでの不幸はまるで鼻くそのように

とんでもない不幸が降り注いできた

このまま冤罪だと、会社は…家族は…未来は…

絶望のまま警察官について行こうとすると

『ちょっと待ってください!』

店長が、叫ぶ

『実は、そのお客さん、酔いながら一度お店を出たんです…その時声が聞こえたのですが…』

『誰かから何かを受け取っているようでした…お客さん酔ってたから何も知らずに…』

『お客さんは女性を刺した犯人ではありません…ずっと私といましたから』

俺は、店主の姿が天使に見えた

すると警察官は俺たちの指紋だけ取ってカバンと包丁を持ち

(また、お話はお聞きすることになりますが、今日は失礼します)

と、言いお店を出て行った

「おやっさん、ほんっっとうにありがとう。危うく犯人になるところだった」

『なに、いいってもんよ!ほら言っただろ!』

『今日一日の不幸を吹っ飛ばす幸運だって思えるようにするって』

あの言葉が今になって体を走る

「本当に俺は幸運だったよ、おやっさん!」

『なに、いいってことよ、俺も助かったし』

そして俺は終電を無くし、高いお金を払ってタクシーで帰った

でも、なんてことはない

危うく人を刺した犯人にされるところだったのだから

そして朝が来た

でも今日は湯鬱ではない

最大の不幸を乗り越えたのだから

ニュースで、昨日の事件が流れていた

《昨日、夜に女性が包丁で刺された事件ですが、警察は凶器に残っていた指紋から近所にある…。》

いやー昨日のことを思い出して、また幸運を噛み締める

詳しくわ聞こえなかったが、どうやら犯人は捕まったようだ

俺並みに幸運なやつもいれば、犯人にとっては捕まることは不幸だろうな

そんなことを考えながら家を出る

また、あの定食屋で美味しく店主と酒を飲むために仕事に向かう

ピリピリピリピリ

スマホを取ると

「すみません、こちら警察ですが…」




どうやら犯人は昨日のお店の店主のようだった。

そういえば、刺された人が女性だって…
俺も助かったって…

なるほど……
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