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桃太郎にならなかった話
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昔々
あるところ
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から川の流れにのり、大きな大きな桃が流れてきました。
おばあさんはそれをなんとか川岸に寄せ、重くて持てないため、一度洗濯一式をその場に置き、桃だけを転がしながら持って帰りました。
家で桃だ包丁を準備して、おじいさんが帰ってくるのをおばあさんはじっと待ちました。
数時間して、おじいさんが芝刈りから帰ってきました。
「じいさんや、大きな桃を川で拾ったから、早く見せたくて、あんたが帰ってくるのをじっと待っていたのに、なんでそんなに帰ってくるのが遅いんだい」
おばあさんはおじいさんの帰りが遅いことに、すごく起こりました。
おじいさんは思いました。
大きな桃に目が行きがちだが、大事なのは隣に置かれた包丁じゃ。もしかしたら、アレでわしを…。
「すまなかったばあさんや、わしはお前を裏切ってしもうた。でもわしはばあさんとずっと一緒にいたいんじゃ」
「やはりそうだったのですね。じいさんや……」
おじいさんは、しまったと思いました。
言わなくていいことを言ってしまったのです。
おじいさんは、逃げ出しました。
怯えるようにして、家から出て行ってしまったのです。
「そんなつもりはないのに…。やましいことがある人は自分も何かされると思うものなのかもしれませんね……」
そう呟いた。おばあさんは静かに大きな桃へ包丁を入れました。
数年後
風の噂で、桃から生まれた子供と静かに仲良く暮らすおばあさんの話がありましたが、子供が桃から生まれるなんてと、信じるものはいませんでした。
ただ、子供と仲良く散歩をするおばあさんの姿はよく見られたそうです。
おじいさんは勝手に負ってしまった自分自身への責任の念に駆られて旅をしていました。
おじいさんの幸せを探して。
おしまい
あるところ
おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から川の流れにのり、大きな大きな桃が流れてきました。
おばあさんはそれをなんとか川岸に寄せ、重くて持てないため、一度洗濯一式をその場に置き、桃だけを転がしながら持って帰りました。
家で桃だ包丁を準備して、おじいさんが帰ってくるのをおばあさんはじっと待ちました。
数時間して、おじいさんが芝刈りから帰ってきました。
「じいさんや、大きな桃を川で拾ったから、早く見せたくて、あんたが帰ってくるのをじっと待っていたのに、なんでそんなに帰ってくるのが遅いんだい」
おばあさんはおじいさんの帰りが遅いことに、すごく起こりました。
おじいさんは思いました。
大きな桃に目が行きがちだが、大事なのは隣に置かれた包丁じゃ。もしかしたら、アレでわしを…。
「すまなかったばあさんや、わしはお前を裏切ってしもうた。でもわしはばあさんとずっと一緒にいたいんじゃ」
「やはりそうだったのですね。じいさんや……」
おじいさんは、しまったと思いました。
言わなくていいことを言ってしまったのです。
おじいさんは、逃げ出しました。
怯えるようにして、家から出て行ってしまったのです。
「そんなつもりはないのに…。やましいことがある人は自分も何かされると思うものなのかもしれませんね……」
そう呟いた。おばあさんは静かに大きな桃へ包丁を入れました。
数年後
風の噂で、桃から生まれた子供と静かに仲良く暮らすおばあさんの話がありましたが、子供が桃から生まれるなんてと、信じるものはいませんでした。
ただ、子供と仲良く散歩をするおばあさんの姿はよく見られたそうです。
おじいさんは勝手に負ってしまった自分自身への責任の念に駆られて旅をしていました。
おじいさんの幸せを探して。
おしまい
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