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二人の少女

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「話……ですか……?」

 俺は少女にそう答える。俺に話がある、と言った少女は、薄い赤色の髪をポニーテールで纏めている。身長は160センチ程だろうか。腰には剣を刺しており、ザ・剣士って感じだ。

 もう一人は、水色の髪をした少女だ。髪を結んではいないようだ。あれ、髪を結んで無い髪型ってなんて言うんだっけ?身長は150か155か……。先程の剣士よりも若干低い。

 杖を持ってるけど、魔法使いって奴なのだろうか?

 あ、敬語であることには触れないでくれ。これがコミュ症の性なのだよ。

 

「えぇ。貴方、もしかして聖水を飲んだ?」
「聖水……?」

 知らない単語が出てきてしまい、思わず首を傾ける。すると、少女二人とも驚いたような顔をする。

「まさか……聖水を知らないの……!?」
「は、はい。聞いたことないですね……」
「とぼけても無駄よ?」
「無駄、と言われましても……」

 思わず頬をポリポリとかき、話を誤魔化そうとするが、まぁ無理だよね。

「まぁ良いわ……。なら、質問を変える。貴方、この洞窟の中にある水を飲んだ?」
「あー、あの毒水のことですか。飲みましたよ、酷い目に合いましたが」
「「…………」」

 なるべく明るく振る舞って何もありませんでしたよ、とアピールする作戦。果たして成功なるか……?

「貴方ねぇ……あの水がなんなのか分かってるの?」
「え、毒じゃないんですか?」
「全然違う」
「そういえば、聖水っていってましたが……」

 そう言うと、少女はコクリと頷き口を開く。

「そう、あれは聖水。決して人間が口にして良いものじゃないから、人目のつかない場所で封印してたのに……」
「封印……? 確かに人目のつかない場所ですが……あれで封印って呼べるんですか?」

 やばい……。なんか俺やらかしちゃったかな……?

「そういえば……貴方どうやって結界を破壊したの?」
「なんかひたすら殴ったり蹴ったりしてたら壊れました」
「え、その程度で!? ちょっと、ユイ。どうなってるの?」
「え!? えっと……その……」

 ユイと呼ばれた青髪の少女は、突然振られたからなのかあたふたし始める。

「そ、その……多分、先日の戦争でのメテオが……この結界に当たったんじゃ無いかな……」
「メテオ……ってアレね。この間アタシが真っ二つに斬った」
「う、うん……。多分、そのうちのどちらかがこの結界に当たったんじゃないかな……」
「でも、ここらに被害は無いわよ?」
「洞窟の入口にあった結界は……、この崖の向こう側にある山全体に張ってあった結界と魔力を共有してたの……。……だから、向こう側にある山にメテオが衝突しちゃったせいで、結界が脆くなったんだと思う……」
「なら、なんで山とは反対にある森には結界張ってないの?」
「それは……当時はこの森は危険だったし……」
「そういえばそうね。確かに、この森を突破するよりも、崖から降りていった方が安全だったものね」

 やばい。話についていけない……。

 結界とか魔力とか、専門用語が時々あるから訳が分からない。まぁ、大体の意味は分かるんだけどさ。

「なら、なんで貴方は結界を殴ってたの?」
「う……!」
「……なんかやましいことでもあるの?」

 やましいといえばやましいが……多分この人たちが言ってるやましいじゃ無いと思う。

 けど、何が悲しくてやけくそ気味で結界殴ってました、って言わなければならないんだ……。

「言わないのなら……手段は選ばないわよ……」

 そう言って、少女は腰に刺してある剣を抜き、俺へ向ける。

「ちょ、ちょっと待って。言う、言うから!」
「そう、なら早く言って」
「……剣を下ろしてくれれば助かるんだけど」
「断るわ」
「そっすか」

 自暴自棄になってました、と告白するのはあまり気分がよろしいモノではないが、その程度のことで命を捨てるほど俺は馬鹿じゃない。

 仕方無い、言うか。

「その……少し自暴自棄状態になっていて……意味もなく結界を殴ってました」
「……は?」
「……え?」

 辺りに静寂が訪れる。それはまぁ、びっくりするぐらいの静寂だった。

 そして、ゆっくりと少女が口を開く。

「……貴方……本当のことを話さないと……殺すわよ?」

 その瞬間、少女からとんでもないほどの気迫を感じた。ただいるだけでも息苦しくなるような……俺の周りだけ重力が大きくなったような……。そんな感覚に陥った。

「ほ、本当だ! わ、分かった! 最初から話す! 確かに今の説明だけじゃただのヤバい奴……、いや、十分ヤバい奴なんだけど! 兎に角、話を聞いてくれ!」
「……じゃあ話しなさい」

 そう言うと辺りのプレッシャーが和らいてきて――無い!?

「ちょ、ちょい待ち! この殺気? 気迫? 兎に角、この状態なんとかしてくれよ!」
「あら、話せるのだからいいじゃない」
「冗談キツイぜ……、息苦しいったらありゃしない」

 そう言っていると、青髪の少女が、俺を威嚇している少女の肩を叩く。

「その……ユリちゃん……。流石に一般人にこの気迫はだめだよ……」
「そう? なんかまだ余裕あるように見えるけど」
「まぁ、確かに普通に比べたら耐えられてる方だと思うけど……」
「……分かったわ。ユイに免じて特別に解いてあげる。ただし、変なことしたら即座に斬るわよ」
「は、はい! き、君、ありがとう!」
「ヒッ……!」

 怖がられた!?

「貴方、なにユイを怖がらせてるのよ!」
「す、すみませんでした!」

 正直、なんで礼を言っただけなのに怒られなきゃならないのか訳が分からない。

「ほら、早く話しなさい」
「わ、分かりました……」

 こうして俺は、強気な剣士の少女と、俺に怯えている魔法使いらしき少女に、今までのことを話すことになった。

「まず、自己紹介から始めましょうか。僕の名前はキサラギ
シンと言います」
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