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城へ急げ
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周りに集まっていた冒険者を掻き分け、城へ駆け出そうとする。
「シュウさんっ!」
「っ!?」
『危険感知』が発動する。
反射的に『思考加速』と『身体強化』を使用し、辺りを見回した。
すると、上から何か炎の弾が迫って来ることに気付く。
咄嗟に後ろへ下がり、何とか回避することに成功する。
炎の弾は、俺がいた所へ着弾し、草原に焼け跡を残す。
炎の弾の出処を探そうと、空を見上げると、信じられない光景が目に映った。
「おいおい、冗談だろ……!?」
悪魔、とでも言うべきだろうか。
黒色の身体。一見人型に見えるが、背中に生えている翼と、異様なまでに痩せ細った身体が、ソレが人間でないことを表している。
「あれは……ダークイビル!?」
そう焦ったような声がどこかから聞こえる。
「なんだよ、アイツ……」
「ダークイビル……。悪魔系統の魔物の中でも最上位に位置する魔物です……!」
俺の呟きに、騎士団長さんが震える声で答える。
「まさか、アイツが城を……」
……いや、それにしては先程の火球の威力は低すぎる。
遠目から見ても、城が受けた炎撃には遠く及ばない。アイツ以上の奴がいるってことか……?
「シュウさん、ここは任せて城へ向かって下さい!」
「っ……! ……あぁ、頼んだっ!」
俺がいても足でまといになるだけだろう。それに、アリスが心配だ。
ウォルタ戦で消耗しているとはいえ、ここには騎士団長をはじめ、王国騎士団や冒険者達がいる。
多少強い魔物であっても、そう簡単にやられることはないだろう。
「それと、シュウさん! これを……!」
騎士団長さんから透明な液体が入った小瓶を渡される。
「……これは?」
「魔力を回復する薬品です。先程の戦闘で大分消費したようなので」
「悪い、助かるよ」
即行で薬品を飲み干し、上空の敵に注意しながら城へ走り出す。
「くそ……地獄絵図だな……」
街道は混乱した住民に溢れかえり、馬鹿正直に道を走っていては、城まで辿り着くのにかなりの時間がかかってしまいそうだ。
「なんとかして早く行かなきゃ……」
辺りを見渡すと、レンガ造りの家の屋根に、羽休めをしている鳩のような鳥が目に入る。
「そう言えば、『チェンジ』はレベル5にしてから性能を確認してなかったな……」
もしかしたら、自分と他の生き物の位置を交換出来るようになっているかもしれない。
「頼む……『チェンジ』ッ!」
神に祈りながら鳥を対象に『チェンジ』を使用する。
使用した次の瞬間、視界が変化する。足元を見れば、先程見付けた鳥がとまっていた屋根の上。
成功だ。
「よしっ!」
『身体強化』を使用し、再び駆け出した。それと同時に風魔法を利用して、追い風を生み出す。
レベル5の『身体強化』のお陰か、あるいはある程度のレベルに到達したお陰か。やや倦怠感が残るものの、身体が嘘のように軽い。
建物の屋根から屋根へと飛び移り、城を目指す。
『敵感知』を発動させると、城に反応が一つ。やはり襲撃者がいるようだ。
「っ!?」
再び『危険感知』が反応を示した。
背後から強い熱を感じる。何か火炎系の攻撃が背後から繰り出されたらしい。
横っ跳びで回避すると、案の定火球が俺の真横を横切った。
「あの火球は……!」
俺の前に黒色の何かが現れる。人型に似た黒色の影は、先程俺達を襲撃したダークイビルだった。
まさか、コイツ俺を追ってきたのか!?
しかし、街の外を確認すると、騎士団長さん達と戦っているであろう別のダークイビルが飛び回っていた。
どうやら別の個体らしい。
街道で混乱をしていた人々が、ダークイビルに気付いてしまったようだ。より一層騒がしくなる。
「くそ、こんな時に……!」
抜刀し、『属性付与』で刀に氷魔法を付与する。
刀身に冷気が帯びる。
「邪魔だっ!」
そう叫びながら距離を詰める。
鋭い爪が生えた手を大雑把に横に薙ぐが、『思考加速』を使用すれば避けることは難しくない。
回避しながら刀を首目掛けて振るが、もう片方の腕で掴まれてしまう。
やはりかなりの強さを誇るのは嘘ではないらしいな。
「チッ!」
思わず舌打ちをしてしまう。だが、これで十分だ。
変化はすぐに訪れた。
先程俺の斬撃を防いだ腕が、凍結し始めたのだ。
そう、この『属性付与』は、レベル1でありながらかなりの効力を誇る。
先程まで俺が使っていた剣では、あまり威力が高くない故にその真価を発揮出来ない。
だが、この刀はかなりの威力を隠し持っている。
なんでも、デルト王国でお世話になった鍛冶屋のおっちゃんは、かなり名がある鍛冶士だったらしい。
「っ!」
力任せに刀を振るい、凍結した腕を砕く。
そのまま流れるように首を刎ねようとするが、そう簡単にはいかない。間一髪で身体を捻られ、避けられてしまった。
残った片腕を振り上げ、俺へ殴りかかって来る。
拳を左腕で受け止めるが、やはりステータス差が大きすぎる。簡単に競り負けてしまい、俺は大きく後方へ飛ばされてしまう。
「ぐ……っ!」
何とか体勢を整えるが、ダークイビルは火球を繰り出し追撃をしてくる。だが、遠距離攻撃ならば『思考加速』と『身体強化』がある限りそう怖くはない。
火球を回避しつつ、先程拳を受けた左手を確認する。
少し痛めてはいるものの、骨折などの重症ではないだろう。
幸い、戦闘は屋根の上で行われている。その上奴は俺以外を狙うつもりはないようなので、街の人々に被害が出ることは無さそうだ。
だが、安全というわけでもない。すぐに終わらせなければ。
再び距離を詰めようと試みる。避けられない火球は氷魔法を使って相殺し、前へ進んでいく。
そして、手のひらに氷の玉を作り、敵の顔面目掛けて投げつけた。
まさかの攻撃方法に驚いたのか、それとも単純に反応出来なかったのか。氷の玉はいとも容易く顔に命中し、相手は一時的に視界を失った。
その一瞬が命取り。
刀が届く位置まで距離をつめると、もう一度首目掛けて刀を薙いだ。
首が空を舞う。
『属性付与』の効果により、断面図が凍り血は流れ出ることは無いが、頭と身体が離れたその体は当然その場に崩れ落ちる。
敵が死んだことを確認すると、『属性付与』を解除し、納刀する。
「……急がないと」
ポケットで何かが震える。ステータスカードがレベルアップを知らせるべく振動しているのだろう。
普段であれば喜ばしいことだが、今は時間が無い。
俺は再び城へ駆け出した。
「シュウさんっ!」
「っ!?」
『危険感知』が発動する。
反射的に『思考加速』と『身体強化』を使用し、辺りを見回した。
すると、上から何か炎の弾が迫って来ることに気付く。
咄嗟に後ろへ下がり、何とか回避することに成功する。
炎の弾は、俺がいた所へ着弾し、草原に焼け跡を残す。
炎の弾の出処を探そうと、空を見上げると、信じられない光景が目に映った。
「おいおい、冗談だろ……!?」
悪魔、とでも言うべきだろうか。
黒色の身体。一見人型に見えるが、背中に生えている翼と、異様なまでに痩せ細った身体が、ソレが人間でないことを表している。
「あれは……ダークイビル!?」
そう焦ったような声がどこかから聞こえる。
「なんだよ、アイツ……」
「ダークイビル……。悪魔系統の魔物の中でも最上位に位置する魔物です……!」
俺の呟きに、騎士団長さんが震える声で答える。
「まさか、アイツが城を……」
……いや、それにしては先程の火球の威力は低すぎる。
遠目から見ても、城が受けた炎撃には遠く及ばない。アイツ以上の奴がいるってことか……?
「シュウさん、ここは任せて城へ向かって下さい!」
「っ……! ……あぁ、頼んだっ!」
俺がいても足でまといになるだけだろう。それに、アリスが心配だ。
ウォルタ戦で消耗しているとはいえ、ここには騎士団長をはじめ、王国騎士団や冒険者達がいる。
多少強い魔物であっても、そう簡単にやられることはないだろう。
「それと、シュウさん! これを……!」
騎士団長さんから透明な液体が入った小瓶を渡される。
「……これは?」
「魔力を回復する薬品です。先程の戦闘で大分消費したようなので」
「悪い、助かるよ」
即行で薬品を飲み干し、上空の敵に注意しながら城へ走り出す。
「くそ……地獄絵図だな……」
街道は混乱した住民に溢れかえり、馬鹿正直に道を走っていては、城まで辿り着くのにかなりの時間がかかってしまいそうだ。
「なんとかして早く行かなきゃ……」
辺りを見渡すと、レンガ造りの家の屋根に、羽休めをしている鳩のような鳥が目に入る。
「そう言えば、『チェンジ』はレベル5にしてから性能を確認してなかったな……」
もしかしたら、自分と他の生き物の位置を交換出来るようになっているかもしれない。
「頼む……『チェンジ』ッ!」
神に祈りながら鳥を対象に『チェンジ』を使用する。
使用した次の瞬間、視界が変化する。足元を見れば、先程見付けた鳥がとまっていた屋根の上。
成功だ。
「よしっ!」
『身体強化』を使用し、再び駆け出した。それと同時に風魔法を利用して、追い風を生み出す。
レベル5の『身体強化』のお陰か、あるいはある程度のレベルに到達したお陰か。やや倦怠感が残るものの、身体が嘘のように軽い。
建物の屋根から屋根へと飛び移り、城を目指す。
『敵感知』を発動させると、城に反応が一つ。やはり襲撃者がいるようだ。
「っ!?」
再び『危険感知』が反応を示した。
背後から強い熱を感じる。何か火炎系の攻撃が背後から繰り出されたらしい。
横っ跳びで回避すると、案の定火球が俺の真横を横切った。
「あの火球は……!」
俺の前に黒色の何かが現れる。人型に似た黒色の影は、先程俺達を襲撃したダークイビルだった。
まさか、コイツ俺を追ってきたのか!?
しかし、街の外を確認すると、騎士団長さん達と戦っているであろう別のダークイビルが飛び回っていた。
どうやら別の個体らしい。
街道で混乱をしていた人々が、ダークイビルに気付いてしまったようだ。より一層騒がしくなる。
「くそ、こんな時に……!」
抜刀し、『属性付与』で刀に氷魔法を付与する。
刀身に冷気が帯びる。
「邪魔だっ!」
そう叫びながら距離を詰める。
鋭い爪が生えた手を大雑把に横に薙ぐが、『思考加速』を使用すれば避けることは難しくない。
回避しながら刀を首目掛けて振るが、もう片方の腕で掴まれてしまう。
やはりかなりの強さを誇るのは嘘ではないらしいな。
「チッ!」
思わず舌打ちをしてしまう。だが、これで十分だ。
変化はすぐに訪れた。
先程俺の斬撃を防いだ腕が、凍結し始めたのだ。
そう、この『属性付与』は、レベル1でありながらかなりの効力を誇る。
先程まで俺が使っていた剣では、あまり威力が高くない故にその真価を発揮出来ない。
だが、この刀はかなりの威力を隠し持っている。
なんでも、デルト王国でお世話になった鍛冶屋のおっちゃんは、かなり名がある鍛冶士だったらしい。
「っ!」
力任せに刀を振るい、凍結した腕を砕く。
そのまま流れるように首を刎ねようとするが、そう簡単にはいかない。間一髪で身体を捻られ、避けられてしまった。
残った片腕を振り上げ、俺へ殴りかかって来る。
拳を左腕で受け止めるが、やはりステータス差が大きすぎる。簡単に競り負けてしまい、俺は大きく後方へ飛ばされてしまう。
「ぐ……っ!」
何とか体勢を整えるが、ダークイビルは火球を繰り出し追撃をしてくる。だが、遠距離攻撃ならば『思考加速』と『身体強化』がある限りそう怖くはない。
火球を回避しつつ、先程拳を受けた左手を確認する。
少し痛めてはいるものの、骨折などの重症ではないだろう。
幸い、戦闘は屋根の上で行われている。その上奴は俺以外を狙うつもりはないようなので、街の人々に被害が出ることは無さそうだ。
だが、安全というわけでもない。すぐに終わらせなければ。
再び距離を詰めようと試みる。避けられない火球は氷魔法を使って相殺し、前へ進んでいく。
そして、手のひらに氷の玉を作り、敵の顔面目掛けて投げつけた。
まさかの攻撃方法に驚いたのか、それとも単純に反応出来なかったのか。氷の玉はいとも容易く顔に命中し、相手は一時的に視界を失った。
その一瞬が命取り。
刀が届く位置まで距離をつめると、もう一度首目掛けて刀を薙いだ。
首が空を舞う。
『属性付与』の効果により、断面図が凍り血は流れ出ることは無いが、頭と身体が離れたその体は当然その場に崩れ落ちる。
敵が死んだことを確認すると、『属性付与』を解除し、納刀する。
「……急がないと」
ポケットで何かが震える。ステータスカードがレベルアップを知らせるべく振動しているのだろう。
普段であれば喜ばしいことだが、今は時間が無い。
俺は再び城へ駆け出した。
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