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デート?

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 それから丁度一週間後の朝。朝食を済ませた俺は、待ち合わせ場所である噴水の縁に腰を下ろしていた。

 ポケットから懐中時計を出すと、時刻はまだ9時30分。待ち合わせは10時なので、まだ十分時間はある。

「これは俺の悪い癖だな……」

 日本にいた時もそうだった。友達と遊ぶ時も、約束の30分以上前に集合することが殆ど。良いか悪いかで言われれば良いのだろうが、何事にも限度というものがある。

 だが、道中トラブルに巻き込まれないとも限らないし、忘れ物をしていたのなら戻る時間もある。

 まぁ、遅刻するよりは良いだろう。

 財布、ステータスカード。剣と刀がそれぞれ一本ずつ。うん、忘れ物は無いな。

 暇だし、近くの出店で何か買って来ようかと腰を上げたその時だった。

「あ、シュウさんっ!」 

 背後から少女の声が聞こえる。まさかと思いつつも振り返ると、そこにはやはり、ローブを身にまとったアリスがいた。

 フードの脇から、トレードマークの金色の髪が見え隠れしている。

「おま、まだ30分前だぞ?」
「えへへ、シュウさんを待たせたらいけないと思って」
「まぁ、俺も人のことを言えないけどな……。じゃあ、行くか?」
「はいっ!」

 城下町だけあって、やはり人通りは多い。そのまま、行こうとすればはぐれてしまいそうだ。

 俺はアリスの手を取る。一瞬手がビクリと震えたものの、彼女の様子からして特に嫌がっている様子はない。

 顔を赤らめて照れ隠しに笑っているので、どうやら驚いただけで嫌がっているわけではなさそうだ。

「そういえば服屋ってどこなんだろう。事前に場所を調べとけば良かったな」
「安心して下さい。私の行きつけのお店があるので!」
「王族の行きつけって絶対高いやん」
「いえ、そういった正装は専門の店で買っていますが、私服はそこまで高価ではありませんよ?」
「一着いくらだ?」
「そうですね……高いものでも、20万程度ですね」
「十分高いわ」

 銀行には250万くらいあるから買えなくは無いが、あまり無駄遣いは避けたい。

 そういえば、ここに来てから気になったことがある。俺は訓練もあるので一週間に一度しかギルドで稼げないのだが、それでも1週間で5万くらい。

 こんなに稼げてしまったら、それこそ世界恐慌のごとくハイパーインフレしてしまいそうな気がする。

 そう思っていたのだが、俺は『敵感知』と『隠密』があるから効率よく稼げるが、普通はこんなに稼げるらしい。

 その上、本来ならば四人前後のパーティーを組むため、一人あたりの取り分は少ない。

 さらにさらに、この世界の冒険者は金遣いが荒く、俺のような節約癖のある人間は少ないらしい。

 この世界の経済は冒険者によって回されていた!

「大丈夫です、安いものなら数万程度ですから!」
「凄い、高いはずなのに20万という数字を聞いた直後だと安く感じる」

 ……でもまぁ、ここくらいにしか金を使う場所も無いし、次の四天王戦で死ねば意味もないし、アリスいるし、今日くらいは奮発しちまうか。

「よし分かった、じゃあその店に行こうか」

 今日のために一応お金は引き出してきた。王族とのお出かけなので出費も馬鹿にならないだろうと予想していたので、50万弱は財布にある。

 財布はポケットに入れているのだが、スリが怖いので片腕をポケットに突っ込んでしっかりと財布を握っている。その上常に『敵感知』を発動。流石にこれなら盗めないだろう。

「シュウさん、あれ……」
「ん? どうした?」

 握っている手とは反対の手で指を指している。その先を見ると、出店が食べ物を売っていた。

 なんだあれ……肉まん?

「あれが食べたいのか?」
「ダメ……ですか?」
「ダメじゃねーよ、じゃあ買うか」

 流石にこの人混みの中アリスを置いて行く訳にも行かないので、二人で列に並ぶ。

「あれってなんて名前なんだ?」
「フレップミルドという食べ物ですよ。お肉を薄力粉で作った皮で丸めてるんです」
「へぇ。それは美味しそうだな」

 そんなことを話していると俺たちの番になる。一つ400アルトと少しお高めだったが、夏祭りの屋台みたいなものか、と勝手に納得して購入する。

 会計途中、アリスが自分の分は自分で払う、なんて言ってきたが構わず俺が払った。子供が遠慮なんてするもんじゃない。まぁ俺も子供に分類されるんだろうけど。

 近くに公園があったので、そこのベンチに腰を下ろし、早速実食といく。

「うん、美味いなこれ」

 確かに皮は肉まんそっくりだが、中身は全然違う。肉まんなら肉以外にも色々な具材が入っていたが、これは肉が丸々入っている。

 本当に焼いた肉を皮で包んだだけなのだろう。

 だが、中の肉にもソースのようなものがかかっており、味も文句無し。肉なのでそこそこお腹にも溜まる。確かにこれなら400アルトなのも納得だ。

「シュウさんのお口にあって良かったです」
「あぁ、これを教えてくれたアリスには感謝だな」
「えへへ……」

 城を抜け出しているだけあって、やはりこういう情報は俺よりも持っているのだろうか。今度アリスにおすすめの食べ物を聞いてみよう。

「あ、口にソースが着いてるぞ」
「え、あ、本当だ……」

 仕方ないのでポケットからティッシュを取り出して口を拭いてやる。

「は、恥ずかしいです……」
「はいはい、じっとしててなー」
「むぅ……」

 照れているのか、始めはやや抵抗気味だったアリスも、俺がそう言うと大人しくなる。

「……よし、取れたぞ」
「そ、そろそろ移動しましょう!」
「え、あ、ちょっと待ってよ!」

 そう言って移動を始めるアリスを慌てて追い掛けた。
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