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王族との食事
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「それにしても、騎士団に入隊するとは驚きましたよ」
騎士団の寮にある一室へと案内され、入室して開口一番に騎士団長さんがそう言う。
「入隊じゃなくて、あくまで訓練に参加させてもらうってだけですよ」
「それはそうですが……」
何か不味いことをやってしまったのだろうか。また俺何かやっちゃいましたか状態だろうか。
「四天王に襲われるかもしれないと言っておきながら、まさか騎士団と訓練を共にしたいとは……」
「それはどういう……あ!」
途中まで話してようやく気付く。
四天王が俺を狙っている。そしてその俺はこのレイズ王国にいる。それから導き出されることは……。
この国を四天王が襲撃してくる可能性があるということ……。
「……すみません。そこまで考えが及びませんでした……」
少し考えれば分かったはずのこと。どうしてそれに気付けなかったのだろうか……。
「いえ、国王様もそれを分かっての答えでしょうし……気に病む必要はないですよ」
「そう言って貰えるのはありがたいのですが……」
魔王軍が襲撃してきた場合は俺に注意を向けてこの国を去るべきだろうな。自分の落とし前くらいはつけておかなければ。
「とにかく、我々と訓練をすることになった以上は手を抜きませんよ?」
「はい、よろしくお願いします」
それからは騎士団の訓練について説明を受けた。一週間のうち、日曜日を除いた週六日は訓練。一日は休日。思ったよりもホワイトだ。
一応日曜日も、国の防衛のため申告書無しで外出することを禁じられている。だが、いくつかの規定はあるが、その規定さえ守れば申告書を通して外出することも可能だ。
今回の場合、俺はあくまで騎士団と訓練を出来る権利がある、というだけなので日曜日は申告書無しで外出することは可能らしい。
因みに、騎士団は給料が安定し、他の会社などと違い倒産等の心配が無いので人気な職らしい。日本でいう公務員みたいなものだろうか。
「説明はこんなところですかね。他に質問はありますか?」
「いえ、特には」
特に気になることも無いのでそう答える。
「……ふと気になったことがあるのですが、良いですか?」
「えっと、なんでしょうか?」
かと思ったら、今度は騎士団長さんが逆に質問してくる。どうしたのだろうか?
「デルト王国の国王に騎士団に勧誘されたと聞きましたが……どうして勧誘を断ったのですか?」
「あー、そのことですか」
右手で頬を掻きながら、気まずそうに言う。
「なんか騎士団って堅苦しいそうだから断ったのですが……。断った矢先に強くなりたいって言われたら、じゃあなんで断ったんだ、という話になるじゃないですか」
「しかし……それならばこの国の騎士団と訓練を共にする理由が分からないのですが……」
「勧誘されたからには中々退職しずらいですけど、これなら名目上は騎士団には入隊してませんから」
「いつでもやめやれる、と。中々悪賢いですね……」
「あはは……」
思わず苦笑いになる騎士団長さんを、俺も釣られて苦い笑みを浮かべる。
◇◆◇◆◇
「これ……全部食べて良いんですか……!?」
その日の夜、宴もとい食事会に向かうと、最初に目についたのは机に並べた肉やらスープやらの美味しそうな食事。
「勿論だ、存分に食べてくれ。どれ、まずは一口」
「そ、それでは……いただきます……!」
早速皿に盛られた肉を一つ食べる。
……これは美味いな。日本でもこんなに美味しいのを食べたことが無いぞ。流石は王家が口にする食べ物なだけあるな。
「シュウ殿、改めて礼を言わせて欲しい。この度はデルト王国……そして我が娘アリスを救って頂き感謝する」
王様が礼を言うと、彼の隣に座っていた王女も頭を下げる。仕草一つ一つに気品を感じる。
「いえ、先程も言いましたが、成り行きみたいなところもあったので」
というより、記憶の限り歳上の人から頭を下げられるなんて経験無かったし……あまり簡単に頭を下げられても困る……。
「それに、話によると娘のせいで地下牢に放り込まれたとか……」
「あ、あぁ……たしかにその通りですが、特に何もされませんてましたし、大丈夫ですよ。それに、実質自業自得ですし」
侵入者らしい人がいたからって、城壁を乗り越えようとしたのは俺だし……。
「実はだな……娘は少々お転婆な所があってな……。今日も気付かぬ内に、どうやってかは知らないが城を抜け出そうとしていたらしい……」
「それで、その城壁を登って街へ行こうとしていたところを僕が見付けたってことですか」
「その通りだ」
なんとも傍迷惑な姫様だ……。王族は部屋にずっと篭っていたりしてるのだろうか。それなら多少無茶してでも外に出たいか。
……いや、俺日本では引きこもり……とまではいかないけど、自室に居ること多かったし、そこまで外に出たいとも思えないな……。
まぁ、そこは人の価値観ってことで。
「あれ、ってことはデルト王国にいた時もこの城を抜け出したってことですか?」
「いや、そこにはちょっとした事情があり私が許可したのだ」
まぁ、流石に国を渡った家出もどき、みたいなことは無いよな。
「デルト王国で宿屋から抜け出したってことはあったらしいが……」
「……」
この王女様……。
ジトーという視線を王女様に向ける。
「ご、ごめんな……さい……」
この王女様は人見知りなのだろうか。お転婆って言うくらいだし、元気いっぱいな性格だと思ったのだが……。
「いや、こちらこそ配慮が足りず申し訳ありません」
この王女様には下手に冗談を言わない方が良いな。
「それにしても……デルト王国から帰ってから、不思議と落ち着いたと思ったのだが……何故今日に限って抜け出そうとしたのだ?」
「そ、それは……お父様のせいですよ……」
「「……?」」
今度は王様の方に疑惑の目を向ける。一体この人何やったんだよ……。
「ち、違う! 私も心当たりは無いのだ! だからシュウ殿、そんな目を向けるな!」
「失礼しました」
どうやらバレてしまったようだ。
「お父様が……その……魔王軍を退けたこのシュウ様と……結婚させるって……」
「「……」」
もう一度王様に目を向ける。
王様が目をそらす。
「……国王様、心当たりは……?」
「……あります」
頭が痛い……。そりゃ逃げ出したくなる女王さんの気持ち分かるわ。俺でも逃げ出すわ。
「一応聞きますけど、冗談なんですよね?」
「はい……」
さっきから王様が敬語なんだが……王としての威厳は無いのだろうか……。
「えっと……じゃあ私が結婚するということは……」
「無いみたいですね。というより、僕も初耳ですし」
まぁこんな美少女と結婚出来るのなら至極光栄だが、この子多分日本でいう中学生くらいでしょ?流石ダメやろ。
「その……すみませんでした……」
王様が隣にいる王女さんに頭を下げる。傍から見るといい歳した男性が10代の少女に頭を謝るという、中々のシュールな光景だ。
「……ん?」
「どうした、シュウ殿」
そこでふと引っかかることがある。
この王女さん……どこかで会ったことがある気が……。
「いえ、ただ王女様に既視感を覚えまして……」
「既視感、とな?」
「ええ、どこかで会ったことが……」
だが、一体どこで……。王女さんみたいな大物と出会えば……忘れるわけが無いと思うが……。
「恐らく……デルト王国でのことかと……」
小さな声で王女さんがそう言う。本当に人見知りなんだな。
デルト王国……まぁそりゃそうだよな。この国には昨日着いたばっかだし、逆にデルト王国じゃなかった方がおかしい。
「デルト王国……。……あ」
ようやく思い出した。あの時の子はこの子だったのか……。
「たしかに冒険者ギルドの前にいた子がいましたけど……もしかして王女様だったんですか?」
何も言わないが首を上下に振る。頷いたってことはやはりそうなのか……。
「何も知らずにリンゴ渡したりとかしてたけど……その節は失礼しました」
「リンゴ……たしかアリスがこっそり宿の中で美味しそうにリンゴを食べてたと聞いたが……そういうことだったのか」
「バレてたん……ですね……」
たしかに俺は2個リンゴをあげたが、片方は食べずに宿に戻っていたな。宿の中で食べてたのか。
王女たる者が見ず知らずの人間から貰ったリンゴを食べて良いのだろうか。
そうだ。折角王様の話せる機会だ。何か勇者の情報の一つでも欲しいところだ。
「国王様、一つ尋ねたいことがあるのですが……」
「尋ねたいこと、とな」
「はい。グライアン王国が勇者を召喚したということなのですが――」
冷たい何かが背筋をつたう。
これは『危険感知』……!
『思考加速』と『身体強化』を同時に使う。左右を見ても敵らしき人物は見当たらない。ならば背後……!
椅子から立ち上がり、振り返りながら刀を抜刀する。
鉄と鉄がぶつかるい音。どうやら攻撃を防ぐことは成功したようだ。
「剣を仕舞って下さい。争うつもりはありません」
なんて冷静を装っているが、内心冷や汗ダラダラだ。後で『危険感知』のレベル上げとこ。
俺を襲ってきたのは鎧を着たこの国の騎士。どこかで王様の不敬を買ってしまったのだろうか。
「流石は四天王を倒しただけあるな……。下がれ」
「はっ!」
王様がそう命令すると、騎士は剣を鞘におさめ後ろへ下がる。
「どういうことですか」
一応敵意は無いらしいので俺も刀をしまう。先程の質問は何かマズかっただろうか。
「シュウ殿……その情報をどこで仕入れたのか聞いてもよろしいかな?」
「……冒険者仲間から聞きました」
「……」
俺の返答に王様が低く唸る。殺伐とした空気に、王女さんもどこか不安そうだ。
「シュウ殿、今後そのことについては他の者に話さないで欲しい」
「それは良いですけど……どうしてですか?」
王様はテーブルに置かれた紅茶を一口飲み口を潤すと、一呼吸おく。
「……その勇者召喚の話は、国家機密情報だ」
「なっ……!?」
先程までの和やかな空気は、気付けば跡形もなく消え去っていた。
騎士団の寮にある一室へと案内され、入室して開口一番に騎士団長さんがそう言う。
「入隊じゃなくて、あくまで訓練に参加させてもらうってだけですよ」
「それはそうですが……」
何か不味いことをやってしまったのだろうか。また俺何かやっちゃいましたか状態だろうか。
「四天王に襲われるかもしれないと言っておきながら、まさか騎士団と訓練を共にしたいとは……」
「それはどういう……あ!」
途中まで話してようやく気付く。
四天王が俺を狙っている。そしてその俺はこのレイズ王国にいる。それから導き出されることは……。
この国を四天王が襲撃してくる可能性があるということ……。
「……すみません。そこまで考えが及びませんでした……」
少し考えれば分かったはずのこと。どうしてそれに気付けなかったのだろうか……。
「いえ、国王様もそれを分かっての答えでしょうし……気に病む必要はないですよ」
「そう言って貰えるのはありがたいのですが……」
魔王軍が襲撃してきた場合は俺に注意を向けてこの国を去るべきだろうな。自分の落とし前くらいはつけておかなければ。
「とにかく、我々と訓練をすることになった以上は手を抜きませんよ?」
「はい、よろしくお願いします」
それからは騎士団の訓練について説明を受けた。一週間のうち、日曜日を除いた週六日は訓練。一日は休日。思ったよりもホワイトだ。
一応日曜日も、国の防衛のため申告書無しで外出することを禁じられている。だが、いくつかの規定はあるが、その規定さえ守れば申告書を通して外出することも可能だ。
今回の場合、俺はあくまで騎士団と訓練を出来る権利がある、というだけなので日曜日は申告書無しで外出することは可能らしい。
因みに、騎士団は給料が安定し、他の会社などと違い倒産等の心配が無いので人気な職らしい。日本でいう公務員みたいなものだろうか。
「説明はこんなところですかね。他に質問はありますか?」
「いえ、特には」
特に気になることも無いのでそう答える。
「……ふと気になったことがあるのですが、良いですか?」
「えっと、なんでしょうか?」
かと思ったら、今度は騎士団長さんが逆に質問してくる。どうしたのだろうか?
「デルト王国の国王に騎士団に勧誘されたと聞きましたが……どうして勧誘を断ったのですか?」
「あー、そのことですか」
右手で頬を掻きながら、気まずそうに言う。
「なんか騎士団って堅苦しいそうだから断ったのですが……。断った矢先に強くなりたいって言われたら、じゃあなんで断ったんだ、という話になるじゃないですか」
「しかし……それならばこの国の騎士団と訓練を共にする理由が分からないのですが……」
「勧誘されたからには中々退職しずらいですけど、これなら名目上は騎士団には入隊してませんから」
「いつでもやめやれる、と。中々悪賢いですね……」
「あはは……」
思わず苦笑いになる騎士団長さんを、俺も釣られて苦い笑みを浮かべる。
◇◆◇◆◇
「これ……全部食べて良いんですか……!?」
その日の夜、宴もとい食事会に向かうと、最初に目についたのは机に並べた肉やらスープやらの美味しそうな食事。
「勿論だ、存分に食べてくれ。どれ、まずは一口」
「そ、それでは……いただきます……!」
早速皿に盛られた肉を一つ食べる。
……これは美味いな。日本でもこんなに美味しいのを食べたことが無いぞ。流石は王家が口にする食べ物なだけあるな。
「シュウ殿、改めて礼を言わせて欲しい。この度はデルト王国……そして我が娘アリスを救って頂き感謝する」
王様が礼を言うと、彼の隣に座っていた王女も頭を下げる。仕草一つ一つに気品を感じる。
「いえ、先程も言いましたが、成り行きみたいなところもあったので」
というより、記憶の限り歳上の人から頭を下げられるなんて経験無かったし……あまり簡単に頭を下げられても困る……。
「それに、話によると娘のせいで地下牢に放り込まれたとか……」
「あ、あぁ……たしかにその通りですが、特に何もされませんてましたし、大丈夫ですよ。それに、実質自業自得ですし」
侵入者らしい人がいたからって、城壁を乗り越えようとしたのは俺だし……。
「実はだな……娘は少々お転婆な所があってな……。今日も気付かぬ内に、どうやってかは知らないが城を抜け出そうとしていたらしい……」
「それで、その城壁を登って街へ行こうとしていたところを僕が見付けたってことですか」
「その通りだ」
なんとも傍迷惑な姫様だ……。王族は部屋にずっと篭っていたりしてるのだろうか。それなら多少無茶してでも外に出たいか。
……いや、俺日本では引きこもり……とまではいかないけど、自室に居ること多かったし、そこまで外に出たいとも思えないな……。
まぁ、そこは人の価値観ってことで。
「あれ、ってことはデルト王国にいた時もこの城を抜け出したってことですか?」
「いや、そこにはちょっとした事情があり私が許可したのだ」
まぁ、流石に国を渡った家出もどき、みたいなことは無いよな。
「デルト王国で宿屋から抜け出したってことはあったらしいが……」
「……」
この王女様……。
ジトーという視線を王女様に向ける。
「ご、ごめんな……さい……」
この王女様は人見知りなのだろうか。お転婆って言うくらいだし、元気いっぱいな性格だと思ったのだが……。
「いや、こちらこそ配慮が足りず申し訳ありません」
この王女様には下手に冗談を言わない方が良いな。
「それにしても……デルト王国から帰ってから、不思議と落ち着いたと思ったのだが……何故今日に限って抜け出そうとしたのだ?」
「そ、それは……お父様のせいですよ……」
「「……?」」
今度は王様の方に疑惑の目を向ける。一体この人何やったんだよ……。
「ち、違う! 私も心当たりは無いのだ! だからシュウ殿、そんな目を向けるな!」
「失礼しました」
どうやらバレてしまったようだ。
「お父様が……その……魔王軍を退けたこのシュウ様と……結婚させるって……」
「「……」」
もう一度王様に目を向ける。
王様が目をそらす。
「……国王様、心当たりは……?」
「……あります」
頭が痛い……。そりゃ逃げ出したくなる女王さんの気持ち分かるわ。俺でも逃げ出すわ。
「一応聞きますけど、冗談なんですよね?」
「はい……」
さっきから王様が敬語なんだが……王としての威厳は無いのだろうか……。
「えっと……じゃあ私が結婚するということは……」
「無いみたいですね。というより、僕も初耳ですし」
まぁこんな美少女と結婚出来るのなら至極光栄だが、この子多分日本でいう中学生くらいでしょ?流石ダメやろ。
「その……すみませんでした……」
王様が隣にいる王女さんに頭を下げる。傍から見るといい歳した男性が10代の少女に頭を謝るという、中々のシュールな光景だ。
「……ん?」
「どうした、シュウ殿」
そこでふと引っかかることがある。
この王女さん……どこかで会ったことがある気が……。
「いえ、ただ王女様に既視感を覚えまして……」
「既視感、とな?」
「ええ、どこかで会ったことが……」
だが、一体どこで……。王女さんみたいな大物と出会えば……忘れるわけが無いと思うが……。
「恐らく……デルト王国でのことかと……」
小さな声で王女さんがそう言う。本当に人見知りなんだな。
デルト王国……まぁそりゃそうだよな。この国には昨日着いたばっかだし、逆にデルト王国じゃなかった方がおかしい。
「デルト王国……。……あ」
ようやく思い出した。あの時の子はこの子だったのか……。
「たしかに冒険者ギルドの前にいた子がいましたけど……もしかして王女様だったんですか?」
何も言わないが首を上下に振る。頷いたってことはやはりそうなのか……。
「何も知らずにリンゴ渡したりとかしてたけど……その節は失礼しました」
「リンゴ……たしかアリスがこっそり宿の中で美味しそうにリンゴを食べてたと聞いたが……そういうことだったのか」
「バレてたん……ですね……」
たしかに俺は2個リンゴをあげたが、片方は食べずに宿に戻っていたな。宿の中で食べてたのか。
王女たる者が見ず知らずの人間から貰ったリンゴを食べて良いのだろうか。
そうだ。折角王様の話せる機会だ。何か勇者の情報の一つでも欲しいところだ。
「国王様、一つ尋ねたいことがあるのですが……」
「尋ねたいこと、とな」
「はい。グライアン王国が勇者を召喚したということなのですが――」
冷たい何かが背筋をつたう。
これは『危険感知』……!
『思考加速』と『身体強化』を同時に使う。左右を見ても敵らしき人物は見当たらない。ならば背後……!
椅子から立ち上がり、振り返りながら刀を抜刀する。
鉄と鉄がぶつかるい音。どうやら攻撃を防ぐことは成功したようだ。
「剣を仕舞って下さい。争うつもりはありません」
なんて冷静を装っているが、内心冷や汗ダラダラだ。後で『危険感知』のレベル上げとこ。
俺を襲ってきたのは鎧を着たこの国の騎士。どこかで王様の不敬を買ってしまったのだろうか。
「流石は四天王を倒しただけあるな……。下がれ」
「はっ!」
王様がそう命令すると、騎士は剣を鞘におさめ後ろへ下がる。
「どういうことですか」
一応敵意は無いらしいので俺も刀をしまう。先程の質問は何かマズかっただろうか。
「シュウ殿……その情報をどこで仕入れたのか聞いてもよろしいかな?」
「……冒険者仲間から聞きました」
「……」
俺の返答に王様が低く唸る。殺伐とした空気に、王女さんもどこか不安そうだ。
「シュウ殿、今後そのことについては他の者に話さないで欲しい」
「それは良いですけど……どうしてですか?」
王様はテーブルに置かれた紅茶を一口飲み口を潤すと、一呼吸おく。
「……その勇者召喚の話は、国家機密情報だ」
「なっ……!?」
先程までの和やかな空気は、気付けば跡形もなく消え去っていた。
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