上 下
11 / 56

最悪の事態

しおりを挟む
「来たか、シュウ!」

 ギルドの扉を勢いよく開けると、中にいる顔見知り冒険者が俺を呼ぶ。

「一体なんの騒ぎだ!?」
「俺らも分からねぇ……」
「約立たずが……!」
「おい、聞こえてんぞ!」 

 俺たちが話していると、なにやら人一倍デカい図体の男が出てくる。

「アイツは一体……」
「たしか、ここのギルドのギルド長だったハズだぞ。普段はあまり顔を出さないハズだが……」
「……つまり、そのギルド長が出てくる程の緊急事態ってことかよ」

 さっきから嫌な予感しかしねぇ……。頼むから軽い事で済んでくれよ……。

 「今日はパーティーだぞー」とか、「実は僕ギルド長引退しまーす」とか、そんなことで済んでくれよ……?

「……今日皆に集まってくれたことは、他でもない……」

 なんだ?他でもないなんだ?頼むから不安になるから余計に溜めないで!

「……この街周辺に魔王軍が確認された」

 っざけんなテメー!序盤の街に襲撃するとか、この世界の魔王頭イカれてんじゃねぇの!?

「それも……魔王軍のトップ、四天王のうち一人だ」
「「「な、なんだってー!?」」」

 なんだってー!?じゃねぇよ!何処のギャグ漫画だ!四天王って普通物語終盤に出てくる敵だろ!なんで最初の敵が四天王なんだよ!

「……しかも序列二位の強者だ」

 さっきからなんでそんな嫌な情報しかないんだよ!もっと良い情報ねぇのかよ!

「幸い、城からも騎士団が普段よりも多めに出動されている。不幸中の幸い、といった所だろうか……」

 あ、少しだけ良い情報あった。

「時間が無い! 早速で悪いが、今から街の外に出てもらう。魔王軍の襲撃に備えるんだ!」
「「「了解!」」」

 もう俺だけ逃げ出そうかな……。いや、そんなわけにもいかないか。大体、逃げたところでまだこの辺の地理が分からないし、そこへんで野垂れ死にしそうだ。

 ため息を吐いながらステータスカードを取り出す。

===
名前 ヤマニシ シュウ
性別 男性
年齢 16
職業 盗賊
レベル 18
HP 76/76
MP 38/38
攻撃力 58
物理防御 57
魔法防御 38
素早さ 77
知力 684
【スキル】
隠密Lv.3
敵感知Lv.1
危険感知Lv.1
千里眼Lv.1
===

 ……確かに大分レベルは上がってる。ホームレスの俺は、帰る場所も無いので他の冒険者よりも時間が有り余っている。だからレベルが上がるのは早い。

 けど!だからってまだ四天王戦は早くないかな!?

 ……だが俺には『知力』と言う名のチートがある。これからは知力と書いてチートと読もう。

 この世界は知力チートの高さによってスキルポイントの獲得量が左右される。ここだけは、学力至上主義である日本出身の俺の独壇場だ。

 事実、俺の今のスキルポイント91だ。節約癖があったため、中々勿体なくて使えなかったが……この四天王戦で死んでしまえばそれまで。今回ばかりは全てのスキルポイントを使わせて貰う。

 まず真っ先に取るべきは特殊スキルの『思考加速』。60ポイント使用して思考加速をレベル3まで上げる。そして次に10ポイント使って『危険感知』をレベル2に上げる。

「残り21ポイントか……」

 適当に強そうなのを習得しても、中途半端にレベルを上げてもあまり効果は無いだろう。

 ならば3ポイントで習得出来る魔法にポイント使うのが吉。

 回復魔法はダメだな。四天王の攻撃を一撃でもくらってみろ。回復する間もなく死にそうだ。

 闇魔法は魔王軍というだけあって効かなそうだな……。なら風か氷……。

「まぁ……氷属性魔法かな……」

 氷なら、相手の動きを鈍く出来る可能性もある。15ポイント使って氷属性魔法をレベル5まで上げる。

 あとは、5ポイントで強化スキルでも習得しておこう。何を強化してくれるのかは分からんが、少しは役に立つだろう。

===
名前 ヤマニシ シュウ
性別 男性
年齢 16
職業 盗賊
レベル 18
HP 76/76
MP 38/38
攻撃力 58
物理防御 57
魔法防御 38
素早さ 77
知力 684
【スキル】
隠密Lv.3
思考加速Lv.3
敵感知Lv.1
危険感知Lv.2
千里眼Lv.1
身体強化Lv.1
氷魔法Lv.5
===

「まぁ、こんなもんか」

 強化スキルってのは身体強化のことだったのか……。結構使いやすそうなスキルで助かった。

「何ボサっとしてんだ、シュウ。早く行くぞ!」
「あぁ、行くか」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール
ファンタジー
「最強になったらまた会おう」 かつて親友だったスライム、蜘蛛、鳥、ドラゴン、 4匹は最弱ランクのモンスターは、 強さを求めて別々に旅に出る。 そして13年後、 最強になり、魔獣四王と恐れられるようになった彼女ら は再び集う。 しかし、それは世界中の人々にとって脅威だった。 世間は4匹が好き勝手楽しむ度に 世界の危機と勘違いをしてしまうようで・・・? *不定期更新です。 *スピンオフ(完結済み) ヴァイロン家の少女が探す夢の続き~名家から追放された天才女騎士が最強の冒険者を目指すまでの物語~ 掲載中です。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...