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ギルド登録、そしてステータス

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「えっと、冒険者登録をしたいのですが……」

 次の日の朝、俺は冒険者ギルドへと向かった。

「はい、それでは手数料の方ですが……」
「て、手数料ですか……」

 え、手数料とかあんの?いや、よく考えたら無料なワケないか……。ど、どうしよう……。

「す、すみません……いま手持ちが無くて……」
「安心して下さい。そのような方の為に、ギルド内で借金が出来るんですよ」
「借金……ですか?」
「えぇ、借金と言ってもそんな重いものではありませんよ。借金を作ってから最初に受けたクエストの報酬から、借金と利子の分だけ引かれるだけです」
「因みに利子というのはどのくらいですか……?」
「全体の1割程度ですね。手数料が100アルトなので、次の報酬から110アルト引かれることになります」
「そうですか。なら、それでお願いします」

 今更だけど、この世界の通貨単位はアルトっていうのか。ソプラノとかもあるのだろうか……。

「それでは、そこの装置に触れて下さい」
「分かりました」

 受付のお姉さんに言われた通り、そばにある水晶のような装置に触れる。すると、装置が眩く光り始める……!

 一体……何が起こっているんだ……!?この水晶は一体……。

 俺が動揺をしている間に、光が徐々に小さくなり、やがて完全に消失する。

「はい、ステータスが確認出来ました」

 そう言った受付のお姉さんの手には、いつの間にかカードのようなものが握られていた。

「ステータス……?」

 ステータスってあれか?ゲームとかであるパラメータのことか?攻撃力だとか防御力だとか……そういうやつ?

 取り敢えず、そのステータスとやらを一度見てみようか……。

「えっと……その……レベルが上がればステータスも上がるので……元気出してくださいね!」
「は、はぁ……」

 そう言いながら引き攣った笑みでカードを渡してくる受付のお姉さん。

 言い回しからすると、俺のステータスとやらが低いってことなのだろうか……?

 若干の恐怖感を感じながら恐る恐るカードを見ると……

===
名前 ヤマニシ シュウ
性別 男性
年齢 16
職業 なし
レベル 1
HP 8/8
MP 4/4
攻撃力 7
物理防御 6
魔法防御 4
素早さ 9
知力 72
【スキル】
なし
===

「……」
「……」
「……あの、平均ってどれくらいでしたっけ」
「……全てにおいて10です」
「……そうですか」
「……はい」

 知力以外は平均以下……その代わり知力に関しては平均の7倍か。この知力が高いってのは、この世界の平均学力が地球の平均学力よりも低いってことか?

 出来ることなら知力以外にもこの数値を割り振って欲しかったな、なんて。

 それにしても、このステータス……間違いない。やはりゲームのパラメータ画面と瓜二つだ。ロクにRPGをやったことないが、そんな俺でも分かる。

 この世界はゲームの中なのか……?一体どうして……。

「えっと……次に職業を決めるのですが……宜しいですか……?」
「あ、はい。すみません、お願いします」

 思考に浸っていると、受付のお姉さんが呼び掛けてくる。

 どうせ分からないことだ。今考えても仕方ない、か。

「……それでは、次に職業ですが……。職業には主に、戦士、狩人、盗賊、魔術師、治癒術士の五つです。」
「なるほど……」

 受付のお姉さんの話をまとめるとこうだ。

 一つ目の戦士。これはパーティの中心となる職業だ。戦士には主に二つの役割がある。一つは敵のタゲ取り、もう一つは近接攻撃での攻撃だ。因みに、この二つの役割を一人でやるパーティもあれば、二人戦士を入れて役割を分担させるパーティもあるそうだ。

 二つ目の狩人。狩人は、弓などを使って遠距離から攻撃する職業だ。だが、近接戦に持ち込まれることを想定して近接戦もある程度は出来るらしい。

 三つ目の盗賊。盗賊は所謂バックアップ要員だ。普段は相手にデバフをかけることでパーティをサポートするが、いざとなると得意の素早い行動で敵を撹乱したり、ダンジョンの罠を解除したりと、中々重宝される職業だ。

 四つ目の魔術師。魔術師は詠唱という攻撃までの準備時間がある代わり、一撃の威力が凄まじく、パーティの火力要因となる職業だ。ただ、狩人とは違い、強力な魔法の詠唱中は動けない上、近接戦に持ち込まれるとまず勝ち目は無いので、まず一人では戦えない職業だ。

 最後に治癒術士。その名の通り、傷付いた仲間を癒す職業だ。また、盗賊とは反対に、パーティにバフをかけることも出来るので、治癒術士がいるかいないかがクエストの成功を左右する、とまで言われている。

 以上が全ての職業だ。レベルを上げていけば、自分の職業の上位職になることも可能らしい。

「それで、ヤマニシさんはどの職業にしますか?」
「うーん……」

 職業は一度決めると基本的には変えられないらしい。『基本的に』と言うことは一応変えられるのだろうが、ここは後悔の無い選択にしよう。

 まず魔術師と治癒術士。この二つは論外だ。たしかに生計を立てることが目的ならこの二つを選んでも良いのだが、俺には世界中を回って地球への帰還法を見つけなければならない。ゆく先々でパーティを作れる可能性は低い。

 この二つはパーティで行動しなければまず死ぬ。だから論外。はい次。

 残るは戦士、狩人、盗賊の三つだ。ぶっちゃけ言うと、どれも良いと思う。だが、この中で選べと言うのなら……まぁ盗賊が妥当だろう。

 基本的に一人で行動する予定の俺にとっては身軽な盗賊が一番あっているだろう。いざとなれば逃げやすいし。

「盗賊でお願いします」
「盗賊ですね。では、そのステータスの職業欄をタッチしてみて下さい」
「はい」

 職業欄をタッチすると、カードに書かれている内容がステータスから職業の選択肢の画面へと変わる。

 凄いな……久しぶりにスマホいじってる気分になる。

「それでは、盗賊を選択してください」
「はい……出来ました」
「これでヤマニシさんは晴れて冒険者になることが出来ました。あとは、そのステータスカードの使い方ですね」
「お願いします」

 使い方って……何を教わるんだろう……?

「スキル欄をタッチしてみて下さい」
「分かりました」

 スキル欄をタッチすると、再び画面が切り替わる。

===
スキルポイント 22pt

特殊スキル 20pt ◆
隠密スキル 10pt
感知スキル 10pt ◆
強化スキル  5pt 
盗賊スキル  5pt ◆
風属性魔法  3pt
氷属性魔法  3pt
闇属性魔法  3pt
回復魔法   3pt
===

「これは……」
「今カードに映し出されているのはスキルツリーと言います」
「スキルツリー……ですか」

 どこにツリー要素があるのか、というツッコみはいれないでおこう。

「この欄では、一番上にあるスキルポイントを消費して様々なスキルを習得出来ます」
「このスキルポイントは増やすことって出来るんですか?」
「レベルが1上がるごとに貰えますよ。貰える量は知力によって左右されるので、知力がかなり高いヤマニシさんならかなりの量貰えるかと!」
「お、おぉ……。この世界来て初めて良いことあったかも……」
「この世界……?」
「あぁいえ、気にしないで下さい! それより、この名前の横にある黒色のダイヤみたいなマークってなんですか?」

 そう大慌てで話を逸らす。これからはうっかり変なことを口走らないよう気を付けなければ……。

「あぁ、それは……。百分は一見にしかず……タッチしてみて下さい」
「え、あ、はい、分かりました」

 とりあえず、一番上の『特殊スキル』の横にあるマークをタッチする。

===
【特殊スキル】 20pt
思考加速
並行思考
属性付与エンチャント
暗視
千里眼
===

「なるほど。一つの枠にいくつものスキルが配置されているってことですか?」
「察しが良いですね。その通りです」

 まじか。半分勘だったんだけど……。

「スキルの説明はこんなところでしょうか。それにしても、凄いスキルポイントですね……」
「そんなに凄いんですか?」
「えぇ、大抵の初期ポイントは2か3、多くても10を越えたポイントを持ってる人はいませんでしたよ」
「これも知力に左右されてるんですか?」
「えぇ、そうですよ」

 数少ない俺の長所だ。ここをどう使うかがこの世界を生き抜く鍵となってくるな……。

「他に説明はありますか?」
「そうですね……あとはギルドの設備諸々の説明でしょうか?」
「そうですか、お願いします」

 ◇◆◇◆◇

「さて、何を受けようかな……」

 説明を受け終えた俺はどの依頼を受けるか、クエストボードという依頼内容を見れるボードの前に立っている。

「うーん……まぁこの薬草の採取クエストが無難だよな……」

 幸い、図書館で薬草の絵は見たことある。特徴的な外見なので、まぁ間違えたり見つけられないなんてことは無いだろう。

「報酬は薬草一束につき100アルト……悪くないんじゃないか?」

 100アルトと言ったら俺が散々盗んできたリンゴが一つ買えるくらいの値段だ。中々美味しい依頼なのでは無いだろうか。

 けど、それなら人気があってもおかしくないハズなのだが……。

 そう思い他の依頼を見てみると、ゴブリンの討伐は一体につき1000アルトだった。たしかゴブリン武器さえあれば子どもでも倒せるほどの弱小モンスターだったハズ。

「なるほどね、それなら討伐クエストに行った方が美味しいね……」

 だな俺はチキンなので採取クエストの方を受ける。何事も慎重すぎるくらいな方が良いのだ。
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