ティラミス

静流

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「アレクさん。気にし過ぎですよ?それ位で評価は変わりません」

苦笑混じりの慰めでも、幾分は効果があったようで、アレクも苦笑を返してきた。

「明日は、カイ殿に案内して貰うとしよう。どうも、私とは相性が悪いようだ」

「閣下…言うに事欠いて、子供染みてますぞ」

アレクの言いように、支配人が呆れ顔になっている。

「事実だと思うがな。生憎と、印にすら反応できないのだ、適任者に任せて何が悪いのだ?」

「ご自分で、探す努力をされたら如何ですか?」

「既に、ここまで来てか?時間の無駄だろう」

肩を竦め、あっさりと言い切る辺り、諦めがいいと褒めるべきか、やる気がないと責めるべきか微妙なところだ。

「ここから先で確認されても、遅くないのですが?」

「それに関しては、一応は確認するつもりだが…カイ殿、教えて貰えるか?」

「それは構いませんが、アレクさんなら直ぐに気付きますよ?」

有ると分かっていれば、探すまでもないと言ったのだが、ジッと凝視してきて断れない雰囲気だ。

「そうだとしても、是非とも、カイ殿にご教授願いたい」

「分かりました。では、別れ道に出た際に示させて頂きます」

何となく押し切られ、約束してしまったが、本当に必要なのかと内心首を捻っていた。

「閣下。甘え方が歪んでませんか?」

「辞めて置きなさい。藪蛇になっても知りませんよ?」

ライラスの突っ込みに、フランクが釘を刺して止めているが、運良く(?)アレクの関心外で、聞き流されていた。

「支配人、そういうことで先に進んでくれるか?」

「仰せの通りにさせて頂きます」

支配人は、生温かい目を向けながら応じ、身を翻した。
背後からは、微妙な空気が漂っていたが、敢えて口出す者もいない。

「ああ、あの壁にあります。アレクさん判りますか?」

見えてきた分岐点の壁を示し、確認すれば、妙に嬉しそうに眺め頷いていた。

「アレだな。その印を見落としていたのか…」

「丁度、私の目線ですから、アレクさん達が気付かないのも、仕方がないですよ」

アレクたちに取っては、視界の隅に過ぎない位置だ。
だが、一般的か小柄な者には、丁度いい場所でもある。
だから、獣人でも割と小柄な部類に入るサラは、しっかり確認できたのだ。

「成程な。だから、サラ嬢とカイ殿に確認を取ったのだな」

半ば呆れ気味に支配人へ、視線を向けているが、気持ちは何となく分かる気がした。

「おや、人聞きが悪いですな。観察力があれば、気付いていたのでは?」

一理あるが、楽しみにきた先で、敢えてする事でもない。
随分と意地の悪い、と眉根を寄せたのに、支配人が目敏く気付き、肩を落としている。

「支配人、何で貴方が憔然とするのだ?私の方がしたい位なのだがな」

「カイ様の不興を買うのは、私とて避けたいのです。つい、調子に乗り過ぎました」

嘆息を吐き、首を振って後悔したと主張している。
少々大袈裟な態度に、口元がヒクリとなるが、追及しては完全に悪者になりそうだ。
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