ティラミス

静流

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「カイ殿、敢えて知るほどの内容ではない。ただの痴話喧嘩だからな」

アレクは、呆れた様に支配人に目を遣りながらも、後押ししてきた。

「カイさんには、目新しいから興味を持っても可笑しくはないわ。煽った人間が、制止するのも変よね」

サラは、アレクの反応に気付いて半笑していた。

「そこを突かれると、私が悪いことになりますな。煽ったのも同然ですしね」

支配人が渋い顔で、ボヤいて応じてきた。
双方から嫌味を言われ、少々拗ねたような物言いになっている。

「あら、別に支配人が悪いとは言ってないわよ?」

「あの、それでその皿の方の方々は、誕生祝いのディナーにその皿を指定してきたんですか?」

「えっ、ああ、そうです。なんでも、皿の持ち主を調べた結果、此方に辿り着いたとか」

「それで、その後に騒動で割れるとは、まるで申し合わせたような展開ですね」

何やらきな臭い感じがしてきて、眉根を寄せれば、支配人も妙な表情になっている。

「今更ながら…何か仕組まれた感じがしてきますね」

「でも、あの2人それほど悪どい性格ではない…はず。あ、だけどあの幼馴染は怪しいかも?」

サラが慌てて擁護にかかるのだが、言いながら考え込み、片方の幼馴染に焦点を向けている。

「この店を探し出したのも、その男の方でしたが…。何が狙いなんでしょうか?」

「…まさかな。カイ殿?」

「分かりませんが、可能性はあるかと。なにしろ一点物ですから」

アレクは気付いたようで、目を見張り確認してきたが、否定を期待しているような雰囲気が滲み出ていた。

「2人で納得しないで、説明してくれませんか?」

焦れたように支配人が、口を挟んできた。

「偽物を作成した者が、いる可能性を疑っているんです」

「偽物ですか?」

キョトンとした顔で聞き返され、考えもしなかったのが見てとれた。

「ええ、先に作成して、本物を割れば証拠抹消になりますから。偽物の証拠が減ります」

「本物に取って代わるという事ですか…。いやはや、珍妙な事を企む輩がいる者ですな」

「よく分かっていない者が、多いという事です。まあ、騙される方にも、問題がありますが」 

「ちょっと待って、その言い方だと即バレる犯罪なの?」

サラが、訝しげな視線を向けて聞いてきた。

「偽造防止用に、明確な取り決めがあります。ただ、一般的には周知してないので、サラ様がご存知ないのは当然ではないかと」

「実際には政府関係者と、商家やギルド関連が知っているくらいだろう。サラ嬢が知っていた方が可笑しい位だ、気に病むことはない」

「そうですな。私はど忘れしていましたが、以前なら疑うべき事案でした。随分と暢気な思考になったみたいです」

支配人は、溜息を漏らして首を振って、自分自身にダメ出しをしている。
割と愕然とした感じで、肩を落とす位には衝撃があったようだ。
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