1 / 2
1
しおりを挟む
「このグラスを見ていると」
フランス工芸の至宝、『エレガンスの同義語』と賞賛されるバカラ・クリスタルは、星の煌き。
複雑にカットされたワイングラスをじっと見つめ、早川忍はほぅっと悩ましいため息を零した。
「コストの問題がいくつも頭に浮かびます。非常に凝ったデザインですね。プラスチックなら、この数千分の一のコストで済むのに」
「二百五十年の歴史を誇るクリスタルガラスの最高峰に、他に言うことはないのか?」
勤務先の先輩、加東千秋に詰るように言われ、「他に、ですか」と忍は記憶の蔵を探る。
「クリスタルガラスとは、一般に珪砂、カリウム、ソーダ灰などのガラスの主成分に、酸化鉛を添加して形成される鉛ガラスの一種を言います」
「……」
「高級洋食器、グラス、シャンデリア、ジュエリー等、用途は多種多様」
「……もういい」
疲れたように、千秋は手を振った。
忍のこの手の発言には慣れている。ただ、虚しさに慣れることができないだけで。
芸術オンチ。美感砂漠。スーパードライ。感動欠乏症。感性のミニマリスト。
過去に忍に捧げられた輝かしい称号の数々。身も蓋もないそれらは、忍のひととなりの一部を如実に表している。
ルネサンスの名画を見ても、
「この女性はふくよかすぎます。まず間違いなくメタボリック症候群ですね」
最高級の玉露を飲んでも、
「かぶせ茶は煎茶よりカテキンの量が少ない。スーパーの煎茶の方が体に良いです」
無味乾燥とした発言で周囲の人間を脱力させてきた忍は、今また、その美的オンチを憂う先輩を脱力させ、問題のグラスからワインを一口含んだ。
「ワインの味も、百均で買ったグラスで飲むのと変わりません」
「黙れ、美的オンチの味覚オンチ。それは『王のワイン』だとわかって飲んでいるのか?」
「千円くらいのテーブルワインだと思ってました」
けろりと答え、瞬殺で千秋をテーブルに沈めてから、忍は光にかざしたグラスを興味深そうに矯めつ眇めつしている。
「『王のワイン』、シャトー・ラフィット・ロートシルト。メドックの第一級格付けワインの中でしばしばその筆頭に挙げられる、世界最高水準のボルドーワイン」
「その世界最高水準をそこらの千円ワインと一緒にしたんだな、忍は」
「ポリフェノール含有量とアルコール度数に大差なければ、どちらも同じでしょう」
「違う!」
美しいもの美味しいものに対する忍の並外れた鈍さは、常識の範囲を突き抜けていていっそ清々しい。それを知った時には腹の底から痛快に思い、けれど諸般の事情から、千秋は矯正プログラムを組んでこうしてたびたび忍を教育している。
──ロココvsミニマリスムだな。
同僚の河野直単語がそう言ってからかう二人の取り組みは、お世辞にも上手くいっているとは言えない。
忍の美的オンチは社内でも有名だったが、千秋の徹底した唯美主義もまた知らない者はなかった。河野が言ったように、ゴージャスとシンプルの両極端に位置する二人の間に立ちはだかる壁は、38度線よりも厳然と存在している。
「千秋さんも俺なんかに構ってないで、女性を相手にしたらどうですか」
「女は私が手を加えなくても、最高の自分を維持しようとする生き物だよ。その努力が可愛いんじゃないか」
「俺にもその努力をしろと?」
「最高の自分以前に、自分の価値をわかっていないだろう、忍は」
美しいものに無頓着な忍は、自身の匂い立つような美貌の価値に気づいていない。当然、その美貌に吸い寄せられて群がる男女にも。
「美しいものはより美しく。それが美しく生まれついた者の義務だ。国連憲章にも、そう規定されているはずだ」
「どこの星の国連ですか、それは」
「私の美意識に適ったからには、相応の美的感覚を具えてもらう。それが忍の生きる道だ」
千秋の抱える『諸般の事情』──日本人のそれとは一線を画するゴージャス美意識に、初めてぴたりと合致した忍を、極致美という作品として完成させる企み。
それは貴族的、享楽的と評されることの多い千秋にとって、手間が掛かるがゆえに、誰も知らない花を密かに慈しみ育てるような極上の愉しみだった。
「生きる道って……ろくでもないところに通じてるんじゃないですか、それ」
自身も相当に恵まれた容姿を持ち、それを正確に自覚し活用している千秋は、ぼやく忍を宥めるように、自身を最も魅力的に見せる甘い笑顔を向けた。──勿論、美的オンチには何の効果もなかったが。
銀座の中央通りを一本入ったところにひっそりと佇む、カワノ宝飾店。
鹿鳴館時代に創業した家族経営の小さな店は、確かな品質とデザイン性の高さでその名を知られ、その作品は雑誌でもたびたび特集を組まれるほどの人気を誇る。
フォーマルな装いに相応しいハイジュエリーも扱うが、『ちょっと背伸びすれば手が届く』『頑張った自分へのご褒美』という、女性たちの可愛い向上心をくすぐるアイテムも得意とするこの店の評判を、ここ数年更に高めているのが加東千秋。数々のコンテスト受賞歴を誇る、新進気鋭のデザイナーだ。
店舗を兼ねた自社ビルのオフィス三階、パーテーションで仕切られたミーティングスペースには今、テーブルを挟んで向き合う二人の間に、とぐろ巻く暗雲が立ち込めていた。
「ジュエリーは完全に美しくなければ意味はない」
「ジュエリーは売れなければ意味はありません」
千秋が低く唸れば、忍が冷たく切り捨てる。
二人ともなまじ美形なだけに、ただそれだけの素っ気ない仕事のやりとりが、鬼気迫るサイコホラーの一場面のように見える。
「いやあ、これぞ真っ向勝負」
すっかり慣れっこの河野は、呑気に合いの手を入れるが、たまたま側を通り掛かった経理の社員は、「見てはならないものを見た……」と言わんばかりに顔を引き攣らせ、逃げるように恐怖の部屋から立ち去った。
デザイナーの千秋と、『商品企画の金庫番』の忍。二人の戦いは、カワノ宝飾店の名物となりつつある。
有名芸大の工芸科を卒業後、大手宝飾店のデザイン室に就職してデザインの実践的なノウハウを吸収し、スキルを磨いた千秋は、会社の商品企画に沿った窮屈なデザインに飽き飽きしていたところを、大学時代の友人である河野に誘われてカワノ宝飾店に入社した。
カワノ宝飾店の六代目、次期社長となる河野は現在商品企画のチーフを務めており、学生時代から「こいつには敵わない」とその才能を認めていた千秋を、いつか自社に引き抜きたいと考えていた。
そのための条件が、『千秋の好きにデザインしていい』。
天才肌ゆえにアーティスティックに走りがちな千秋のデザインが、その要求通りに商品化すると採算割れを起こす可能性が高いということに気づいたのは、千秋が入社してからのこと。
のちに対千秋の最終兵器となる忍が入社したのは、その一年後のことだった。
「バカラと百均のグラスを一緒にする美的オンチは、私の作品に口を出さないでもらおうか」
「採算という概念がわからないヴェルサイユの住人は、黙っててください」
すかさずやり返した忍の言い草に、それを耳にした外野の人間がくすりと笑う。
一人暮らしの自宅マンションより近いから、と珍しく悪酔いした千秋を送り届けたことのある河野の弁によると、元は子爵家という加東家の本宅は「プチ・ヴェルサイユだった」。
外観も内装も、本家ヴェルサイユ宮殿に迫る豪華さだったそうで、そんな環境で培われた千秋の感性が、侘び寂びを尊ぶ日本人のそれとは異なるのも無理からぬことと、カワノ宝飾店の社員一同、深く納得したものだった。
「何度も言いますが、この『舞雪』シリーズは三十歳前後の女性をターゲットに据えているんです。この大きさの中石をダイアモンドにしたら、価格面でアピールできないでしょう」
「では聞くが、何なら代用できると言うんだ」
「ジルコニアなら問題ないですよ」
展示会で発表する新作に人工石を提案する、宝飾店の社員としてあるまじき無味乾燥とした感性。
それこそ忍だと知る千秋も、さすがに眉を吊り上げた。
「私の作品に人工石を使えと言うのか」
「透明で屈折率もダイアモンドに近い。組成と値段以外は同じようなものです」
「何ものにも侵されない孤高の煌きを、人工のそれと一緒にするな」
「プロでもない限り、見分けられる人なんていませんよ」
「ダイアモンドは親油性だ、油性ペンの筆跡が残る」
「せっかく買ったジュエリーに落書きする人はいませんから安心してください。そもそも『舞雪』で、1カラットのダイアモンドをメインにメレーを散りばめた金満ヴェルサイユ商品を売る予定はないです。皆無です」
「そうそう。頑張れ、忍くん」
祖父同士が親友で家も近く、幼馴染みと言えなくもない忍の美貌と、徹底して費用対効果を重視するその価値観に目をつけ、就職活動中の忍を言葉巧みに誘い込みカワノ宝飾店に入社させた自分の手腕を、河野は高く評価している。
店舗に立つ忍は、その丁寧な接客と、すっきり整った怜悧な容貌で予想通りに女性客の心を掴み、オフィスにおいては予想以上に対等に千秋と渡り合っていた。
デザイン重視の千秋と、コスト重視の忍。
不倶戴天の敵のような間柄の二人は、しかし普段は仲のいい先輩後輩なのだから、カワノ宝飾店の未来はそれなりに明るいのかもしれない。
からかうような合いの手を入れた河野を千秋が横目で睨みつけた時、緊張を破るように間延びした正午のチャイムが鳴った。
「……昼、行くか」
「そうですね」
一時休戦。
ため息一つ、連れ立って席を立つ二人を、愛妻弁当派の河野は、ひらひらと手を振りながら見送った。
「いってらっさーい」
フランス工芸の至宝、『エレガンスの同義語』と賞賛されるバカラ・クリスタルは、星の煌き。
複雑にカットされたワイングラスをじっと見つめ、早川忍はほぅっと悩ましいため息を零した。
「コストの問題がいくつも頭に浮かびます。非常に凝ったデザインですね。プラスチックなら、この数千分の一のコストで済むのに」
「二百五十年の歴史を誇るクリスタルガラスの最高峰に、他に言うことはないのか?」
勤務先の先輩、加東千秋に詰るように言われ、「他に、ですか」と忍は記憶の蔵を探る。
「クリスタルガラスとは、一般に珪砂、カリウム、ソーダ灰などのガラスの主成分に、酸化鉛を添加して形成される鉛ガラスの一種を言います」
「……」
「高級洋食器、グラス、シャンデリア、ジュエリー等、用途は多種多様」
「……もういい」
疲れたように、千秋は手を振った。
忍のこの手の発言には慣れている。ただ、虚しさに慣れることができないだけで。
芸術オンチ。美感砂漠。スーパードライ。感動欠乏症。感性のミニマリスト。
過去に忍に捧げられた輝かしい称号の数々。身も蓋もないそれらは、忍のひととなりの一部を如実に表している。
ルネサンスの名画を見ても、
「この女性はふくよかすぎます。まず間違いなくメタボリック症候群ですね」
最高級の玉露を飲んでも、
「かぶせ茶は煎茶よりカテキンの量が少ない。スーパーの煎茶の方が体に良いです」
無味乾燥とした発言で周囲の人間を脱力させてきた忍は、今また、その美的オンチを憂う先輩を脱力させ、問題のグラスからワインを一口含んだ。
「ワインの味も、百均で買ったグラスで飲むのと変わりません」
「黙れ、美的オンチの味覚オンチ。それは『王のワイン』だとわかって飲んでいるのか?」
「千円くらいのテーブルワインだと思ってました」
けろりと答え、瞬殺で千秋をテーブルに沈めてから、忍は光にかざしたグラスを興味深そうに矯めつ眇めつしている。
「『王のワイン』、シャトー・ラフィット・ロートシルト。メドックの第一級格付けワインの中でしばしばその筆頭に挙げられる、世界最高水準のボルドーワイン」
「その世界最高水準をそこらの千円ワインと一緒にしたんだな、忍は」
「ポリフェノール含有量とアルコール度数に大差なければ、どちらも同じでしょう」
「違う!」
美しいもの美味しいものに対する忍の並外れた鈍さは、常識の範囲を突き抜けていていっそ清々しい。それを知った時には腹の底から痛快に思い、けれど諸般の事情から、千秋は矯正プログラムを組んでこうしてたびたび忍を教育している。
──ロココvsミニマリスムだな。
同僚の河野直単語がそう言ってからかう二人の取り組みは、お世辞にも上手くいっているとは言えない。
忍の美的オンチは社内でも有名だったが、千秋の徹底した唯美主義もまた知らない者はなかった。河野が言ったように、ゴージャスとシンプルの両極端に位置する二人の間に立ちはだかる壁は、38度線よりも厳然と存在している。
「千秋さんも俺なんかに構ってないで、女性を相手にしたらどうですか」
「女は私が手を加えなくても、最高の自分を維持しようとする生き物だよ。その努力が可愛いんじゃないか」
「俺にもその努力をしろと?」
「最高の自分以前に、自分の価値をわかっていないだろう、忍は」
美しいものに無頓着な忍は、自身の匂い立つような美貌の価値に気づいていない。当然、その美貌に吸い寄せられて群がる男女にも。
「美しいものはより美しく。それが美しく生まれついた者の義務だ。国連憲章にも、そう規定されているはずだ」
「どこの星の国連ですか、それは」
「私の美意識に適ったからには、相応の美的感覚を具えてもらう。それが忍の生きる道だ」
千秋の抱える『諸般の事情』──日本人のそれとは一線を画するゴージャス美意識に、初めてぴたりと合致した忍を、極致美という作品として完成させる企み。
それは貴族的、享楽的と評されることの多い千秋にとって、手間が掛かるがゆえに、誰も知らない花を密かに慈しみ育てるような極上の愉しみだった。
「生きる道って……ろくでもないところに通じてるんじゃないですか、それ」
自身も相当に恵まれた容姿を持ち、それを正確に自覚し活用している千秋は、ぼやく忍を宥めるように、自身を最も魅力的に見せる甘い笑顔を向けた。──勿論、美的オンチには何の効果もなかったが。
銀座の中央通りを一本入ったところにひっそりと佇む、カワノ宝飾店。
鹿鳴館時代に創業した家族経営の小さな店は、確かな品質とデザイン性の高さでその名を知られ、その作品は雑誌でもたびたび特集を組まれるほどの人気を誇る。
フォーマルな装いに相応しいハイジュエリーも扱うが、『ちょっと背伸びすれば手が届く』『頑張った自分へのご褒美』という、女性たちの可愛い向上心をくすぐるアイテムも得意とするこの店の評判を、ここ数年更に高めているのが加東千秋。数々のコンテスト受賞歴を誇る、新進気鋭のデザイナーだ。
店舗を兼ねた自社ビルのオフィス三階、パーテーションで仕切られたミーティングスペースには今、テーブルを挟んで向き合う二人の間に、とぐろ巻く暗雲が立ち込めていた。
「ジュエリーは完全に美しくなければ意味はない」
「ジュエリーは売れなければ意味はありません」
千秋が低く唸れば、忍が冷たく切り捨てる。
二人ともなまじ美形なだけに、ただそれだけの素っ気ない仕事のやりとりが、鬼気迫るサイコホラーの一場面のように見える。
「いやあ、これぞ真っ向勝負」
すっかり慣れっこの河野は、呑気に合いの手を入れるが、たまたま側を通り掛かった経理の社員は、「見てはならないものを見た……」と言わんばかりに顔を引き攣らせ、逃げるように恐怖の部屋から立ち去った。
デザイナーの千秋と、『商品企画の金庫番』の忍。二人の戦いは、カワノ宝飾店の名物となりつつある。
有名芸大の工芸科を卒業後、大手宝飾店のデザイン室に就職してデザインの実践的なノウハウを吸収し、スキルを磨いた千秋は、会社の商品企画に沿った窮屈なデザインに飽き飽きしていたところを、大学時代の友人である河野に誘われてカワノ宝飾店に入社した。
カワノ宝飾店の六代目、次期社長となる河野は現在商品企画のチーフを務めており、学生時代から「こいつには敵わない」とその才能を認めていた千秋を、いつか自社に引き抜きたいと考えていた。
そのための条件が、『千秋の好きにデザインしていい』。
天才肌ゆえにアーティスティックに走りがちな千秋のデザインが、その要求通りに商品化すると採算割れを起こす可能性が高いということに気づいたのは、千秋が入社してからのこと。
のちに対千秋の最終兵器となる忍が入社したのは、その一年後のことだった。
「バカラと百均のグラスを一緒にする美的オンチは、私の作品に口を出さないでもらおうか」
「採算という概念がわからないヴェルサイユの住人は、黙っててください」
すかさずやり返した忍の言い草に、それを耳にした外野の人間がくすりと笑う。
一人暮らしの自宅マンションより近いから、と珍しく悪酔いした千秋を送り届けたことのある河野の弁によると、元は子爵家という加東家の本宅は「プチ・ヴェルサイユだった」。
外観も内装も、本家ヴェルサイユ宮殿に迫る豪華さだったそうで、そんな環境で培われた千秋の感性が、侘び寂びを尊ぶ日本人のそれとは異なるのも無理からぬことと、カワノ宝飾店の社員一同、深く納得したものだった。
「何度も言いますが、この『舞雪』シリーズは三十歳前後の女性をターゲットに据えているんです。この大きさの中石をダイアモンドにしたら、価格面でアピールできないでしょう」
「では聞くが、何なら代用できると言うんだ」
「ジルコニアなら問題ないですよ」
展示会で発表する新作に人工石を提案する、宝飾店の社員としてあるまじき無味乾燥とした感性。
それこそ忍だと知る千秋も、さすがに眉を吊り上げた。
「私の作品に人工石を使えと言うのか」
「透明で屈折率もダイアモンドに近い。組成と値段以外は同じようなものです」
「何ものにも侵されない孤高の煌きを、人工のそれと一緒にするな」
「プロでもない限り、見分けられる人なんていませんよ」
「ダイアモンドは親油性だ、油性ペンの筆跡が残る」
「せっかく買ったジュエリーに落書きする人はいませんから安心してください。そもそも『舞雪』で、1カラットのダイアモンドをメインにメレーを散りばめた金満ヴェルサイユ商品を売る予定はないです。皆無です」
「そうそう。頑張れ、忍くん」
祖父同士が親友で家も近く、幼馴染みと言えなくもない忍の美貌と、徹底して費用対効果を重視するその価値観に目をつけ、就職活動中の忍を言葉巧みに誘い込みカワノ宝飾店に入社させた自分の手腕を、河野は高く評価している。
店舗に立つ忍は、その丁寧な接客と、すっきり整った怜悧な容貌で予想通りに女性客の心を掴み、オフィスにおいては予想以上に対等に千秋と渡り合っていた。
デザイン重視の千秋と、コスト重視の忍。
不倶戴天の敵のような間柄の二人は、しかし普段は仲のいい先輩後輩なのだから、カワノ宝飾店の未来はそれなりに明るいのかもしれない。
からかうような合いの手を入れた河野を千秋が横目で睨みつけた時、緊張を破るように間延びした正午のチャイムが鳴った。
「……昼、行くか」
「そうですね」
一時休戦。
ため息一つ、連れ立って席を立つ二人を、愛妻弁当派の河野は、ひらひらと手を振りながら見送った。
「いってらっさーい」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
【完結】幸せしかないオメガバース
メグル
BL
オメガバースが当たり前に存在する現代で、
アルファらしいアルファのアキヤさんと、オメガらしいオメガのミチくんが、
「運命の相手」として出会った瞬間に大好きになって、めちゃくちゃハッピーな番になる話です。
お互いがお互いを好きすぎて、ただただずっとハッピーでラブラブなオメガバースです。
※性描写は予告なくちょこちょこ入ります。
隠れSな攻めの短編集
あかさたな!
BL
こちら全話独立、オトナな短編集です。
1話1話完結しています。
いきなりオトナな内容に入るのでご注意を。
今回はソフトからドがつくくらいのSまで、いろんなタイプの攻めがみられる短編集です!隠れSとか、メガネSとか、年下Sとか…⁉︎
【お仕置きで奥の処女をもらう参謀】【口の中をいじめる歯医者】
【独占欲で使用人をいじめる王様】
【無自覚Sがトイレを我慢させる】
【召喚された勇者は魔術師の性癖(ケモ耳)に巻き込まれる】
【勝手にイくことを許さない許嫁】
【胸の敏感なところだけでいかせたいいじめっ子】
【自称Sをしばく女装っ子の部下】
【魔王を公開処刑する勇者】
【酔うとエスになるカテキョ】
【虎視眈々と下剋上を狙うヴァンパイアの眷属】
【貴族坊ちゃんの弱みを握った庶民】
【主人を調教する奴隷】
2022/04/15を持って、こちらの短編集は完結とさせていただきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
前作に
・年下攻め
・いじわるな溺愛攻め
・下剋上っぽい関係
短編集も完結してるで、プロフィールからぜひ!
わるいこ
やなぎ怜
BL
Ωの譲(ゆずる)は両親亡きあと、ふたりの友人だったと言うα性のカメラマン・冬司(とうじ)と暮らしている。冬司のことは好きだが、彼の重荷にはなりたくない。そんな譲の思いと反比例するように冬司は彼を溺愛し、過剰なスキンシップをやめようとしない。それが異常なものだと徐々に気づき始めた譲は冬司から離れて行くことをおぼろげに考えるのだが……。
※オメガバース。
※性的表現あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる