英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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悪童の流儀(3)

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 ゆらゆらと、温かい。気持ちいい、でも心許ない。
 不思議な感覚にたゆたう。ゆるやかに意識が浮上しては沈む。寄せては返す波のように。
 ふと、体の奥に明りが灯った。じんわりと、穏やかな熱。しかし、無視して眠りに漂うのを妨げる程度には熱く明るい。
 ぴちゃん、と水音がした。ぐずぐずとほどけていた意識が一つになる。体に灯った微熱はそのままだ。
 何故か妙に重い瞼を上げると、ジェイムズの顔が見えた。シャツを羽織った姿で視界を塞いでいる。
 呼び掛けようとして、声が喉につかえた。代わりに聞こえたのは、

「……ぁっ……」

(――何だ?今の気色悪い声は)

ぼんやり思いながらその正体を掴みかねていると、頭上の男が声を掛けてきた。

「気がついたか、レジィ」
「あぅっ!」

 より艶かしい声が響いた。くすぐるように体の奥を探られる感触。
 一気に覚醒したレジナルドを待ち受けていた現実は、あまりにも厳しいものだった。
 湯を張った浴槽の中に横たえられ、ジェイムズの指を体の中に差し込まれていたのだ。
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