英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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悪童の流儀(1)

(6)

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「どうして君は私が要らないのだ。まったく不公平だ。何が嫌だ、どこが気に入らない。欠点など私のどこを探しても見当たらないが、もし君が不満に思うところがあるなら――」
「あるなら?」
「そんなものは錯覚だと、納得するまで教えてやる」

 いかにもジェイムズらしく、傲慢に言い切った。
 追い詰められたような焦れた眼をして、狂おしくレジナルドを求める男。正気の沙汰ではない。高熱で脳をやられてしまったのかと思う。
 そう冷静に断じると同時に、胸の中に満ちる歓喜を自覚しないわけにはいかなかった。
 最愛の母が思い浮かべた最後の風景に、自分の居場所はなかった。父の死後、二人で生きていくために用意した『家』も必要とされず、振り切るように母は父の元へ行ってしまった。
 そんな自分を、欲しいと切望する人がいる。柄にもなく弁当を作って日参し、めくるめく超絶話法でレジナルドを悶絶させて、それでも諦めずに口説き続けている。地位も富も名誉も優れた容姿も、この世のすべてを手にしたような倣岸不遜なこの男が今、自分を求めて身を捩るように苛立っている。

 ――握り込まれた手首が熱い。
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