英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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有能なる従僕の手法

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 レジナルドは心の底から呆然としていた。
 今の電話は、その声は、明らかにエリオットのものだった。なのにまるでジェイムズと話しているような、あの勝手な口の利き方は何なのだろう。

(昨日の夜までは普通だったのに…)

 あまりの変貌に、自分の作ったスクランブルにあたったのかと心配になる――それにしても毒が脳に回るとはただごとではないが。それにその内容がまた、大いにレジナルドの頭痛を誘発するものだった。

(確かにウィズリーでも、ジェイムズは毎年この時期に寝込んでいたけれど…何故わたしが看病を?しかもエリィから指名されるんだ?)

 混乱しつつ受話器を置くと、別の電話に出ていたアンソニーが首を傾げながら声を掛けてきた。

「レジナルド、たった今オーナーからお電話があって、君がジェイムズ卿の看護に行ってもそれは勤務の内だから止めないようにと言われたよ。何のことだかさっぱりわからないんだが…卿はご病気なのかね?」
「どうも、そのようなのですが…」

 どうやってかエリオットは、オーナーにまで手を回してこの状況をお膳立てしたらしい。昨日の今日で一体どういうつもりなのか、彼の思惑がまったくわからない。
 しかし高熱にうなされているだろうジェイムズを放っておく訳にもいかず、とりあえず様子を見に行くことにした。彼の家に従僕はいないが、掃除婦と料理人を雇っていると言っていた。自分の出る幕はないだろうが、一度でも顔を出しておけば、後で何か言われたとしてもオーナーとエリオットに言い訳は立つ。
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