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有能なる従僕の手法
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アルバート・シェリングフォード氏の従僕、エリオット・グレイは、その有能さで賞賛の声を恣(ほしいまま)にしてきたが、十数年の従僕歴において初めてその職分を逸脱する決意をした。
一介の従僕ではあるが、アーラム子爵シェリングフォード家の問題児、一族の悩みの種だったアルバートを御し得る稀有な人材として、エリオットはシェリングフォードの人間から一目も二目も置かれている。職務以上の働きを強要されたことも何度かあり、子爵家に対する貸しも山積していた。このあたりで少し取り返すのもいいだろう。従僕の身で主家に頼み事をするのは気が引けるが、兄のように親しく思っているレジナルドのためであれば、些末な事にかまっている暇などない。
心を決めて連絡を取ったのは、個人的に面識のあるアルバートの姉だった。伯爵家に嫁ぎ、その華麗なる女主人としてあちこちに顔が利く彼女は、エリオットの頼みを快諾してくれた。
そうしてすべての準備が整った今、勤務中である相手の都合を無視して、ザ・ジャロルズのレジナルドに電話を掛けている。
「お仕事中申し訳ありません」
一介の従僕ではあるが、アーラム子爵シェリングフォード家の問題児、一族の悩みの種だったアルバートを御し得る稀有な人材として、エリオットはシェリングフォードの人間から一目も二目も置かれている。職務以上の働きを強要されたことも何度かあり、子爵家に対する貸しも山積していた。このあたりで少し取り返すのもいいだろう。従僕の身で主家に頼み事をするのは気が引けるが、兄のように親しく思っているレジナルドのためであれば、些末な事にかまっている暇などない。
心を決めて連絡を取ったのは、個人的に面識のあるアルバートの姉だった。伯爵家に嫁ぎ、その華麗なる女主人としてあちこちに顔が利く彼女は、エリオットの頼みを快諾してくれた。
そうしてすべての準備が整った今、勤務中である相手の都合を無視して、ザ・ジャロルズのレジナルドに電話を掛けている。
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