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人型の災厄
(3)
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超弩級の爆弾発言の後。
気がつけば、手籠を提げザ・ジャロルズに戻っていた。どうやって帰り着いたのか記憶にないが、食器類がすべて手籠内に揃っていたところをみると、日課として植え付けられた行動様式が脊髄反射したらしい。それに叩き込まれた職業意識とはすごいもので、職場に戻れば自然に背筋は通り、何事もなかったように仕事に集中していた。
それでも突如抱え込むことになった厄介事への不安がにじみ出てしまったのだろう。人の好い上司に気を遣わせるような失態を演じてしまったことが、仕事至上主義のレジナルドの誇りを傷つける。
従僕として働いていた頃も、学生の腰掛け仕事と口さがない同業者に陰口を叩かれることがあっても、勤めを疎かにしたことは一度もなかった。一日単位で従僕を雇う顧客は、体面を保ちたい没落貴族、上流階級を気取りたい新興富裕層や外国人が殆どだ。一日限りの雇用主達は生まれも懐具合も千差万別、しかし皆レジナルドのいかにも従僕然とした落ち着いた物腰を気に入り、必要な時は紹介所を通して何度も指名してくれた。気前の良い何人かのお得意様は、仕事中に着るようにと手渡したスーツをそのままプレゼントしてくれたりもした。
気がつけば、手籠を提げザ・ジャロルズに戻っていた。どうやって帰り着いたのか記憶にないが、食器類がすべて手籠内に揃っていたところをみると、日課として植え付けられた行動様式が脊髄反射したらしい。それに叩き込まれた職業意識とはすごいもので、職場に戻れば自然に背筋は通り、何事もなかったように仕事に集中していた。
それでも突如抱え込むことになった厄介事への不安がにじみ出てしまったのだろう。人の好い上司に気を遣わせるような失態を演じてしまったことが、仕事至上主義のレジナルドの誇りを傷つける。
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