英国紳士の恋の作法

音羽夏生

文字の大きさ
上 下
48 / 176
ハイド・パークの昼食、あるいはデート

(11)

しおりを挟む
 ――銀のスプーンを咥えて生まれてきたような男の手に、買い物籠!

 しかもその中味がお手製のサンドウィッチだと知った時、レジナルドは殆ど気絶せんばかりに驚いた。

(やんごとない生まれの君が、どうしてこんなことまでできるんだ、ジェイムズ…)

 なるほど彼には従僕ヴァレットが必要だ、と妙に納得したものだ。手製の弁当を携えて王者のように、しかしいそいそとやって来るジェイムズは、善良な一般市民にとって視覚の暴力以外の何物でもない。
 今日も今日とて場違いなオーラを撒き散らしているジェイムズの姿に内心ため息をつきながら、レジナルドは片手を上げて挨拶した。

「やあ、ジェイムズ」
「秒針レベルで時間通りだな、監督生」

 眩しいものを見るように目を細めて応えるジェイムズに、肩を竦めてみせる。

「でも君を待たせたみたいだ」
「監督生に会うためなら、十年百年待たされてもかまわない」
「…それはどうも」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

社内捜査は秘密と恋の二人三脚

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:44

あなたと会えた意味を探して

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:7

金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:58

幼馴染に色々と奪われましたが、もう負けません!

BL / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:4,370

私の一番愛する人

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:5

敏感リーマンは大型ワンコをうちの子にしたい

BL / 完結 24h.ポイント:2,016pt お気に入り:369

処理中です...