英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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ハイド・パークの昼食、あるいはデート

(5)

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 好みではないところは何もない。

 結論に辿り着き、己の間抜けさにジェイムズは舌打ちしたくなる。
 思いつく、行動する、結果を出す。それで今まで問題なかったから、思いついた時点で自分の状態、感情を分析したことなどなかった。何かを手に入れるのに苦労したこともなかったから、それも仕方のないことなのだが。

(何故昔は気づかなかったんだ?)

 気づかなかったわけではない。今も昔もレジナルドの美点は変わらず、少しも損なわれていない。ただあの頃は、あの状態が心地よかったのだ。
 同級生、同寮生、問題児と監督生。悪童と聖母。
 木漏れ日の中にきらきらと光るような、穏やかで温かいものに満ちた関係に身を浸していれば、それでよかった。

(だが、今は違う)

 昨日見た光景が、ジェイムズの中に馴染みのない焦燥と飢餓を掻き立てる。
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