英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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J&M商会

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「実家が立派だってあんたが主人じゃなきゃ意味がないだろ、二人の愛の巣だぞ…って、それなら二人で探すのが筋ってもんだな。こりゃ失礼しました。でも相談ならいつでも乗るぜ、何せ俺は有能で小回りが利く上に、親切な男だからな」

 『愛の巣』という言葉にぴくりと反応したジェイムズに内心ほくそ笑み、手応えを掴みつつ今はこの辺りで切り上げる。珍しく焦れているところを下手に突(つつ)いて、火を噴く事態を招くのは得策ではない。
 興味なさげに仕事の相棒の熱い忠告を聞き流していたジェイムズは、ふと壁に掛かった時計を見遣ると席を立った。

「昼食に出てくる」
「出るのはいいが帰って来いよ。久しぶりに出社したんだから、逃げるんじゃねえぞ…何だよ、その手籠バスケットは」
「今日の昼食だ」

 中を覗き込むと、藤製のサンドウィッチ容器、リンゴ、チーズ、クラレットの瓶が行儀良く鎮座ましましている。

「昼間っからボルドーなんて飲んでんじゃねえよ、このお貴族野郎が。しかし妙な奴だな、弁当を持ってきたならここで食えばいいじゃねえか」
「誰が自分のために弁当を作るなどという面倒なことをするか」
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