英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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猛獣使い

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 ジェイムズだから駄目だとか、執事や従僕の仕事が嫌だとか、そういうことではない。元は愛人だった母が父伯爵と結婚するまでの十一年間を一般家庭で育ったレジナルドに、伯爵家の末子という肩書きはそもそも馴染まないもので、使用人として働くことで矜持が傷付くこともない。ただエリオットが誇りを持って従僕の務めを全うするように、自分はホテルマンとして最上級のサービスを追求したいのだ。
 だから、ウィズリー卒業後に自分が置かれた状況も含めて短期の従僕として働いていた理由を説明し、今の仕事に対する愛着について話し、ジェイムズの申し出を受ける訳にはいかないときっぱり断ったのだが。

(人の話を聞かないのは、ジェイムズの真骨頂だからな…)

 もちろん常識の通用しない相手だからといってこちらが折れる筋合いはないが、あのジェイムズが簡単に諦めるとも思えない。

「今よろしいでしょうか、レジィ。ジェイムズ卿がどうしてもあなたの都合を聞いてくるようにと仰るので」
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