英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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哀しみの聖母

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「おかげで、うるさ方を言いくるめる術を身につけられたからね。この先役に立ちそうな技術だと思わないか?」

 茶目っ気たっぷりに片目を瞑ってみせたレジナルドを最後の姿として記憶に残し、あれから十年。
 あの初夏の日と変わらぬやさしい瞳が、懐かしそうにジェイムズを映している。

「何故君がここにいる、監督生」

 当然の疑問が口をついた。

「私はホテルに珈琲を飲みに来たのであって、母校の黴臭い寮に思い出探しに来た訳ではない」
「生憎ここはウィズリーではなくて、わたしの勤め先だよ。それに珈琲って…食堂ダイニングが開くまでまだ一時間ほどある。大体何だってこんなに朝早くに」
「飲みたいと思った時が飲む時だ。それ以外の珈琲など、色は黒いのに文字も書けないインク以下の役立たずだ!」

 堂々と言い放ったジェイムズに、レジナルドは一瞬声を失くし、そののちしみじみと言う。

「全く変わってないようだね、ジェイムズ。まるで十年前の『館』にいるような錯覚を覚えるよ」
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