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哀しみの聖母
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確か、ケイリー伯爵家の末子だったと記憶している。
洗練された立ち居振る舞い、美しい発音と言葉遣い、そして何よりも気品あふれるその言動が、彼が貴族の純粋培養であることを示していた。成績ですべての序列が決まる校内で首席を維持し続け、周囲のやっかみを買うこともなく人望も厚いレジナルドは、実に稀有な存在だったといえる。春の陽だまりのように温かで穏やかな人柄は、 好意を集めるものではあっても悪意を引き出す要因にはなり得なかったのだ。
弟妹のないレジナルドは、同寮の下級生の面倒もよく見た。新入生が家を恋しがって泣きつく先は何故か決まってレジナルドで、そんな時彼は、幼さの残る下級生の額に慈愛に満ちた口づけをして、部屋に送り届けていた。その場に居合わせた者は、生ける聖母子像のような神々しいまでに心温まる光景に、何とも言えず癒されたものだ。レジナルドが筋骨逞しい強面の持ち主であれば話はまた違ったのだろうが、彼のすっきりと整った容貌は『聖母』として十分に鑑賞に値するものだった。
洗練された立ち居振る舞い、美しい発音と言葉遣い、そして何よりも気品あふれるその言動が、彼が貴族の純粋培養であることを示していた。成績ですべての序列が決まる校内で首席を維持し続け、周囲のやっかみを買うこともなく人望も厚いレジナルドは、実に稀有な存在だったといえる。春の陽だまりのように温かで穏やかな人柄は、 好意を集めるものではあっても悪意を引き出す要因にはなり得なかったのだ。
弟妹のないレジナルドは、同寮の下級生の面倒もよく見た。新入生が家を恋しがって泣きつく先は何故か決まってレジナルドで、そんな時彼は、幼さの残る下級生の額に慈愛に満ちた口づけをして、部屋に送り届けていた。その場に居合わせた者は、生ける聖母子像のような神々しいまでに心温まる光景に、何とも言えず癒されたものだ。レジナルドが筋骨逞しい強面の持ち主であれば話はまた違ったのだろうが、彼のすっきりと整った容貌は『聖母』として十分に鑑賞に値するものだった。
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